第168話 【シルビア先生と仲間達】

<<シルビア視点>>

デカさんが亜人大陸に戻って4ヶ月が経ちました。


春休みになってランス君とイリヤちゃんが亜人大陸に向かったきり戻ってきません。


やっぱり、わたしもついて行けば良かった。


亜人大陸には未だわたしの知らない薬草があるはず。


亜人大陸が、未知の薬草がわたしを呼んでいるのよー。


わたしの熱い気持ちは、ランス君達に伝わっているかしら?


イリヤちゃんはわたしの弟子だから、当然伝わっているはずだけど!


未知の薬草は何に効くかしら。


どんな匂い?

どんな色?


………………………!


「ぷはっ。」


いけない、また妄想してしまった。


だって、ランス君達が亜人大陸に行ってからもうすぐ1ヶ月よ。


いつまでもわたしを待たせるから、こんなに毎日妄想しちゃうのよ。


「早く帰って来て~~」



ドンドン 


えっ、だれか来た?


今の声聞かれた?



「シルビア先生いますか?」


「シルビア先生、先生、いませんか~?」


「お兄ちゃん、先生いないのかなぁ?」


「そんなはず無いよ。」


恥ずかしくって、出られないよう。


「先生、開けますよ。」


あっ、だ、だめ~


声にならないうちに、扉を開けてランス君達が入って来た。


「なんだぁ先生いるじゃないですか。

返事して下さいよぉ~。」


「………」


恥ずかしくって返事出来ない。


「あっ、そうだ。

忘れるところだった。


先生、喜んで下さい。

亜人大陸に行けることになりましたよ。」


えっ!!!


「そそそそれ、本当!

本当に、亜人大陸に行っても良いの?」


「大丈夫ですよ。


お父様の魔道具を使ったら、一瞬で行けますから。

もちろん、亜人大陸の4ヶ国中3ヶ国の許可も貰っていますよ。」


やったー。


わたしは嬉しくって、年甲斐も無く飛び回ってしまった。


「でも他の先生達には内緒ですよ。


あくまで、秘密の魔道具を使うんですからね。」


「大丈夫よー。絶対言わないからねー。」


嬉しすぎて、大声が出た。


「何が秘密だって?」


えっ?


扉の方を見ると、ローバーさんが怪訝そうに立っていた。


「何がそんなに楽しいんだね?シルビアさん。


その楽しみをわたし達にも分けて欲しいんだけど。」


ローバーさんの後ろには、研究室のメンバーが並んでいた。




<<ランス視点>>

「と、言うわけでお父様、皆さん連れて行っても大丈夫ですか?」


「ランス、端折り過ぎだ。

まぁ、何があったかは大体想像つくがな。」


お父様はため息をつきながら言葉を続ける。


「皆さん、よく聞いて下さいね。


皆さんを亜人大陸にお連れすることは可能ですが、ひとつ約束して下さい。


これから亜人大陸に行くために使用する魔道具は、国家機密ものです。


決して口外しないで下さい。

大丈夫ですか。」


「カトウ公爵、それは当然だと思います。


亜人大陸まで一瞬で移動出来る魔道具なんて、悪用されたら一瞬で国が滅びますからな。」


「流石は先生方ですね。ご理解頂きありがとうございます。」


「こちらからも質問したいのだが。」


「なんでしょうか?」


「あちらでの研究成果はこちらで発表してもよろしいでしょうか?」


「そうですね。しばらくは遠慮下さい。


魔道具を使っている間は、魔道具の存在を知らしめることになりますので。


でも、早い内にサイカーと亜人大陸が交易を始めると思いますので、航路が出来たら大丈夫です。


あと、あちらの機密に関するものもあると思いますので、その辺りは注意願います。


それと皆さんのことは、ネクター王に連絡しておきますね。」


「よく分かりました。

公爵の顔を潰さぬよう、気をつけます。」


「では、行きましょうか。」


王都の屋敷からはナーラの屋敷を経由して行くことになる。


僕達は、王都の屋敷の地下室へ移動した。


「さあ皆さん、手を繋いで下さい。


良いですか?行きますよ。」


お父様が魔道具に魔力を流すと、光に包まれ、すぐにナーラの屋敷の地下室に着いた。


「もう一度転移しますからね。

手は離さないで下さいね。」


ロンドーへの魔道具に魔力を流し、ロンドーへとたどり着いた。


「カトウ公爵、いらっしゃい。

また大人数ですね。」


「すいません、アーク陛下。

皆さん、ランスとイリヤの先生方で、ジャボ大陸でも有数の権威ある学者さん達です。


様々な分野の専門家ですから、これから進められる様々な改革にお役に立てると思います。


あっそうだ、我が国の陛下も一度お会いしたいとのことなので、日を改めて、お連れします。」


アーク陛下とお父様は、そのまま外交の話しに入ってしまったので、僕達は王宮で手持ちぶたさになった。


「ランス君、わたしが接待させて頂きます。」


ヤクル宰相が、声を掛けてくれました。


この前僕達が帰る時には、自身のお父様の件で、落ち込まれていたみたいだったんだけど、元気そうで何よりです。


「ランス君、イリヤちゃん、あっシルビア先生も、いらっしゃいませ。

お待ちしてました。」


「デカさん、久しぶりね。

元気そうで良かった。


お父様達もお元気?」


「カトウ公爵様のおかげで、全て上手くいきました。


わたしも昔からお慕いしていた方と結ばれることが出来まして。」


「…………」


「わたしより先に……ぶつぶつ……」


だめだ、また妄想に入っちゃった。


「先生、戻って来て下さい。せんせい」


ちょっと、先が思いやられるよね。

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