第569話【スポーツを楽しもう4】
<<加藤弥生視点>>
水泳競技用の様々な塩分濃度のプールを作りました。
主に斎藤さんチームが。
わたしは主にデザイン監修ってことですかね。
何もしていないようで申し訳ないです。
でも斎藤さんはわたしに優しく声を掛けて下さいます。
「いえいえ、弥生さんが出店業者の方達の相手をして下さって頂いているので、凄く助かってるんです。
わたし達は根っからの技術者なんで、どうもあの方達のような方々の相手は苦手でして。
まっ、弥生さんの存在はほんと助かってるんです。
それと女性としての感性もね。
最近はアスリートもおしゃれなんですよね。でも弥生さんとご一緒させて頂いて、目に鱗のことが多くて。
実際に今回作った施設で、あんなに女性の嬉しそうな顔が見られたんですからね。
子供達も楽しんでくれていましたし。
これは全て弥生さんのおかげなんですよ。」
「そうですよ弥生様。確かに施設の完成度も素晴らしいですが、随所にみられる女性らしい心配りが、家族連れにも大好評でした。
お陰様でわたしどもの『コースの駅』も大好評を頂いておりまして。
商店の方も大繁盛で嬉しい悲鳴を上げておりますよ。」
斎藤さんもアーリストさんも優しい言葉で支えてくれます。
涙が少しこぼれてきました。
白石弥生の頃から合わせると、お2人よりもかなり人生経験は豊富なはずなのですが、若くなったことで精神的にも幼くなってしまっているのかもしれませんね。
「お2人とも有り難うございます。少しでもお役に立ててれば嬉しいです。」
涙を何とか止めてニコッと笑って2人を見上げると、2人ともニコッと笑ってくれました。
その後、およそ1年ちょっとで合計10ヶ所の競技場施設を作りました。
その中には馬術競技の練習場もありましたが、馬以外の動物を飼育するようにしたら、どこからどう見ても動物園になってしまい、競技者よりも普通の家族連れの方が多くなってしまう失態もありましたが、ランス様とイリヤ様には好評だったので良しとしましょう。
そしてそれからしばらくして、第3回オリンピックシンゲン星大会の陸上競技予選会が『ファースト・ビレッジ』で行われることになったの。
わたしも実際の利用状況を確認したくて行ってみました。
転移門をくぐると、そこには大量の人達が。
今日の予選会への参加者は500人くらいって聞いていたけど、それどころじゃない。
だって各競技施設までの転移門に並んでいる人達だけでもその数10倍はいるのに、モノレール乗り場にも2000人以上並んでいたんだもの。
2分おきにモノレールがやって来るから既にこの星には何10万人って人が来ているはず。
わたしも並んでいる家族連れの中に交じってモノレールに並びます。
かなり待つことを覚悟していましたが、10分も待たずに乗車出来ました。
下を見るとたくさんの人がマラソンコース上に見えます。
予選会に参加した人が、練習しているのでしょうか?
そしてコースの沿道には選手に声援を送っている各選手のチームメンバーも多いけど、大半は家族連れみたいですね。
小さな少年少女も多くて、練習中の選手に黄色い声援を送っているわ。
この子達が将来のオリンピック選手になってくれたら凄く嬉しいです。
少し視線を移すと、小学生や中学生くらいのたくさんの子供達が練習している風景がありました。
この星には、本格的な練習コース以外にも、誰でも利用できるグランドもたくさん作っておいたのよ。
オリンピックやここでの練習風景を見て、小さいうちからスポーツを楽しむ子供達が増えたらいいかなあって斎藤さんと話しながら作ったのよね。
次のオリンピックは難しいかもしれないけど、その次の大会にはこの中から選手が出てくれれば嬉しいです。
さてさて、スタンド席のあるオアシス駅に到着です。
今日はここからマラソン予選会の応援をすることにしましょう。
オペラグラスを片手に、陣取ります。
事前に配布されていたのでしょうか、沿道に立ち並ぶ応援の皆さんが色とりどりの旗を振っています。
日本にいた時のマラソン大会の沿道の風景を思い出しました。
ばーーん!
号砲と共に予選会が始まり、黄色い歓声が大合唱になっています。
「うん?」
オペラグラスを覗いていたわたしは、ふと気付いた光景に思わず2度見してしまいました。
応援の皆さんが振っている色とりどりの旗。
そこに書いてあったのは、『シルベナ商会』の文字。
アーリストさん、本当に商魂逞しいです。
スポーツを楽しもう 編 完
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