三男の居場所 2 まなざし教室と子ども達

 同じ小学校で不登校ぎみの子どもが、なんとか登校だけでも出来るように与えられた場所がまなざし教室だった。私は三男が入学する前にPTA役員の経験もあり、その年には頻繁に学校へ出入りしていたのだが、それまでそんな教室がある事など全く知らなかった。

 数年前に空き教室を利用して作られたその教室は、その年によってその時期によって、その日によって、その時間によって学年も性別もバラバラの子ども達がすごしていた。人数も時期によって違い、1人のときもあれば6人ぐらいが楽しそうに過ごしている事もあった。

 

 まなざし教室の子どもたちは、だいたい同じ顔ぶれだったが、それぞれが違っていた。

欠席している事がほとんどで、ごくまれにまなざし教室にやってくる子ども。

ほぼ毎日のようにまなざし教室に来るが、絶対に自分の本来のクラスには行こうとしない子ども。

少しづつ、本来のクラスに戻ろうと時々まなざし教室からいなくなる子ども。

いつも遅い時間に登校してくる子ども。

来ても直ぐに帰っていく子ども。

母親が付き添って、そのまま母親と一緒にすごす子ども。

 

 さて、三男がまなざし教室で過ごしていたのは学年でいえば2年生から6年生までの4学年だ。絵を描いてみたりゲームをしたり運動場で1人、もしくは2〜3人で遊具やボールなどで遊んでいることが多かった。時期によっては私が一緒にまなざし教室で過ごす事もあったが、この教室を教えられてからは私を必要としない日の方が多くあった。

 体育でもないのに教師のいない運動場で自由に遊んでいる子どもがいる姿は他の生徒たちにどのようにうつっていたのだろうか。


 三男が5年生の時の担任は、三男とクラスの子ども達が接触する時間を多く持とうと働きかけた。休み時間になるとクラスの3〜5人くらいが、まなざし教室に来て遊んでいき、昼には自分の給食ををまなざし教室まで運び、まなざし教室の仲間とともに机を向かい合わせて一緒に食べるのだった。

 その頃私は三男と一緒に登校し、まなざし教室で一緒に過ごす事が多かったのだが、クラスの子ども達は屈託なく三男を下の名前で呼び、黒板に一緒に落書きをしたり、ゲームをしたりし、休み時間が終わると「またね〜」と言って授業に向かうのだった。


 この頃のまなざし教室にはたいてい3人の子どもが来ていた。三男と同じ学年の男の子、そして2人より一学年下の女の子だった。

 どちらかというとアウトドア派の三男とインドア派の同級生、そして少しやんちゃな女の子。たまに女の子に男子2人が振り回されている感じがあったが、それなりに仲の良い3人だった。

 そこに5年生のクラスの子ども達が遊びにくるのだが、3人は特に嫌がる様子もなく、喋ったり一緒に遊んだり、三男の場合はこの時とばかりにキーボードを弾いてみせて、クラスの子ども達との時間を楽しむのだった。


 不登校の子どもの中には、人との接触や騒がしい事を嫌がる子もいるから、クラスの子ども達が不登校の子どものための教室に来る事は絶対にうまくいくとは限らないが、この時には良かったのだと思う。

 三男はクラスの子ども達と休み時間や給食時間を共に過ごす事で、体育や音楽の授業だけは参加できるようになり、夏の野外キャンプにも参加できたのだと思う。




 

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