第407話【異世界防衛連合軍2】

<<ハリウス星国連大使カイウス視点>>


我の名はカイウス。


ハリウス星の盟主国ハリヤー国の国家元首をしておる。


ここハリウス星は300年前に女神オール様のお告げにより、我が国の国家元首が、この星の代表となるようになった。


お告げ後、しばらくは国家間の動乱があったようだが、我の祖父の時代にはそれも収束して、長い平和を享受しておる。


そして1週間程前、オール様からお告げがあった。


『カイウスよ。明日にでもラスク星から使者が参ろう。

その者は、貴方に国際連合という組織に参加するように促すだろう。


必ず受けるのだ。


そしてその国際連合のハリウス星大使には貴方がなるのだぞ。


よいか、必ずな。』


急いだ口調でそれだけ言うと直ぐに消えてしまわれたが。


即位式にお会いしてから30年ぶりとなるオール様のお告げに、正直、戸惑いは隠せない。


だが、それは明日になってみればわかることだ。



翌朝、イリヤという女性が我を訪ねてきた。


年の頃は20歳を少し越えたくらいか。


それほど華美では無い見た目は、清楚な貴族令嬢と見えるが、オール様とお会いしたことがある我にはわかる。


オール様にも似た神々しさと気品を持つ淑女。


謁見の間で会った瞬間、彼女の気高さに思わず玉座から飛び降りて、彼女の側に近付いてしまった。


宰相や警護の騎士達が驚く中、我はイリヤ、いや、イリヤ様の前に跪くのだった。


微笑みながら我に立つように勧める彼女は我が立たない様子に少し困った表情を見せる。


それに気付いた我は、自分の行為が彼女を困らせていると知り、彼女に促されるままに立ち上がった。


「イリヤ様、昨晩女神オール様からお告げを戴いております。


謹んで国際連合への参加をお願いいたします。」


「カイウス様、ありがとうございます。


先日の曲者による襲撃はお心を痛めておられたのではありませんか?


今回はなんとかわたしの友達が撃退出来ましたが、またあのような事が起こらないとも限りません。


その為にも他の星と協力しあって困難を乗りきろうではありませんか。


国際連合はその為に結成された組織なのです。」


「有難いお言葉でございます。」


いつの間にか宰相達も我の後ろで跪いておった。


その後、我と宰相の2人は、護衛の騎士団長を伴い、イリヤ様の用意された転移魔方陣で、ラスク星の国際連合事務局に向かい、調印を行ったのだ。


その後、事務総長のヤンガ殿から国際連合の詳細について聞いた。


この組織の創設意義、この組織を創られた初代事務総長マサル様のこと、今神の啓示を受けて国際連合が全異世界の拠り所となろうとしていることなど。


こちらに滞在している間にも次々と神のお告げを聞いた各星の代表がここを訪れ、調印している。


我の滞在中だけでも5ヶ国、それ以前からの加盟星をいれると18ヶ国にもなっていた。


未だ、我々の星以外に生命があること自体、夢見心地ではあるが、紛れもない事実であった。


滞在期間を終えて、我が星に帰った我らは、早速ハリウス星連合軍を結成する為に奔走することとなったのだ。


その後、国際連合加盟星が50を越えたという話しを聞いたのは半年後のことであった。





<<ハリウス星連合軍司令ヤグル視点>>


ハリヤー王の命を受けてこの度ハリウス星連合軍を指揮することとなったヤグルと申す。


わたしはこの大陸においてその武力と知謀において並ぶ者がないと、自負していました。


だが、半年ほど前に謎の軍隊に攻められた時にそれまでのわたしの自負は一瞬で消し飛んでしまう。


これまで見たことの無い、圧倒的な力を持つ軍隊。

見たことも無い魔物の大群。


なす術もなく攻城戦に持ち込まれ、それすらも何の意味もないように思われた恐怖に、わたしの自負など井の中の蛙でしかなかったのだと思い知らされたのです。


そして全てを諦め掛けた時に現れたのは、聖剣フロンタールを縦横無尽に振るって戦神のように敵に立ち向かうマイク殿の姿でした。


敵の撤退後、突如として現れた魔物のスタンピードも、彼らの活躍と彼らの持つ不思議な魔道具で撃退することが出来ました。


100名を率いるマイク殿とムラマサ殿。


彼らに感謝の念を伝えると、彼らは何を要求するでもなくただ頭を掻きながら、「今回の勝利は『マサル様』のお陰ですから」とだけ言い残して去ってしまわれました。



この度、わたしはラスク星にある国際連合という組織で結成される異世界防衛連合軍の結成式に参加する為に用意された魔方陣に乗るところです。


壮行会ではハリヤー王直々にお言葉を頂き、この度の経緯や目的等を伺いました。


そしてこれから行く国際連合という組織が『マサル様』によって創設されたものであることも。


マイク殿達と一緒に戦えるかと思うと、武者震いがしているのです。

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