第522話【交易ギルド5】

<<ランス視点>>

「......であるからしまして、加盟星間の交易額はここ5年ほど毎年2倍以上の成長率で伸びております。


それに伴い、異文化商品の普及による自然発生的な文化交流も盛んになっており、各星の大使からは『文化水準が向上した』との声も多く聞こえてくるようになりました。


これら各星の交易額が向上した理由のひとつに各星内にある『交易ギルド』なる組織の影響が大きいとみられます。


交易ギルドとは................」


国際連合、定例報告会でのひとこま。




交易ギルドか....


またお父様にやられたな。お父様の故郷に昔あったという『アンテナショップ』なる店舗。


企業が自ら販売する商品を大々的に発売する前に、売れ行きを確認することを目的として作られた商店とか。


アースでは既に実店舗での販売自体が減っており、インターネットとかいう仮想空間内での商取引が主流になっているため、『アンテナショップ』というのは廃れてしまったというのだが、まさかそれを交易商品の選定に使わせるとはな。


セカンズ星のキャム大使の夢に交易ギルドのアイデアをそっと忍ばせて、組織を用意させ、そのトップとして相応しい人物を皇太后の夢に干渉して選定させる。


そして選定されたギルドマスターの夢に干渉してアンテナショップの知恵を与えると....


かなり回りくどいやり方だったけど、何の違和感もなくセカンズで受け入れられ、結果的にはお父様の目論見通りに、加盟星全体に異文化が自然に取り入れられることで、全ての星の文化水準が上がったようだ。


それに国際連合としてのメリットも大きい。


こうしたアンテナショップを介した透明性の高い交易は各星の取引を明らかにすることにもなり、ホンジュラ星の武器商人のような闇取引が入り込む余地が減ったことも喜ばしいことだ。


もちろんホンジュラ星にも交易ギルドは存在し、あちらの一大産業である武器も輸出品として各星の交易ギルドに渡され、一定量の輸出額は出ていると聞く。


そしてそれを輸入する星は、自星内に流通して問題ない範囲での輸入をしているのだ。


その辺りは各星の交易ギルドに任されているが、まあアンテナショップというものが各星に浸透してきたおかげで、適正量を超えることはまず無いだろうな。


しかし、こうも上手く回るとは。


俺もお父様に持ちかけられた時は話半分だったんだが......



ま、まさかお父様はここまで考えて....いやそんなまさか。


でもお父様ならありそうだな。


しかし参ったもんだ。俺も永遠の命を授かってから、もう、かなりになる。


お父様との年齢差なんて内にも等しいのに。


いったいお父様って................




交易ギルド 編 完





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※作者のひとりごと


現在はネット販売が主流になってきて、スマホから検索すれば商品に関する情報がなんでも調べることが出来ます。


もちろんその内容の真偽性の問題はありますが、こちら側が上手くネットサーフすることで、その真偽すら見抜けるほどの情報量があることも事実です。


まだネットが無かった頃、今から20年以上前でしょうか。


世の中は店舗で物を買うのが当たり前。通販雑誌が今のネットのような存在でした。


そしてその通販業者大手が出していたのがアンテナショップです。


カタログで見た商品を実際に触れて確かめられる店舗。店舗で実際の商品を手に取ってから購入するのが当たり前の時代には、こういった店舗が必要だったのですね。


一時は様々な製造業がカタログ通販に参入し、アンテナショップを出したりしましたが、やがて時代の流れと共に、カタログだけで購入する人達が増えてきました。


それと同時にアンテナショップも減っていき、カタログからネットへと切り替わっていく中で、ほとんど見かけなくなりましたね。


カタログ通販業者が、実店舗があると人件費や維持費に結構なコストがかかってしまうので、その分返品交換を無料にするとかのサービスにシフトしていった方が得だと考えたんでしょう。


まあ、ネットでなんでも気軽に購入できるようになったのは非常に素晴らしいことなんですが、家電量販店の衰退はわたし達世代にはちょっと寂しく思える今日この頃です。


上記はあくまでわたしの私見です。間違っているところもあるかもしれませんが、ご容赦を。


最期までお付き合い下さりありがとうございました。


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