第485話【それぞれの選択6】
<<ランス視点>>
今日俺はスピーダ星に来ています。
前回スピーダ星を訪れてから早7年。
今日はシューベル王国に新王が即位するとのことでその即位式に呼ばれたのです。
シューベル王国にも転移門は設置されているので直接行くことも可能なんですが、今日は国際連合のスピーダ支所に向かい、上空から各国の整備状況を確認しながらゆっくりとシューベル王国に向かうことにしましょう。
前回スピーダ星を訪れた時は、未だ集落の体でしかなかった各国も周囲の開拓や、どの集落にも属していなかった流浪の家族達を取り込んで、それなりの大きさになっていました。
未だ建設中のところが大半ですが、一応は上下水道や幹線道路、集合住宅などの最低限の住環境は整備されているようですね。
このあたりは、お父様に傾倒するミリーさんがラスク星でお父様が実行してきた手順を皆に紹介・指導したそうです。
青々と広がる広大な農地はラスク星から持ち込んだ稲ですね。
それ以外のも計画的に作られた果樹園や畑、杉や檜などの樹木の若木等、これからの発展を予測させるものが多く、今後が楽しみです。
一通り各国を回った後、シューベル王国に到着しました。
王城とは呼べぬほどの小さな石造りの建屋。そこが本日の主役である新シューベル王の住居でした。
「サルビス王、ご無沙汰です。どうやらカービルさんのご子息は正しい道を歩んでおられるようですね。」
「ランス殿、ご無沙汰いたしております。ええ、父親のお越したあの事件から彼が学んだものは大きかったようです。
そして各星に留学し、それぞれの歴史を学ぶことで彼なりに国の在り方を学んできたようなのです。
ここ2年ほどは、その学んできた知識を活かしながら、この国の発展に尽力しています。」
「そうでしたか。ここに来るまでに各国を見て回ったんですが、どちらの国も治世に力を入れられているようで安心しました。」
「ランス様であられますか?」
「ええ、そうですが。」
「ランス殿、こちらが本日即位するカービルの子ヤーベルです。」
「ランス様、初めまして、ヤーベルです。父の起こした事件の折りにはご迷惑をお掛けしました。」
「いえいえ、それよりもこのシューベル王国の状況を視察させて頂きました。
民の生活の充実を考えておられること、よく分かります。」
「ありがとうございます。ラスク星に短期留学させて頂いたおりに観させて頂いた『マサル、ハーバラ村の奇跡』に感銘を受けまして。
以降、ラスク星の発展に寄与されたマサル様の成して来られた数々の偉業を学ばせて頂きました。
そして微力ながら少しでもそれに近付けた国造りを行いたいと頑張ってきました。」
そう言いながら笑う彼の顔は日に焼けて真っ黒で、身体には健康的な筋肉を纏っている。
民と共に汗を流しながらこの国の発展を推し進めているのであろうことは間違いなさそうだ。
ただ、間もなく即位式を迎えるはずの彼の衣装は普段着に王冠を付けただけのものだったことには少し気になったのだが。
少しの立ち話の後、彼は即位式の準備のために先に席を外した。
「さあランス殿、わたし達も参りましょうか。」
サルビス王に促され、式典会場へと移動する。
そこには各国の王達が勢ぞろいしており、穏やかに歓談しています。
「これはこれはラスク殿、ご無沙汰いたしております。」
「皆さん、ご無沙汰しております。ここへ来る前に皆さんの国を見させて頂きましたが、良い感じに発展していますね。」
王達は満足そうに微笑んでいる。
「ランス殿、我が国はマリス様1神教としましたぞ。国としては1神教の方が治めやすそうですしな。」
「我が国は八百万の神を認めることにしましたわい。もちろん王家はマリス様信仰ではありますがな。
やはりこれまで馴染んだ神々を民は求めているようですわい。」
「我が国は国教を定めぬことにしましたのじゃ。
他の星では宗教戦争とかいう争いも絶えぬとか。宗教を定めなければ、そんなこととも無縁ですじゃ。」
宗教に関してはそれぞれ独自の考え方がありそうだ。
ただ、初代王ということでこのあたりは柔軟に考えていくのが良いのだろう。
ファンファファーーン!
王城からファンファーレのような音が鳴り響き、シューベル新国王ヤーベル殿が姿を現した。
さすがに先程の私服ではなく、その身をマントに包んでいる姿は、まさしく王にふさわしい精悍な容姿だ。
「お集まりいただいた皆様、わたしがこのシューベル王国の新王となるヤーベルです。
我が父カービルの過ちによりこの国に迷惑をかけたこと深くお詫びすると共に、さ今後の治世に尽力していくことをここに宣言する。
わたしの目指す国の体制は王政ではない。民主主義である。
この国は民によって運営されるべきであり、民により選出された議員によって政治を運営していくことをここに宣言する。
とはいえ、直ぐに移行することは難しい。
そこで、この1~2年を費やして、民主主義への移行を図っていこうと思っている。
民達よ!新時代のシューベル王国、いやシューベル民主主義国の為にわたしに力を貸して欲しい!!」
即位したばかりのヤーベル王の言葉にその場は静まり返るのであった。
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