相棒杯 結果発表&寸評

 ほい、では早速ですが偽教授相棒杯、結果発表のおじかんです。


 どぅるるるるるる(自前ドラムロール)

 でーん


 今回のグランプリは!


 ギザギザさま『地下牢にて』に決定です! どどーん

https://kakuyomu.jp/works/16816700428670443573


 一読三嘆、素晴らしい。上手い。短編の見本のような作品。そう思いました。二人の持つそれぞれの役割と、少女の持つ能力、そのバランスと設定がふたりの「絆」の形成の上で重要な意味を持っているのがとてもよかった。読んだ時点で、これを越える作品がない限りはグランプリ確定であると思いましたし、実際今回の募集テーマと選定基準の観点から、これを越える作品ははっきりとありませんでした。圧巻のグランプリです。


 ちなみに今回は各賞はありません。というわけで、次に総評的なもの。


 今回、テーマの性質上「主人公を二人、或いは主人公とその相棒の二人、出さなくてはならない」「その二人がコンビを組んで何がしかやるという描写があった方がよい感じになりやすい」「二人と敵対する何かなどを登場させるのもよいと思われる」という構造があり、だから上限を4万字までと普段よりかなり高くしたわけなのですが、やはり実感としてはそれで正しかったという感じを受けました。やっぱりキャラを二人出してやりとりをさせて、という前提になるとある程度の文字数は欲しいところです。と言っている俺が書いたやつは2000字だけど。


 というわけで、各作品講評に参ります。


無能王イネプトクラスとその宰相/偽教授

https://kakuyomu.jp/works/16816700428277628135

 自分の作品に寸評書いたって仕方はないのですが、一つだけ書いておくと、無能王の「ババロアが好き」という設定は昭和天皇の実話をベースにしています。


羅生門フルスロットル・ふたりはズッ友!/尾八原ジュージさま

https://kakuyomu.jp/works/16816700428705384388

 いやー、問題作ですね。芥川龍之介『羅生門』の登場人物二人がその後コンビを組んでチュパカブラと戦ってる、というプロットの時点で完全にオチており、それ以上何を言い足すべきこともないです。確かに男女ペアだし、確かに恋愛関係には至りそうもない。ただグランプリ選定という観点から真面目に分析しますと、絆は確かに描かれているけど、どちらかと言えばコメディ描写の方が前に立っている構造ではあるかな、と思いました。というかそういう問題でもないけどね、この作品はもう。


ふたりを死が繋ぐまで/サトウ・レンさま

https://kakuyomu.jp/works/16816700428730367954

 よく書けているんですが、ファム・ファタールの物語という感じですね。絆っぽさ、というのはあまり感じなかったです。


娑羅双樹のシフォンケーキ/スキマ参魚さま

https://kakuyomu.jp/works/16816700429140205852

 青春と人生の物語としてはなかなかよく書けています。ただ、どちらかと言うと二人の間にはすれ違いのようなものが目立つ気がして、「絆の物語」とはちょっと違うかな、という印象です。


担当編集の岸和田さん/柴谷染さま

https://kakuyomu.jp/works/16816700428946997416

 きゃりーぱみゅぱみゅの正式名が「きゃろらいんちゃろんぷろっぷきゃりーぱみゅぱみゅ」だってことを初めて知りました。私小説風小説としてはかなりの力作だと思います。ただ、二人の間の絆、というのを見ると、あんまり強さは感じなかったかな。


生徒会長と妖怪女/@aoibunkoさま

https://kakuyomu.jp/works/16816700428620290328

 掌編としてはそれなりの面白さがあるんですけど、「二人の絆の物語」というよりは「奇怪な一人の女の物語」という印象の方が先に立ちました。


引金と百舌鳥/加工師さま

https://kakuyomu.jp/works/16816700428747990016

 字数としては一万字以内ながら、いちおうちゃんと「バディもの」として成立している感じのある作品。しかしまあ、その骨格があるのはいいんだけど、そこからの肉付けをどうしていくかがバディもののバディものたる鍵だと思うので、もう一味欲しかったというところはあるかな。


春の嵐/武田修一さま

https://kakuyomu.jp/works/16816700428559829799

「完全に人間そっくりなアンドロイドを作る技術が確立しているが、逆にそっくりすぎて顧客に嫌がられ、もっと機械っぽいアンドロイドが普及するようになった」という世界観は割と好きです。ただ、主人公とヒロインの関係性の描写はちょっと駆け足過ぎる印象があって、もうちょっと丁寧に二人の関係の変化の流れを書いた方が良い作品になるのではないかと思いました。


THE FEASIBILITY of A HEARTLESS LOVE/橘 紀里さま

https://kakuyomu.jp/works/16816700428565368949

 面白くなっていきそうな雰囲気はあるのですが、一読しただけでは設定と世界観が掴み切れませんでした。多分、これはこの作品単体として考えた場合、もうちょっと長く深く書いた方がよいのでは。


ONLY INHUMAN/スキマ参魚さま

https://kakuyomu.jp/works/16816700428585501758

全体的な雰囲気と、特に主人公コンビのネーミングのセンスはすごく好き。ただ、字数が費やされている割には、いやかえってその分というか、一点突破の「テーマに対する攻略的なもの」というのは感じ取れませんでした。もちろん条件はクリアしているのですが、逆に綺麗にまとまりすぎているでも言いますか。


天上の青を纏いしきみと/クララさま

https://kakuyomu.jp/works/16816700428806191686

 率直に申し上げます。さっぱり分からなかったです。これが偽物川小説大賞なら長い講評を書くんですが、これは寸評ですのでそれだけ申しあげるに留めておきます。


失った夢よりも/しらすさま

https://kakuyomu.jp/works/16816700429181272249

 ハイファンですね。なかなかの力作で、楽しませていただきました。単に火やら雷やらで敵を吹っ飛ばすというだけではない、情報をコントロールしてこそ「魔法」だ、という発想、好きです。「魔法の使えない師匠」と「天才的な素質を持った弟子」というアンバランスなコンビという設定もなかなか唸らされました。


探偵助手、最初の事件/ハクセキレイさま

https://kakuyomu.jp/works/16816700429052940332

 ふたりの丁々発止のやり取りがなかなか楽しい。全体的にも、けっこう読み応えのある、しっかり骨組みのある作品でした。ただ、「バディの絆を描く」というお題の企画なので、その観点から見ると、ストライクではあるんだけどやや外角高め(相変わらず野球用語をよく分かっていないのに野球用語で解説したがる私)という感じではありました。


剣より強き鋭さを/おくとりょうさまhttps://kakuyomu.jp/works/16816700428534664125

 相変わらずというか、捻り過ぎです。「机上の戦争」だけで作品として完成しているので、そこだけで一作品にするべきだったと思う。それならそこそこの評価にしたのに。


心を重ねて/登美川ステファニイさま

https://kakuyomu.jp/works/16816700428687453842

 ツイッターではずいぶん昔からの付き合いだけど、もしかして本腰入れて小説作品を読ませてもらうのは初めてだったかもしれない。筆さばきがびっくりするほど巧みなのでびっくりしました。さて、最初から敵が滅んでる系現代ファンタジー。その発想は好き。かなり面白くて、ぐいぐい読まされました。ただ、「バディもの」「その絆」という観点から見たときにはそんなにポイント高くないです。そんな感じですね。


 というわけで終了です。ありがとうございました! 今やってる『孤食杯』もよろしく。

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