剣と魔法の世界になったので未踏破ダンジョンを攻略する探索者になりました
ダイナイ
1章
第1話
ある日突然、剣と魔法のファンタジーな世界が現実になった。
ダンジョンと言うものが世界各地に出現し、世界中は混乱の渦に飲み込まれることになる。
ダンジョンの中には、モンスターと呼ばれるこれまたファンタジーな怪物たちが出現することが確認された。
世の中のオタク達は歓喜して、裸で踊り出す奴までいたらしい。
時はきたとばかりに、世の中のニートたちが外へと出たと言う話が出るほどの賑わい振りたった。
そんなファンタジーな世界になって、一年が経過した。
各国の混乱はある程度落ち着き、人々も剣と魔法の世界に少しずつ対応して行った。
「ここがダンジョンか」
俺は、世の中に無数に出来たダンジョンの一つに来ている。
ダンジョンが出来た当初は、一般人の立ち入りは認められなかった。
だけど、あることが発覚してから一般人の立ち入りを解放せざるを得なくなったのだ。
それは、スキルの登場である。
スキルとは、剣と魔法な世界で特有の特別な力のことだ。
このスキルが、ダンジョンで初めてモンスターを倒すと手に入ることが分かったのだ。
それからは、封鎖されているダンジョンに人が押し寄せてデモ活動が始まった。
今までファンタジー世界にしかなかったスキルが登場したことで、その力が欲しいと抗議する人が多かったのだ。
各国は、その勢いに負けてダンジョンを解放することになり、日本も世界の流れに逆らえずに一般人に解放することになる。
「強いスキルを手に入れて、冒険者になるぞ」
俺がダンジョンに来たのは、もちろんスキルを手に入れるためだ。
ここでモンスターを倒して、強いスキルを手に入れることが出来れば、冒険者になることが出来る。
冒険者とは、ダンジョンが出来てから登場した新しい職業だ。
進路に迷っていた中で世界が変わり、夢と希望のある新しい職業が出来たから、俺も目指すことにした。
「身分証の提示をお願いします」
「あ、はい」
俺が来たのは、ダンジョン協会が管理運営を行っているダンジョンだ。
管理されている所では、未成年が入ることは出来なくなっている。
また、希少アイテムが見つかることはほとんどない。
だけど、利点もある。
俺みたいな初めてダンジョンに入る人でも、簡単にモンスターを倒せるのだ。
ダンジョンにいるモンスターに強いものはいなく、管理されているので内部は安全になっている。
「萩野透さんですね。どうぞお入り下さい」
身分証を見せて、問題ないことが確認された。
事務的な対応で愛想はないけど、それも仕方ないだろう。
なぜなら、ダンジョン協会が管理している場所には、大量の初心者がスキル目的で来るのだ。
一人一人に丁寧に対応していては、日が暮れてしまう。
お疲れ様ですと心の中で思いつつ、ダンジョンへと入った。
ダンジョンの内部は、ライトが設置されていた。
これなら、足元が確認出来るので安全に歩ける。
このライトは、ダンジョン協会の人が設置したものだ。
そのため、他のダンジョンでは内部は明るくはなっていないらしい。
ライトは、スキルが目的来る初心者が多いから設置されていると受付で言っていた。
「あ、モンスターがいたぞ!」
一人の人がそんな声を出すと、あちこちから人がたくさん集まって来る。
見つかったモンスターは、人に押しつぶされるように見えた。
これではどちらがモンスターなのか分からないほど、ダンジョン内の人たちは殺気立っている。
我先にと、モンスターを倒したいのだろう。
「よっしゃあ、倒したぜ!」
どうやら、モンスターを倒すことが出来た人がいるらしい。
周囲を見れば、腕を上げて喜んでいる人もいれば、モンスターを倒せずに落ち込んでいる人もいた。
一見、マナー違反にも思える行動だが、理由がある。
ダンジョン内にいる人が、多すぎるのだ。
どこを見ても人、人、人でモンスターが出現しても一瞬で狩られてしまう。
皆がスキル欲しさに集まっているので、中々モンスターと出会えない。
「ここじゃダメだな」
俺は、場所を変えることにした。
入り口から近い場所では、モンスターよりも圧倒的に人の方が多い。
これでは、なんとかモンスターを見つけることが出来ても、倒せないだろう。
初心者に優しいダンジョンゆえに、人が集まり過ぎてしまうマイナス面もある。
少しでも奥に行って、人が少ない場所を見つける必要があるな。
「ここなら良いかな」
暫くダンジョン内を歩き続けると、良さそうな場所を見つけた。
入り口からも離れているので、人もさっきよりは少ない。
この場所なら、安心してモンスターを狩ることが出来るだろう。
「あっ! スライム!」
早速、モンスターを見つけた。
見つけたのは、初心者でも楽に倒すことが出来るため、人気のあるスライムだった。
倒す難易度もそれほど高くなく、スキル目当ての人にはもってこいのモンスターである。
特にこのダンジョンのスライムは、弱いことで有名なのだ。
素手でも倒せるほど弱く、危険のあるダンジョンでも死ぬことなく安全にスキルをゲット出来る。
スライムに出会えたことに、感謝しなければいけない。
「スライム君の犠牲のおかけでスキルを手に入れる事が出来る。ありがとう」
鞄にしまってあったナイフを取り出す。
ホームセンターで買った園芸用のもので、ここのスライムくらいしか倒せないだろう。
素手でも倒せるらしいが、何かあっては嫌なので念のために、ナイフを持って来たのだ。
スライムの核を狙って、ナイフを突き刺す。
すると、スライムは消えてしまう。
どうやら、無事に倒すことが出来たようだ。
今まで発見されて来たスキルには、強いものから弱いものまでたくさんある。
冒険者になってダンジョンを攻略するには、戦闘向きのスキルが必要になるだろう。
俺が狙っているのも、そんな戦闘向きのスキルである。
なんでもSランク冒険者の中には、とても強力なスキルを保持している者がいるらしい。
その人は、ついこの間まで一般人だったと聞いている。
実力や実績がなくても、強力なスキル一つを手に入れることで、冒険者のトップにだってなれるのだ。
俺だって、戦闘系スキルや後方支援系スキルを手に入れて、いつかは冒険者のトップになりたい。
強くなりたいと、男なら誰もが一度は思うことだろう。
今、モンスターを倒したことでそんな俺の冒険が始まろうとしている。
戦闘系スキルとは、その名の通りで魔法や近接戦闘で役に立つようなもののことだ。
支援系スキルとは、戦闘系ではないけれど戦闘系職をサポート出来るような後方支援特化のスキルのことである。
主にこの二種類のスキルを手に入れることが出来れば、冒険者として活躍出来ると言われている。
その中でもより強力なスキルを手に入れることが出来れば、将来は約束されたも当然なのだ。
だからこそ、多くの人たちがダンジョンに押し寄せて来る。
俺もそんな中の一人で、強い力が欲しくてここまでやってきたのである。
『スキル【危機察知】を取得しました』
スライムを倒すと、女性の声と思われる謎の音声が聞こえて来た。
これは、神の声ともシステム音声とも言われているスキル取得を伝える声だ。
なんでも初めてモンスターを倒すと、聞こえてくる声らしい。
誰がどのように声を出しているのかは不明らしいが、皆自然とそれを受け入れている。
俺は、念願だったスキルを手に入れることに成功した。
「危機察知ってなんだ?」
どうやら手に入れたスキルは、危機察知というものらしい。
どう見ても戦闘向きじゃないのだけは、確かである。
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