第555話【加藤弥生 頑張ります6】

<<加藤弥生視点>>

加藤家の皆様に囲まれてお茶会なんて、恐れ多くて変なものが出てしまいそうな加藤弥生です。


すいません、わたしも加藤姓でしたね。


『いぼガエル』さん達の話しを聞いて怒り心頭のイリヤ様。


「まぁまぁ落ち着いて。


国際連合も結成されて随分経つからねぇ。

いろんな不正をやる奴らが出てきてもおかしくないさ。」


「だけど、お兄様。それでいいの?」


「良いわけ無いさ。ただね、天誅を下すんだったら、最も効果的にやらなきゃね。」


「ランス、悪い顔してる。」


「セラフ、酷いなぁ。でもさぁ、彼等って氷山の一角に過ぎないと思うよ。

もっと悪いことをしている奴らもきっと居るだろうしね。


だからね、彼等には、人身御供になってもらおうよ。

この天誅を知った者が二度と悪さをしたくなくなるくらいにね。」


「セラフちゃん、本当にランスったら悪い顔だわね。

あの子があんな顔するのは、面白い玩具を見つけた時くらいよ。」


「うん、知ってる。

ランス、最近またフラストレーションが溜まっているから。」


「じゃあ、この件はランスに任せましょうか。

それでいい?弥生ちゃん。」


「……はい。」


頷くしかないですよね。


「よし、任されたよ。イリヤ、弥生ちゃん、手伝ってくれるよね。」


「もちろんよ。」


「……は…い」


わたし学校があるんですけど。


ランス様もイリヤ様も、わたしよりずうっと忙しいから、言えないけどね。


こうして加藤家の皆様に押し流される様に、ランス様の悪巧み、いえ、天誅に参加することになったのです。



そして迎えた、白石弥生の学葬の日。


大勢の卒業生達が、大学の大講堂に集まって来ました。


国際連合の各機関は言うに及ばず、各星の王族や政治家、財界の大物等、今ここを攻撃されたら、この世界ごと機能停止するんじゃ無いかと思うほどの錚々たるメンバーです。


これだけの人達がわたしを慕ってくれてたなんて、感無量です。


いやいや物思いに耽っている場合じゃないのです。


わたしは気を引き締めて葬儀会場である大講堂の地下室へと向かいます。


そう、ここには今では誰も知らない秘密の地下空間があるのです。


元々は何かの非常時を想定して作られた避難場所でした。


そして、その理由故、公にされることも無かった場所です。


今では知っているのはわたしと、加藤家の皆様だけでしょう。


なにせ、この学校自体を作られたのがランス様とイリヤ様ですからね。


誰も知らなくて当然です。


地下室に入る入口はいくつかありまして、今回は裏庭の東屋を使うことにします。


東屋に入るとそこに描かれた猫の絵、いや落書きと言った方がしっくりくるかも知れませんが...、とにかくその猫の絵に魔力を通します。


そうなんです。この落書きのような猫の絵は、当時の学校幹部の魔力のみに反応する転移陣となっているのです。


魔力を通した転移陣はほのかな灯りも無く、一瞬でわたしを地下室へと連れて行きました。


大講堂の地下に拡がる大空間に足を踏み入れたわたしは、わたしの遺体が安置されている演壇の下に移動します。



上ではお忙しい皆さんが集まっておられるので、葬儀は時間通り後20分ほどで始まるはずです。


さあ、変身の魔道具で亡くなる直前の姿に戻りましょう。


近くにはいくつかのモニターが設置されています。

これも魔道具なのですが、それぞれが指定した場所の光景を映し出しています。


カメラの設置なんて必要ありません。わたしが見たいと思ったところがそれぞれのモニターに映し出されるのです。

例えば「ガット副学長を見たい」って念じると、どこに移動しようと、ずうっと彼の追跡をしてくれるんです。


ランス様の魔法ですからね、何でもありです。


目の前のモニター群に映っているのは、ガット副学長、ベルタ副学長、事務長、それと待機中のランス様とイリヤ様です。


では、ランス様作『悪いことを企んでいる奴らは懲らしめる』劇の始まり始まり....


まず第1幕、ガット副学長とベルタ副学長の醜い争いから始まります。


「この度の学葬の取り仕切りはわたしに任されていたはずだが、これはどういうことかね!」


「実は昨日ランス様がわたしの枕元に現れられて、ガット殿は素行が怪しいから、お前が葬儀委員長になるように告げられたのですよ。


国際連合の総長であり、生き神様として全宇宙から崇められるランス様のお言葉は絶対ですからねえ。


事務長とグルになって無理やりわたしを排斥しようとするあなたは葬儀委員長に相応しくないのですよ!」


「なんだと!何をいい加減な!こんな些細なことでランス様が気に掛けられるわけないだろう!

だいたいお前こそ、国際連合の連中に賄賂を使って、この大学の学長になろうと画策していたじゃないか!裏は取れてるんだぞ!」


「ふふふ、何をそんな言いがかりを。どうせ出世競争に敗れてしがない冷や飯を食っている事務長あたりが考えたデマだろうよ。」


あーあ、『いぼガエルさん』と『ガリガリ蛇さん』の醜い言い争いなんて興味ありませんからとっとと画面を変えます。


画面は切り替えても録画だけはされていますよ。貴重な第1幕の舞台映像ですからね。


ーーーーーーーーーーーー

いつもお読み頂きありがとうございます。


加藤弥生頑張ります 編に入ってから、白石弥生が山下弥生に変わってしまっていました。


完全なる勘違いです。


一応過去に遡ってチェックし、修正したつもりですので、この後は白石弥生でいきます。


混乱させてしまっていたら、ごめんなさい。


引き続きお楽しみ頂けましたら幸いです。

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