第357話【次元の狭間7】
<<マサル視点>>
昨日の夜は大変だった。
リズも神聖女扱いになってからおいそれと友達を作ることも出来なかったんだけど、それが結構ストレスになってたみたいだな。
ユウコさんだったらそんなの関係無いし、すぐに打ち解けちゃったしね。
それはイリヤも同じだったみたいで、女3人でいつまでも騒いでいたよ。
俺はランスとふたりで残ったご馳走を楽しんでたけど。
ランスも星王になって結構大変みたいだな。
いろいろ相談に乗ってたら朝になって、そのままユウコさんと一緒に出社した。
「「室長おはようございます。」」
「おはよう。おや、一緒に出社かい?」
「はい。マサルさんの家に同居させて頂くことになったんです。」
「ええーー!同居ですってーー!
少し見ない間にマサルさんが悪い人になっちゃったーーー。」
エレベータに乗ったところで室長に会ったので挨拶をすると室長からジョークで返された。
ユウコさんも満面の笑みでジョークを返すが、そのやり取りを聞いていたのか後ろからマリス様の金切り声が聞こえた。
「浮気はダメなのよーーーー。いっぱい幸せなのに、ダメなのよーーー。」
軽く返そうと思ったが後が大変だと直感。無視する。
室長もユウコさんも同様に思ったみたいで何も言わない。
すぐに運営課のあるフロアに到着。降りようとしないマリスさんを近くにいた運営課の同僚達が引きずって下ろすのが見えたところで無情にもエレベータのドアが閉まる。
無言のまま3人は最上階にある調査室へと入った。
「.......あの人、運営課で有名なマリス様よねえ。」
「.....ええ、そうですよ。俺を召喚した管理者ですね。」
「.......噂とはだいぶ違うのかしら?」
「.......うーーーん、俺は付き合いが長いですからねえ、前からあんな感じだと思うんだけどねえ。」
「「.....................」」
「さあ、マリス君の不毛な話しはこちらに置いといて、仕事にかかろうか。」
「「はい!」」
「先日マサル君から報告を受けていた運営課のミリヤ君のところで起きた召喚者消失の件なんだが、正式にウチで調査を行うことになったよ。
ユウコ君は初めて聞くと思うからかいつまんで話しをするが、先日運営課で召喚が行われたんだ。
対象者はアースの日本人、そう君達の同郷の者だ。名前はアキラ君という。
彼を召喚してこちらに呼んでいる最中、もっと言えば召喚室のミリヤ君の前で床に吸い込まれるように消えていったそうだ。
そうだねマサル君。」
「ええ、その通りです。わたしも召喚室の記憶を再現して記録してありますので今からお見せします。」
俺は魔石に記録した映像をふたりに見せた。
室長は見慣れた召喚室内で起こった事象を信じられないといった眼差しで見つめている。
「このビル内で発生した事案となるとこれは由々しき問題だな。
すぐにでも解決し、今後このようなことが無いように処置しなければ。
一応、この件については運営課でも緘口令を引いてあるから他言無用で頼むよ。
ではすぐに調査にあたって欲しい。
わたしは局長に報告して来るよ。」
「「分かりました。」」
バタン
「さて、マサルさん、どこから手を付けるべきかしらね?」
「そうだな、このビルはあらゆる魔法を遮断するように作られてるって聞いたことがあるんだ。
にもかかわらず、こうして内部の者を消失させるということは、魔法以外の何らかの方法を使ったとしか考えられない。
実際、魔力についてはほとんど残っていなかったんだけど、トレース出来るくらいには残っていた。
とすると、何らかの方法で別の空間と繋げて魔力を行使したとしか考えられない。
使った魔力自体の大部分がその空間に吸い込まれたと考えれば辻褄が合うだろう。
実際、映像を見て分かったと思うが、映像が召喚者を吸い込む時点からしか取れていないんだ。
つまり、あの地面に空いた黒い影自体が別の空間だと思う。」
「つまり、敵は魔法を使わずにふたつの空間をつなぐことが出来るってこと?」
「そうなるな。そう考えるとあれは次元の狭間であり、俺は、召還者のアキラ君がそこに落ちたと考えている。
そしてその先は、「パラレルワールドってわけね。」 そうだ。
あくまで仮説でしかないが、アキラ君は地球から召喚される寸前に次元の狭間に落ちかけてたんじゃないかな。そしてそのまま召喚されて召喚室に来たタイミングで次元の狭間に落ちたんじゃないかって思っている。」
「たしかにそれなら、魔法も使わずに侵入し、召還者...アキラ君って言ったっけ、彼を連れて行くことが出来るわね。
となると、もしかすると監査部にその痕跡が残っている可能性があるわ。
監査部ではあらゆるところを探査していて、召還や次元のゆがみを観測しているの。もちろん地球の場合は世界中に網の目のように張り巡らされているわ。
アキラ君が消えた時間当たりの観測データを探れば何かわかるかもよ。」
「それはいい考えだね。でもユウコさん、監査部っておいそれと近づけないって話だけど。」
「わたしは監査部からの出向よ。上からも調査に必要であれば活用するように言われているわ。」
「それは心強いな。じゃあお願いするよ。」
「任せて!それじゃ手をつないで、さあ行くわよ。」
ユウコさんは俺の手を取ると、そのまま転移したのだった。
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