こだわりとは

 よく「自閉症の人ってこだわりがすごいんでしょ?」とか聞かれたり、そういう目で見られたりします。期待を裏切って申し訳ないけど、人様をあっと驚かせるようなこだわりなんて、持ち合わせてないのが発達障がいを持ってる人の現状だと思う。



 有名人とか偉人の中には、発達障がいで天才で変わった人が多いなんて話をよく聞きます。それはそれ、僕は僕ですね。


「あの偉人は、あの芸能人は、あの博士は、こんな変わったこだわりがあって毎日やらなきゃ気が済まなくて、邪魔されるとかんしゃくを起こしてたらしい!」


 へぇ。としか言えないです。こだわりの強さなんて、十人十色じゃないのかと思うんです。人は人、自分は自分。これって健常者の人と同じ考えじゃないかと思ってるんですが、そうじゃないのか…。


 ちなみに僕のこだわりは…

 お風呂に入ったら必ず頭を洗うこと。

 寝る前に歯を磨いてトイレに行くこと。

 約束は守ること。

 挨拶をすること。

 仕事で使うものには絶対触らないこと。


 こんなもんです。普通で申し訳ないけど、多分こんなもんです。予定が狂うと頭が真っ白になることは多々ありますが、これはこだわりとは違うかなって思います。


 この中でかんしゃくを起こしたりするのは、約束を守らなかった時くらいです。

「どうして」「納得できる理由をちょうだい」「そんなのおかしい」「そうじゃない」

 等々、いろんな感情が入り混じって、何から言えばいいかわからずに感情が爆発します。


 感情が爆発してるときにそれを逆なでにするようなことを言うと、火に油を注ぐようなもんです。自分に非があると思うなら、素直に「ごめんね」って言ってあげるだけで、かんしゃくを起こしていたとしても気持ちはだいぶ治まります。


 世界にはいろんな人がいて、いろんなこだわりがあります。こだわりの強さも人それぞれ。僕は決して軽度の発達障がいとは言えません。昔通ってたカウンセラーの方からも、よく今まで生きてこれたね。と言われてました。


 その当時からさっきのこだわりは健在だったし、今だってこだわりを否定されるのはつらいです。でもこだわりだけが、発達障がいを持っている人の全てじゃないです。


 こだわりが職につながることも、もちろんあります。僕はそうじゃなかったから、そうだったらどんなに良かっただろうと何度も思いました。


 風呂に入って毎回頭を洗ったって、寝る前に必ず歯磨きとトイレを済ませたって、約束を厳守しても挨拶を絶対にしていても、これじゃ仕事には繋がらないのは明らかです。


 それにこだわりを外部の人の目を気にせずに貫くような人は、本当に少数じゃないかと思います。基本的に発達障がいを持ってる人は、健常者の中に紛れ込むように心がけてます。心がけてますが、大体バレて結局浮いてるけど…。


 異様なものを見る目。こいつはおかしいと感じている相手からの雰囲気。明らかに関わりを持ちたくないという態度。嫌というほど子どもの頃から味わってきた経験が、死ぬまでついてくる。


 でもその嫌な思いを一瞬だけでも回避したくて、健常者の中に紛れ込むんです。だから自ら自分のこだわりを人目を気にせず披露している人を見ると、僕は「どうしてしまってるんやこの人」と、内心50000mくらい距離を取りたい感じ。


 健常者の中には、自分はアスペだからなんて言って、とんでもないことを平気でやってのける人がいます。そういう人はアスペでもなんでもない、普通の変態です。


「こだわりが強くて~」

「空気が読めないから~」


 何言ってんだ寝言は寝て言え。こんなこと言ってる人は、大体発達障がいではないです。




 でもこだわりのある発達障がいを持ってる人と一緒に住むなら、そのこだわりをある程度理解してあげることは重要です。


 例えば僕の場合、真冬の寒い時期でも欠かさず頭を洗うこだわりを持ってます。

「今日寒いから頭洗わんでいいよ」

 なんもの言ってることは、正しいと思います。

「嫌、洗う」

 これが僕のこだわりです。

「寒いよ?」

「うん」

「洗う?」

「洗う」

「ふぅん」

 否定はせず、ただ見るだけ。寒いのはわかってるけど、インフルエンザとかじゃない限り、絶対頭を洗います。それをなんもは見てるだけ。頭をたまに力強く拭いてくれます。首がもげそうです。


 自分のこだわりを強要する人は、恐らく多くありません。ある程度のところまで見守って、たまに助言してあげる。それくらいの介入が、多分一番うまくいきます。



 こだわりとは、あくまで自分のものだから。自分が大切にしてる、自分だけのこだわり。それは人それぞれにあって、多分健常者もあるはず。それを状況に応じて柔軟に対処できるかどうか、それだけの違いじゃないかなと思います。

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