第228話 【ダンジョン踏破1】

<<ナルン視点>>

竜族の長に出会ってから2週間経ち、ダンジョンも65階層目に到達した。


少しペースは落ちているが、ダンジョンの難易度から見れば、順当だと言えるだろう。


55階層を過ぎてからは、ゴーレムが中心となった。


力のある巨大ゴーレム、剣を持った剣士ゴーレム、炎や水、風の魔法を使う魔法ゴーレム、素早い動きで翻弄してくる神速ゴーレム等その種類は多彩だ。


そして何より厄介なのは、コイツ等は仲間を召喚するのだ。


これらのゴーレムは、明らかになんらかの意図を持って作為的に作られた物のようだ。


ゴーレム達は3体以上の隊列を組んで規則正しく巡回している。


これが最低でも100組み以上はいると思われる。


どの通路にいても、1分と間を置かず巡回に来るのだ。


いちばん初め交戦した時は、まともに剣士ゴーレム達と対峙したが、仲間を呼ばれ、あちこちから現れた応援ゴーレムに囲まれてしまい、危ういところだった。


転移の魔方陣を使い、なんとか脱出出来たのだが。


とにかく、遭遇したら仲間を呼ばれる前に早く3体を仕留めないと、先に進め無さそうだ。


それからは前衛の攻撃部隊を強化して、敵1隊を素早く殲滅することにして、なんとか前進出来るようになった。


5度のゴーレムのスタンピードを乗り越えて、ようやく今日65階層に辿り着いた。


「この階層はまた他とは違った雰囲気があるな。」


横にいるサリが話しかけてくる。


「サリも気付いたか。

俺もそう思った。最下層の匂いがぷんぷんするぞ。」


サリはこの攻略隊の前衛として、初期の頃から参加している。


俺にとっては、既に欠かせない相棒になっている。


「ナルン、慎重に進もう。

トラップや隠し扉、幻惑等が多そうだ。」


たしかに俺の経験上、階段を降りたところが静かなダンジョンは、仕掛けが多く、最後の部屋に辿り着くのに時間が掛かることが多い。


「よし、探索スキルを持つ者達、前に出ろ。


ここが最深部の可能性が高い。


この階層は、仕掛けや隠し扉等見逃さないように頼むぞ。」


俺は過去の経験に基づく注意事項を彼等に与えて、前に送り出した。


案の定、罠や仕掛けがワンサカと出てくる。


中には罠を解除しようとすると、毒ガスが出てくる罠もあり、危険この上無い。


100メートルを10分掛けて進むくらいのペースで進んでいるから、遅々として進まない。


皆に苛立ちが訪れるが、焦りは禁物だ。


この焦らせること自体が罠であることも経験上、知っている。


皆を焦らさないように落ち着かせながら、慎重にダンジョンを進んで行く。


「サリ、皆んなの疲労はどんなもんだ?」


「適度なところで、ローテーションさせているから、疲労感は少ないと思う。


ただ、景色が変わらないから、怠惰感は広がっているわね。


それよりもナルン、あなたが休んだら。


もう、何時間も最前線で気を張っているでしょ。」


「俺はまだまだ大丈夫だ。」


「そんな無理をしないで。

あなたが休まないと、前を行く彼等も休めないじゃない。」


「そうだな。


おーい、少し休憩するぞ。


第3隊は、前の警戒を、第4隊は後ろの警戒をおこたるなよ。」


俺達が今いるのは、65階層の階段から5キロメートルほど奥に歩いたとこら辺だ。


他の階層から考えて、間もなく降りる階段に当たる頃だと思う。


「なぁサリ、この階層が最深部だとして、最後に何があると思う?」


「そうね、他のダンジョンだと各階層の終わりにボスが現れるんだけど、このダンジョンには見当たらないからねぇ。


案外何も無かったりして。」


そうなんだよな。


普通ダンジョンは奥に入るほど魔素が強くなっていき、各階層の降り口辺りが一番濃くなっている。


そしてそこには、その階層で一番強い奴がいるもんなんだ。


そいつのことをボスって呼んでいる。


そのボスがこのダンジョンには見当たらないんだ。


そのかわり、全ての魔物が他のダンジョンよりも強くて、統制が取れた動きをしているように思う。


「サリ、お前の推測は正しいかも知れねぇな。


ここの魔物は、まるで何かを守っているような感じがするしな。」




休憩に入って30分くらい経った。


「よし皆んな、休憩は終わりだ。

先に進むぞ。」


少しの時間だったが、前を行くメンバーのリフレッシュにはなったようだ。


探索は順調に進んで行く。


やがて、前方に大きな門が見えた。


慎重に門まで進む。


赤い棒を4本組み合わせたような形で、扉も無いのにその下を潜れない。


透明な何かに阻まれてしまうのだ。


「ナルンさん、この門どうしても潜れませんぜ。」


探索スキルを持っていても出来ないようだ。


しかたねえ。


俺はトランシーバーで、ギルド長に連絡を入れる。


「こちらグリルだ。

ナルンか、どうした。」


「グリルさん、65階層の最奥に、妙な門があってそこから先に進めないんでさあ。」


「どんな門だ。」


「赤くて丸い巨大な丸太が4本で、横に2本、縦に2本がクロスしている感じだな。」


「それって、上の方に横棒が2本あって、上の棒を突き抜けないように、縦棒が2本垂直にクロスしていますか?」


やや興奮気味のマサル様の声が聞こえてきた。


「そうです。そんな感じです。

って、マサル様、この門ご存知なのですか?」


「いや、知っている物に似ているなって思ったんで。


わたしも今からそっちに行きます。


すぐに行くので、そのまま動かないで下さいね。」

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