第252話【淑女セラフは大人気】

<<リステ伯爵夫人視点>>

マサル共和国のお茶会って、とっても素敵なんです。


庁舎に囲まれているはずなのに、とってもお洒落な中庭で、色々な国の貴重なお花に囲まれながら頂く、至高のお茶とお茶菓子。


決して高価な食材を使っている訳じゃ無いんだけど、凄く工夫されている。


今日は、お茶菓子の品評会をしている事もあって、世界中のお菓子職人がしのぎを削って作ったお菓子が存分に味わえるのよ。


以前は貴族のお抱え職人達が競い合っていたんだけど、今は平民向けの店の職人もたくさん出てくるようになっているの。


世界各国で開催されている予選会は、回を追う毎に参加者が増えて、一大イベントになっているわ。


この品評会で優秀作に選ばれても特に賞品が出るわけじゃないんだけど、職人にとっては、大変名誉なこと。


だってこの品評会で評価されたお菓子は、間違いなく売れているものね。


食材に高価なものを使っていないから、安価で作れるので平民でも気軽に買える。


レシピは特許を取って公開するのがルールなんだけど、それが長期的なヒットに繋がっているみたいなのよね。


だって、他のお店もレシピを買って売り出すじゃない。


そしたら特許使用料を払った他のお店も作るわよね。その結果として、庶民の味として根付いていくから。


もちろん特許使用料が入ってくるから、最初に開発した職人は大儲けなわけ。


本当にこのシステムを考えた人って天才だと思うわ。


でもこのお茶会に参加させて頂くのにも一苦労なのよ。


派閥も何も関係無いし、転移門が地方にも設置されたから、地方にいる貴族夫人も参加したがるし、参加希望者の多いこと多いこと。


各国の王妃様が行う抽選会で当選する必要があるのよね。


抽選会って言うと、不正をする人が出てくるのが普通なんだけど、やっぱりそんなことを考える人達もいたわ。


自分よりも目下の人が当たった抽選券を横取りするとかね。でもね、不正がばれてその人達が参加資格を取り消されてからは、不正は無くなったみたいなの。


だから、まだ貴族だけだけど爵位に関係なく様々な国の方達と交流を持てる場として、とっても有意義な時間を過ごせるのよね。


わたしも今回が3回目の出席になるんだけど、本当に参加できて良かった。

国に帰ってからお茶会を開いて皆んなに自慢するんだ。




<<ヨーク侯爵夫人視点>>

モーグル王国のヨーク侯爵の妻をしておりますサーシャ・ヨークと申します。


わたくし、光栄にもリザベート様が主宰されます、このマサル共和国のお茶会に『お茶会事務局』のメンバーとして参加させて頂いておりますの。


『お茶会事務局』は現在30名で持ち回りで5名づつがお手伝いさせて頂いております。


『お茶会事務局』はいまや全国の貴族夫人のあこがれの的なのですよ。


事務局メンバー5名からの推薦が有って且つ、4大国の王妃様方の承認が無いと入れませんの。


当然不正なんか出来っこありませんし、本当に日々精進が必要ですのよ。


もちろん、事務局員になったとしても、うかうかしていられません。


その席を狙っている人は大勢いるわけですからね。


最初は猫をかぶって頑張っていましたよ。でもね、そんな感じをしばらく続けていると、だんだんそれが普通になってくるから不思議なものです。


今では領地でも平民の皆さんまで慕ってくださるようになってきました。


不思議なものですね。


さて、今回のお茶会から新たな事務局メンバーが加わりました。


クララ様とおっしゃいます。


なんでもリザベート様の大親友で、あのセラフさんのお母様だとか。


どこの国の方かも存じ上げないのですが、王妃様方も丁寧に対応しておられるので、かなり高貴な身分の方だと思われます。


何となく神々しさを感じるのは気のせいでは無いと思います。


このクララ様、驚く事にとても料理がお上手なのです。



『お茶会事務局』では、その回毎の趣向に合わせて料理やお菓子を作ったりするのですが、クララ様は職人顔負けの手さばきで調理されていきます。


盛り付けのセンスも良く、今回のお菓子品評会に参加している職人達もその出来栄えに見惚れているようです。


またクララ様は、誰にも分け隔てなく接して下さるだけでなく、各国のご様子も良く知っておられるようです。


各国の観光地の情報はもちろん、その地域の名産品や産業品までよくご存じです。


お茶会の席上でも、リザベート様とクララ様を中心とした輪が自然と出来上がり、交互に話題となるそれぞれの地元の話で皆さん楽しそうに盛り上がっておられますね。


リザベート様もそうですが、本当に爵位など分け隔てなく接して頂き、こうして楽しい時間を過ごさせて頂けるのは有難いことですね。


本日のお菓子品評会にはクララ様も出品されておられました。


クララ様は職人では無いため、参考出品としてではありましたが、職人が選ぶグランプリはクララ様のお菓子でした。


わたし達にはわからないような細やかな工夫がたくさんあり、ここに参加できるような職人をも唸らせてしまう工夫だそうです。


クララ様って本当に素敵で不思議な方なんですよ。


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