第458話【正義とは?2】
<<マリス視点>>
わたしはランス君の話しを正直なところ理解しきれてないんだと思う。
わたしだって幸せだと思う時もあれば不幸だと思う時もある。
そして、この世界は時間の流れを自分で制御できる。
勉強が遅れていると思えばゆっくりとした時間の中で学ぶことが出来るから、最低限の学力は皆んな持っているし、仕事のスピードもそう。
自分がやりたい事が出来ているかどうかは別として無理をすることはあまりないし、大体、寿命って考え方が薄いから異世界人みたいに生き急ぎしないし。
いつも異世界人を見ていて思うんだよね。何であんな一生懸命生きようとしているのかって。
まあ一つの時間軸だけじゃ、必然的に他人と競争になるし、そこには必ず強者と弱者が出来る。
それに短い時間の中で子供を産んで育てていかなきゃいけないしね。
そりゃランス君が言うような生活格差も出るだろうし、それぞれによっての幸福の価値観も変わるのかも。
わたし達が管理している異世界は、いびつになった時に介入できるから修正も出来るけど、もしわたし達がいなくなったら。
あの時、ラスク星に召喚したのがマサルさんじゃなかったら、わたしはラスク星をこんなにも良い星に出来たのかしらね。
もしかしたらラスク星も破棄していて、野良星になっていたかも。
そうなったら.....
「あああ、もおー。考えるのが煩わしくなっちゃうわ。
ようは、野良星を創らなきゃいいのよ。そうすりゃわたし達が上手く制御してこんなに悩まないでいいように出来るはずよね。
よし、どうしたら異世界創りが失敗しないか、マサルさんに相談しよーーっと。
その前に、お腹が空いたわね。
そうだ、商店街に新しいスイーツ屋さんが出来たってミリヤ達が言ってたわね。
マサルさんのところに行く前に美味しーのを食べて行こっと。」
やっぱりわたしは複雑な話には向いていないのよ。
こんな時のために異世界管理局っていう組織があるんだし、マサルさんという強い味方もいるんだからね。
<<マサル視点>>
今異世界管理局の第1会議室は重苦しい雰囲気に包まれています。
発端はやはりというかマリスさん。
ランスのところに行った帰り、スイーツ屋に行ったみたいなんだけど、そこでたまたま会ったポーラさん達とお喋りに夢中になったみたいなんだ。
そこでランスから投げられた問題を皆んなに相談してたみたい。
そしたらこれまた偶然いた運営課長に内容を聞かれて、局長まで巻き込んだ全体会議に至っているのだ。
「マリス君、君がランス君から聞いてきた話については分かった。
確かに異世界人の立場に立った意見だとは思う。
我々は無数の異世界を作ってきたが、これまで異世界人の視線で考えることはほとんど無かったと思う。
確かにタケイナーとかマリオから、たまにあちら目線の提案はあったが、それほど重要視していなかったことも事実だな。
それでだ、マサル君。
最もアースのことを知る者として君の意見を聞かせてくれないか。」
局長に参加するように言われて会議室の末席に座っていたら、局長から自分の意見を言う機会を与えられた。
この問題に関しては自分の立ち位置が非常に難しい。
今は管理運営側の立場にいるが元々は異世界側の人間だ。そして、成功しているラスク星の住人であり、今は野良星となっているアースの生まれでもある。
確かに俺が当事者としては適当だと思うが、逆に判断が難しい。
そりゃ、あのアフリカにいた少女達をはじめとする、最貧国の現状や、欲の皮が突っ張って自分主義だらけの先進国の連中を見ていると、ランスの言うこともよく分かるし、本音の部分では何とかしてあげたいと思っている。
だがその反面、そういった考え自体が利己主義的であり、実は一番傲慢なのではと考えてしまう。
そうなのだ、アースだけでも45億人の人がいて、そのうちの半数以上が貧国の住人なのだ。
どう考えても救いきれるはずもなく、この前だってたった数人に介入することしか出来なかったのだから。
そう考えると、野良星を創らずに全ての異世界を管理できるのが一番理想的なんだけど、管理側にも限界がある。
現状、テンプレートを使うことで、新星の成功率がかなり上がったが、それでも40パーセントくらいだと聞いている。
そして上手くいった異世界が増えるにつれ、異世界人の暴走や、星の寿命により管理外になっていく異世界も大幅に増えている現状も紛れも無い事実なんだ。
「わたしは、異世界を集約して、様々な交流を持たせることが良いのではないかと思っています。
ただ、何も介入せずに異世界同士を拘留させることは、侵略などにより新たな悲劇を生むことにもなりかねません。
まず野良星を精査し、救うべき星とそうでない星を仕訳けるべきだと思います。
その中で救うべき星から漏れた異世界については、消滅させてしまうくらいの覚悟が必要だと思います。
そして救うべき星であれば、よく似て強調し合えるような星をグループ化した上で、ひとりの管理者がまとめて介入し発展させていくのが良いのではないかと思います。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます