第249話【亜人大陸の新しい観光地】

<<亜人大陸ヤライ族族長カーン視点>>

亜人大陸の文化水準を向上させるために、薬草や医術について指導して頂いているシルビア先生から連絡があった。


ヤコブの南側に広がる森の中で、洞窟が見つかったとのことだ。


南側の森は昔から強力な魔物が発生するという言い伝えがあり、長い間誰も入るものがいなかったのだ。


シルビア先生達やイリヤ大使が昨年より調査して下さって、貴重な鉱石や薬草等、多くの資源が見つかった。


また、それにより様々な新薬の国内開発が始まり、国内の医療水準を底上げしただけで無く、大陸全体への出荷等、我が国の主要輸出品目に追加されることになった。




今回発見された洞窟内でも様々な新種の鉱石が見つかったそうだ。


まだまだこの大陸の地下には、豊富な地下鉱石が眠っているようだが、同時に巨大な地下に住う魔物達が、守護するように存在しているらしい。


今回の洞窟でも、数百を超える魔物に襲われたらしいが、さすがはマサル殿の御息女イリヤさん、それら魔物を全く相手にせずに、一蹴してしまったようだ。


全くあの親子には頭が上がらない。


人族から大きく遅れをとっていた我々亜人が、近年急速に文化力を身に付けて、人族の大陸であるジャボ大陸とも対等に交易出来るようになったのは、全てあの親子のおかげだ。


さて、そのイリヤさんが興奮してベースキャンプとなっている我が家に戻って来られた。


「カーン様、洞窟でとんでもないものを発見しました。


これは素晴らしい観光地になりますよ。」


イリヤさんに急かされて、わたしは洞窟に向かった。


つい先日、洞窟発見時に来た時は縦穴から入る形だったが、今は立派な入り口が設置されており、緩やかなスロープ状の階段を降りて行けるようになっていた。


横穴である洞窟本体に辿り着くと

、今にも崩れ落ちそうだった岩肌は固い岩盤で覆われ、崩落の恐れも無さそうだ。


整地されながらも、ところどころに綺麗な鉱石や以前の不思議な形をした岩肌が顔を見せる等、ちょっとした遊び心を残した工事内容に完成度の高さを感じる。


辺りの岩肌を見学しながら、洞窟を進むと、突然壁に大ミミズが顔を見せた。


臨戦態勢をとったが、どうやら岩で作られたものらしい。


イリヤさんに聞くと、『かなりの数の大ミミズが出てきたから、洞窟を固める時に何匹か固めてオブジェ?にしておいた』のだそうだ。


たしかに面白いのだが、普通の者達だと、寿命が縮むのではなかろうか。


更に奥に進むと、それまで明るかった洞窟内がだんだん暗くなってきた。


そして真っ暗になった時、指示板に沿って曲がると、そこには……


言葉では語れないくらいに感動する幻想風景があった。


洞窟上部には無数の星達が瞬き、それらは無限にも感じられる程の幻想的な空間を作っている。


その仄明るい光の集まりは、洞窟内の岩肌を照らしているのだが、そこには色とりどりの鉱石が光を反射させており、より幻想感を引き立てているのだ。


わたしは言葉を失って、しばらくの間、この光景に意識を囚われていたのだった。




<<ヤライ族ナムル視点>>

カーン様から指示を受け、新たな観光資源となる洞窟に来ました。


わたしは以前改革担当として、ジャボ大陸を見学させて頂き、様々なことを学ばせて頂いたことを、このヤライの国に持ち帰ったナムルといいます。


おかげ様で、ヤライの近代化に貢献したとの多大なる評価を頂き、観光大臣の任を頂きました。


資源の乏しいヤライの地で国を発展させるための重点課題のひとつ、観光立国を作り上げることを使命に日夜精進しております。


このヤライの地は、自然豊かな土地なのですが、それ以外に他処に自慢出来るような観光地がありません。


観光大臣としては、風光明媚な場所を発見することや、ヤライのみが持つ産業開発等を使命として努力しておりますが、一朝一夕には難しいものです。



そんな行き詰まっていた時、またしても女神の登場でした。


そう、イリヤ様です。


亜人大陸に何処からとも無く現れて、あれほど混沌としていた4国に対し、あっという間に平和をもたらしたマサル様。


そのマサル様の御子息、御息女で、とんでもない魔法を駆使して、この大陸を一気に近代化させたランス様とイリヤ様。


特にイリヤ様に至っては、大陸に住む者達の信仰の的にまでなってなお、我々亜人のために未だにご尽力下さっています。


そんなイリヤ様が、新しい観光資源を発見されたとカーン様から伺いました。


わたしはイリヤ様と我が国では『聖女』として認知されているシルビア先生と共に、洞窟に入りました。


既に歩き易く舗装されている洞窟内は、この年中暖かいヤライの地にあっても、非常に涼しく過ごし易い温度になっています。


ここに商店や宿屋を招致したら、避暑地として人気が出るでしょう。


そんなイメージを描きながら歩いていました。


ここまでの道中は、明かりがしっかり点いていたのですが、いつの間にか真っ暗になっていました。


角を曲がるように促され、そちらに向かうと、そこは別世界でした。



一ヶ月後、満を持してオープンした件の洞窟は、初日から大盛況で、観光大臣としての面目躍如となりました。



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毎日更新して来ましたが、2~3日の更新ペースに変えたいと思います。


今新作を作成中です。


ある程度出来ましたら、掲載させて頂きます。


いつもお読み頂いている皆様には大変心苦しいのですが、今後もよろしくお願いします。


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