第233話 【閑話 カトウ家の1日】
<<カトウ家侍女頭メアリ視点>>
カトウ家で侍女頭としてお世話になっておりますメアリと申します。
旦那様がキンコー王国の公爵様になられてから11年ほど当家にお世話になっております。
旦那様であるマサル様がわたしを奴隷から解放してくださってから既に18年、まだ9歳だったわたしも27歳になりました。
同じくカトウ家でお世話になっているビムさんと3年前に結婚して、今では親子3人でカトウ家に住み込みでお世話になっています。
1年前にマサル様が新しい国を建国するとおっしゃってから、我々使用人一同もこの新しい国にお供させて頂きました。
さて、本日はカトウ家の標準的な1日をご紹介します。
わたし達使用人の朝は6時に始まります。
朝食の用意をするのですが、カトウ家の調理場はとても先進的な魔道具が備わっており、本来なら3時間以上かかる朝食の支度が1時間もかからずに終わってしまうので、6時からでも大丈夫なのです。
7時になると、ランス様とイリヤ様を起こしに向かいます。
旦那様と奥様は、6時過ぎから起きておられ、庭を散策したり、ラジオ体操をしたりされています。
そうそう、ラジオ体操は、旦那様が始められた体操なのですが、簡単で短い時間で出来る体操で、全身を伸ばせ、気持ちがスッキリするので、あっという間に世界中に広まった体操ですね。
各国の軍隊の訓練前のストレッチとしても使われています。
庭師や朝食に携わらない使用人達も旦那様と一緒にラジオ体操をやっています。
ランス様とイリヤ様が食堂に入って来られると、朝食が始まります。
「『お父様、お母様、おはようございます。」」
「「おはよう。」」
朝食は和食が中心です。
和食と言うのも、旦那様が作られた言葉です。
今ではごく一般的になった米を炊いたご飯と、海藻から作られた海苔、キノコや豆腐の味噌汁、魚の焼き物、野菜を炊いたもの等が食卓に並びます。
王家の食事としては、少し質素なようですが、豆腐や味噌、醤油、海苔等、非常に稀少品で、市場ではほとんど手に入らない高級食材です。
カトウ家では、全て自家製で作っているから、毎日食べることが出来るのです。
ありがたいことに、わたし達もいつも頂いています。
朝食後、ランス様は新しい街の造成に、イリヤ様は亜人大陸に新種の薬草探しにそれぞれ向かわれます。
おふたり共まだ10歳なのに、すでにこの世界の最高学府であるキンコー王国王立アカデミーを卒業するくらいの学力をお持ちだそうです。
おふたり共、アカデミーに席を置きながら、それぞれが希望する分野における最高権威の学者先生に師事して研究活動をされているのです。
旦那様と奥様は朝食後、執務室に入り、それぞれの仕事をこなしておられます。
執務室は庁舎内にも転移の魔方陣で繋がっているため、夕食までおふたりが部屋から出て来られることは稀です。
朝食から夕食までの間に、わたし達使用人はそれぞれ与えられた仕事をこなしています。
夕食は18時からと決まっています。
夕食までには家族全員が戻られており、夕食を召し上がりながら、1日の報告会が始まります。
夕食は、洋食が多いですね。
献立表に基づき用意しますが、稀に旦那様や奥様が作りに来られることがあります。
そんな時は、料理人一同緊張に包まれます。
特に旦那様が作られる料理は、まだこの世界に無い物が多く、今後世界中でブームになるの可能性が非常に高いのです。
それを旦那様から直接指導頂けるのですから、緊張もするわけです。
奥様は、既存の食材を上手くアレンジした料理がお得意です。
こちらも料理人達の創作意欲を刺激するようで、皆んなその創造力に脱帽しています。
夕食後はリビングで、家族団欒の時間となります。
話題は政治や薬学、土木、建築等幅広く、わたし達では入る余地の無い話題ばかりですが、皆様とても楽しそうにお話になっておられます。
21時過ぎになると皆様自室に戻られます。
普通貴族というと、ご家族それぞれに侍女が付くものですが、カトウ家には付きません。
皆様自分のことは自分でされるのです。
「「メアリさん、おやすみなさい。」」
「メアリさん、今日も1日ご苦労様。明日もよろしくね。」
皆様の労いの言葉にわたし達使用人一同、幸せな気持ちになるのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます