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佐々木は松浦を起こし調達に行く旨を伝える。

松浦はうなづくとまたドアを閉めた。まだ寝るつもりだろう。

アユミは、松浦は冬眠してる熊みたいだと思った。結局動けばお腹が空く。動くメリットはあまり無い。松浦が正解なのかもしれない。とも考えた。


佐々木親子は小さなウサギとキノコ。調味料と本を調達して来た。

雪で足跡が心配だと佐々木は言ったがどうする事も出来ない。

見つからない事を祈るしか無い。


そのキノコにアユミが当たった。

かなり酷い腹痛。男達も食べたのだが三人とも平気みたいだった。

アユミは免疫や体力が落ちたのだと思った。更に悪い事に一年近く来なかった生理が来た。

当然、男達は心配したがユウキが一番親身になって動いてくれた。

アユミは素直にユウキにお礼を言った。


三日ほとんど寝たきりだったが回復し、もう死ぬまでキノコは食べない。と冗談を言えるくらいになった。


本格的な冬。

年々と寒くなってきている。と佐々木もアユミも言った。松浦はずっと引きこもっていたので気付かなかった。

春まで薄暗く退屈だが、暖かで安全な施設で真冬を過ごした。


春になり梅雨が来て夏になる。

私達以外の人間が全員死んだように思えるくらい、人間は一人も来なかった。


生活は相変わらずだった。食料に川魚が増えた。獲るのは佐々木の作った罠だ。それを更に区切ったイケスに入れる。佐々木の存在は欠かせなくなっていた。


誰も病気も怪我もなく、衣食住の心配の無い毎日。ゾンビも焼却炉に落ちていく。


あとは、この平和な生活がずっと続いてくれればいい。

誰もが心の底から願ってる希望だ。


セミの声ですら暑く感じる夏のある日。

今までの幸運だった生活に不幸が一気にきた。焼却炉が燃えた。火事になった。


ゴミや調理用のカマドの灰は焼却炉に破棄している。後で結論を出した事だが、落ちたゾンビが器具を破壊しそこに引火。それ以外考えられない。


大きな音と共に焼却場は燃えた。


終わりはあっけなかった。四人ともかなり落胆した。ただあれだけ大きな爆発であったにもかかわらず、誰も怪我ひとつないのが救いだった。


四人は身一つで近くの民家の二階に居座る。が、ゾンビがすぐ集まる。このままだと出られなくなる。だが行く当てもない。

ゾンビが次々と押し続ける為、ドアが始終ガタガタと鳴る。一階のガラスが割れる。ゾンビの侵入。


四人は移動せざるおえない。

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