第153話 【ヤライの防衛強化3】

<<ランス視点>>

「カーン殿、早速防衛ラインの強化について、打ち合わせをしませんか。」


お父様が、デカさんのお父様に話し出す。


「ちょっと待って下さい。

おふたりはまだ子供ですよね。」


「お父様、ランス君はまだ8歳ですが、スパニの間者5人を1人であっと言う間に倒しちゃったんですよ。」


デカさんの言葉にカーンさんは目を白黒させています。


「カーンさん、大丈夫ですよ。

直接戦闘に関わらせる気はありませんから。


この2人は空も飛べるし、重力魔法で重い石も運べますので、砦の構築にはお力になれると思いますよ。」


お父様の話しを聞いて驚いているカーンさんに向かって僕とイリヤはサムズアップした。




僕とお父様は、現在の国境砦の外側に巨大な土壁と堀で新しい防衛ラインを構築する予定。


「よしランス、先ずは防衛ラインに沿って線を引こう。


ランスはお父さんの右側10メートルの位置に線を引いていってくれ。」


「わかったよ、お父様。」


鉱山に沿って2キロメートルほど線を引き終えた。


「よし、ランス、イリヤ、外側の線に沿って堀を掘ってくれるか。


お父さんは内側の線に合わせて塀を作っていく。」


僕とイリヤが堀を掘り、土を外側に出していく。


内側の線に沿ってお父様が土を隆起させ壁を作っていく。

隆起させる度に僕達の掘った堀が深くなり、堀の1番下から塀の1番上まで20メートル以上ある。


僕達が堀を掘った時に積み上げた土で、堀の外側には約5メートルの壁ができている。


5メートルの壁、10メートルの堀、10メートルの壁の頑強な構造が2キロメートルにわたって続いている。


1日で作業を終え、僕達はデカさんの家に戻った。


「デカさん、ただいま。」


「あっ、皆さんお帰りなさい。

今日の作業は終わりましたか?


明日はわたしも手伝いに行きますので。」


「防衛ラインの強化は終わりましたよ。


明日から、壁の上に攻撃用の魔道具を設置します。


あとは、防衛ラインの使い方の指導と、堀に水を張ることくらいですね。」


お父様がデカさんに説明した。


「ええっ、防衛ラインって2キロメートルもあるんじゃなかったですか?


1日で終わる作業じゃないですよね。」


デカさんが不思議そうにお父様に尋ねる。



バタン!!!



屋敷の扉が大きな音を立てる。


「はあはあはあ、マサル殿お帰りでしたか!


今防衛ラインの予定地に行ってきましたが、なんですかあれは!!」


「ああ、カーン殿、だいぶ出来ていたでしょう。」


「だいぶって、ほとんど完成じゃないですか。


まだ1日目ですよ。」


「ランスとイリヤが手伝ってくれましたからね。

予定よりも早く進んでいますね。」


「作業を見ていた兵士が、唖然として放心状態でした。


聞き正すと3人の凄まじい魔法で、あっという間に出来てしまったと言っていました。


わたし達エルフは精霊の加護を受けていて、魔法が使えるのを誇りにしているのですが、皆んな自信喪失していましたよ。」


「それは申し訳無いことをしたなあ。


じゃあ、明日から堀の水張りは兵士さん達にお願いしようかな。


わたし達は、攻撃魔道具の設置を行いますね。」


「お気遣いありがとうございます。


明日は朝から兵士達にハッパを掛けます。」


明日も僕達だけでやれば早いのにね。


まぁでも作業を兵士さん達にやってもらえば、兵士さん達も新しい砦に愛着が湧くだろうから、そっちの方がいいんだろうけどね。



翌日、僕達は早朝からカーン叔父さん達と防衛ラインまで出かけたんだ。


カーン叔父さんとお父様が兵士さん達に、水張りの仕方を教えている。


深さは3メートルほどで、泥を混ぜて濁らせる。


「川の中にカイマンワニをたくさん放ってはどうでしよう。


スパニ族は獣人が中心なので泳いで堀を渡る者もいると思います。」


説明を受けていた前線の兵士長からの提案に、お父様は笑顔を浮かべて、カーン叔父さんを見る。


「よし、その案採用しよう。5人ほどでワニを捕まえて来てくれ。」


「近くにワニが多く生息する沼があります。


一時的にその沼とこの堀をつないで、餌で誘導しても構いませんか?」


「良いアイデアだ。採用しよう。

では早速掛かってくれ。」


「はっ。それでは第1隊の5名はわたしに続け。


後の者で水魔法を使える者は水の投入を、それ以外は泥の投入を行うように。


気合いを入れて頑張れよ。」


兵士長の気合いの入った号令にその場に居た兵士は一斉に動き出したんだ。


「カーン殿、泳ぐ獣人が居ると言うことは空を飛ぶ獣人もいるわけですよね。


そちらは魔道具で対応するように仕掛けておきますね。」


「そうだな。マサル殿、すまぬがそちらの方はお願いする。」


こうして1週間後、無事に防衛ラインは完成し、兵士達で運用できるレベルになったんだ。


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