第百二十四話 電煌雷轟

 フルモ=トーンドロ、そしてボーガン公との打ち合わせを終え、俺達ーーー俺とジュゼ、そしてサリアーーーは、魔王城玉座の間へと戻ってきた。


 手元にはフルモ=トーンドロから貰ったインドラボルテージプロトバロットレットがある。


 魔王として認めてくれた証として、彼が別れ際に渡してくれた。


 これで、全属性のプロトバロットレットが揃った。八つのプロトバロットレットを並べると、感慨深いものが込み上げてきた。随分長く掛かったが、漸くこれで一通りの神との面通しが出来たという事になる。


「しかし、無茶な事を考えますね。」


 ジュゼが口を開いた。


 何の話かは聞くまでもなかった。俺が先程提示した、デアーラ、或いはユーデアーラの迎撃作戦に関する話だ。


「神々の協力があっても難しいのは間違いありませんよ?」


「だが、それ以外思いつくか?」


 その問いにジュゼは苦い顔をする。


「思いつきませんが……。ですが私が心配なのは、魔王様なのです。あの方法ですと、魔王様の負担が絶大なものになりますよ。」


「さっきも言ったろ。だから神々にも協力を要請するんだ。この日の為に聖域を守ってきた彼ら彼女らだ。協力してくれるはずだ。」


「ですが……。」


 ジュゼが心配そうな顔でこちらを見てくる。さっきも同じような問答をした。心配なのは分かるし、心配してくれるのは嬉しい面もあるのだが。


「無駄よ無駄。こいつ、やる気満々だから。こいつはやると決めたらやる、そうでしょ?」


 サリアが何やら呆れた様子で言ってきた。


「でもアタシも手伝うからね。最初の魔界への誘導の時点で無茶して倒れて、迎撃自体が失敗するとか論外だし。」


「ああ。頼む。」


 このやり取りを見ていたジュゼが、本日二度目の溜息を吐いた。


「……まぁ、仕方ありません。一応、他の方法も考えますので、何かあればそれも検討材料にして下さい。」


「それは頼む。」


 今考えている方法は、サリアが危惧する通り、負担が大きい。やらないに越した事は無い。



 と、そんなやり取りをしていると、玉座の間のドアが荒々しく開かれた。


「あれ、サリア、戻ってたの。」


 ティアであった。スカイルも横にいる。


「ええ。全部周ってきたわよ。」


「早いね。」


「色々あってね。」


「で、スカイルも戻ってきたという事は?」


 俺が割り込むと、ティアは頷いた。


「うむ。敵の侵攻時期について予測が立った。最速で90日程度だと予想される。」


「……90日か。」


 まずその期間の短さを嘆いた。


「早すぎるなぁ。」


 全体の準備が間に合うかわからない。何処に降り立つかまでは予測出来ない以上、対策はこの星全体に施す必要がある。範囲が広すぎる。魔法があったとて間に合うだろうか。俺の案はいきなり暗礁に近づいたような印象である。


「だけど間に合わせるしかないな…。」


「一体どんな案なの?」


 ティアの問いに俺はこっそりと説明した。



「はぁ!?……いや、まぁ、無茶でもそれしかないか。」


「ああ。他にもあるかもしれないが、考えている時間が惜しい。早速フルモ=トーンドロには、俺から例のブツの準備を早めるように言っておく。」


「そうですね。まずは交通機関の構築を行っていた作業員を呼び出して、建築ノウハウを水平展開出来ないか検討して貰うようにします。」


 そう言ってジュゼが席を立った時、トンスケが部屋に入ってきた。


「いやー、指示で遅れましたぞ。お帰りなさいませ魔王様。」


「ただいま。だがこれからまた出発だ。ちょっと雷の聖域まで出かけてくる。」


「慌ただしいですな。一体何の用で?」


 そういえばトンスケには俺の案を話していなかった。丁度いい機会だし今の内に話しておこう。



「ん?ああ、この星全土にバリアを貼る準備。」



 それを聞いたトンスケは、顎の骨を落とした。

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