2
司は唯の次の言葉を待った。
でも、なぜか唯は司に話があるの、と言ったのに、そのあと話をすることもなく、ずっと黙ったまま小川の水の中れる様子を、青空橋の上からじっと眺め続けていた。
しばらくして、小川の中で魚がぽちゃんと音を立てて跳ねた。
その魚の跳ねる音を聞いて、唯は司を見ると、それから司に向かってなにかを言いかけて、でもなにも言わずに、そのまま口をつぐんでしまった。
それから唯はまた、暗い水面を見た。
二人のいる青空橋の周囲に、涼しい夏の風が吹いた。
司は唯の言葉を待ちながら、ぼんやりと青空橋の周囲の風景に目を向けた。いつの間にか、小川の中を泳いでいた魚たちはどこかに泳いで行ってしまって、どこにもその姿は見えなくなっていた。
司が小川の流れる上流のほうに目を向けると、そこには綺麗な光が、夏の夜の中に、たくさん浮かんでいる場所があった。
……それは、蛍の光だった。(とても綺麗な光だ)
司は唯の言葉を待ちながら、じっと、そのぼんやりと光る淡い薄緑色をした、たくさんの蛍の光に目を向けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます