第295話【酒乱の3人 2】
<<マサル視点>>
シール様のあからさまなカマトトぶりに少し引きながらも、3人と談笑する。
話題はもっぱら俺のこと。
どんな人が好みだとか、好きな食べ物だとか、やけに人間臭い。
いや最近のOLはそんなこと聞かないか。
3人共酔いがだいぶ酔いが回っているみたいだから、同じ話しがクルクル回っている。
その内自分達が所属する異世界管理局運営課の話しになってきた。
エリート集団の中に上手く溶け込めないシール様とポーラ様。
最近のもてはやされ方に戸惑いながらも有頂天なマリス様。
こちらは通常運転か。
不安と焦り、1人だけ呑気な状態が入り混じるカオスな呑み会は延々と続く。
実はこちらの世界、時間の感覚がおかしい。
時間の流れが1方向でないというか、複数の時間が交錯しているというか、よく分からない。
今も俺の感覚では数十日は呑み続けているのに、恐らくラスク星では数分しか経過していないだろう。
逆も真なりでこちらで数分が向こうでは数十年になることもある。
もちろん法則なんか無いみたい。
俺も初めてこちらに来た時、時間の流れの不自然さに戸惑うと共に気持ち悪くなってしまった。
どうも「時間酔い」というらしい。
マリス様達こちらの人達は生まれた時からこんないい加減な時間感覚だから平気みたいだけど、相対性理論のある世界の俺達には不思議な感覚だ。
それもだいぶ慣れたと思うけど。
シール様とポーラ様の愚痴も延々と続いている。
「ほらほら、シールもポーラも飲みすぎだよ!」
「「あんたに言われたくねーよ!」」
ふたりからの強烈なツッコミにたじろぐマリス様。
ほんと、神様信仰って?っていう感じだな。
「ところでさー、アンタらマサルさんに何か相談があるって言ってなかった?」
首を傾げるふたり。
頭の上に薄く『なんだっけ?』って書いてあるのが神様っぽい。
いや比喩じゃないよ。ほんとに頭の上にクエスチョンマークが出ている。
「あっそうだった。
マサルさん、実は最近召喚した子なんだけどねー……」
早い話、召喚した男子高校生にチートな力を与えたら、好き勝手やって全然先に進まないということらしい。
どうやら功を焦って、目的を与えないうちに必要以上の能力を与えたら、予想も付かない使い方をして、制御不能だとか。
「それは困りましたね。
日本では高校生にラノベが流行っていて、チートな力の使い方が数多のように書かれていますから。
それに彼は厨二病なんでしょうね。
そんな彼には目的を与えてやれば良いと思いますよ。
例えば魔王退治だとか。
その魔王を倒す為に金属生成が必要だとか、魔王の洗脳から民を救うのに街の整備をして民の生活を豊かにしなくちゃとか。
適当にそんな感じの課題を与えておけば一生懸命に動くと思います。」
「でもあの子いくら言ってもダメなのよ。」
「『街を整備するように』とか漠然と言ってもダメですよ。
彼が興味を持つものに絡ませないと。
恐らく彼は厨二病を患ってるので、魔王なんかがいいんです。」
「分かったわ。ちょっと行ってくる。」
シール様がその場から消え、5秒後くらいで戻ってきた。
「マサルさんすっご~い!
魔王を用意して少しだけ街を襲わせたら、あの子急にヤル気になっちゃって。
向こうの時間で3年くらい過ぎたけど、見事に街が整備されているわ。」
「それは良かったですね。
あと、魔王は強すぎちゃダメですよ。
その子1人では倒せないけど、向こうの人間数人を加えたパーティで倒せる程度にしておいてくださいね。
最近の子は心が折れやすいので、魔王が強すぎると、諦めちゃいますからね。
いいですか、ほどほどにですよ。」
「マサルさん、分かりました。頑張ってみます。」
シール様嬉しそうだし、ポーラ様も熱心に聞き耳を立てている。
マリス様なんてノートとってるし。
あー、俺何やってるんだろうか?
その後ポーラ様のところもいくつかアドバイスをした結果、なんとか軌道に乗るところまで上手くいったみたいだ。
飲み会はいつまでも終わる気配を見せない中、マリス様達の同僚の方々も混じって、終わりの無い宴会はいつまでも続くのであった。
本当に皆さん酔わないし、時間は過ぎても巻き戻っちゃうし、この世界の宴会って皆が飽きるまで続くんだよ。
途中で誰かが王様ゲームをやろうって言い出したから、それだけは全力で止めたよ。
こんなノリで隕石をぶつけられるなんて、たまったもんじゃ無いだろ。
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