第114話 【新しい命1】

<<リザベート視点>>

新婚旅行から帰って、新しい生活が始まりました。


大陸全土への物流センターの設置もほぼ完了し、マサルさんも公爵としての仕事がメインとなっています。


キンコー王国以外にも、各国から名誉貴族の称号を得ているマサルさんは、国際連合加盟国全体の指揮者としての活動を期待されています。


そこでマサルさんは、領地を持たない法衣貴族として、国際連合総長の任に着くことにしたようです。


基本的にマサルさんは名誉職みたいなものなので、事務局に頻繁に通う必要はないと思うのですが、律儀な性格の人ですから、毎日通っています。


わたしは、視察や講演会の仕事を少しセーブして、マサルさんのお手伝いをすることが増えています。


わたしもキンコー王国の官僚から国際連合の職員に転職しました。


各国からの要請も多かったですし、スポックさんからの強いお誘いがあったからです。


わたしとしても、マサルさんと一緒にいる時間が多くなるので、良かったと思います。


自宅からナーラ領にある国際連合事務局迄は、馬車で1日程度ですが、トラック馬車を改造した高速馬車であれば、3時間くらいで着きます。


でも、毎日の通勤にはそれを使っていないんです。


実は、自宅の地下室から国際連合事務局のマサルさんの執務室まで、転移魔法の魔道具で移動できるのです。


また、マサルさんが開発してしまいました。


本人いわく、『なんとなく作ったら出来てしまった。』だそうです。


もちろん、国家機密レベルなので、双方の入り口は強固な結界で、マサルさんかわたし以外は通れ無くなっていますし、スポックさんとわたし達以外は、その存在すら知りません。


不審がられないように、事務局に隣接した建物に住んでいることにしています。


まぁ、もしバレたとしても、マサルさんのやることですから、今更誰も驚かないかもしれませんが。


わたし達の仕事はどちらかと言えば名誉職なので、時間はたっぷりあります。


そんな感じで、穏やかな日々が過ぎていきました。





夏も終わり、収穫祭が間近になる頃、わたしの体に少し異変が起こってきました。


その変化に最初に気付いたのはメアリちゃんです。


「奥様、最近少し食が細くなられましたね。

顔色も少し赤いですよ。」


メアリちゃんにそう言われました。


すると横で聞いていたアリスさんが、質問してきました。


「奥様、最近吐き気や気分が悪い時はございませんか?


もしかすると、悪阻かもしれませんね。


お医者様をお呼びしますね。」



こうして、わたし達は新しい命を授かったのです。


妊娠していることを、マサルさんは大変喜んでくれました。


早速自宅の礼拝堂にあるマリス様の像に報告しました。


そうすると、淡い光と共にマリス様が現れ、祝福して下さいました。


「マサルさん、リザベートさん、おめでとう。

わたしから貴方達の子供に加護をあげるわね。


じゃ、リザベートさん気をつけてね。」


マリス様は、言うだけ言うと光と共に消えてしまいました。


とにかく、健康に生まれて欲しいと願うばかりです。



妊娠の話は、あっという間に大陸全土に広まったようです。


わたしは、自宅にいることが多いためあまり知らなかったのですが、後に聞いたところによると、大陸全土でお祭り騒ぎが起こり、経済活動が平時の1.5倍になったそうです。


特に、わたし達が新婚旅行で周ったところは、『幸運の聖地』と呼ばれ、そこを巡礼することが流行っていました。


歳入が少なく今ひとつ経済活動が遅れていた小国にとっては、観光客の増加と、このお祭り騒ぎは格好の起爆剤となったそうです。


これらの国民は、暮らしが良くなっていくことに感謝し、官僚達はこの特需資金を元に一気に特産品の開発や、交易の拡大、農村改革を進めました。


同様の国が競って改革を進めたため、ほとんどの国が安定していきました。


聞いた話しでは、マサルさんの像を設置する国が増えたとか。



身近なところでは、お義母様が大張り切りです。

自分達に子供がいなかったので、新しい命の誕生を誰よりも喜んでくれています。


最近は毎日来られていて、仕事もここでされることが増えました。


「ここは便利な魔道具がたくさんあっていいわね。


トランシーバーとファックス、それと『電子会議』だっけ、この3つがあれば、どこに居ても仕事になるわ。」


お義母様がこちらに入り浸っているので、困った部下の人達に懇願されてマサルさんが開発した『電子会議』の魔道具は、皆さんに大好評です。


お義母様の執務室と、わたしの執務室が繋がっていて、顔を見ながら会議が出来ます。


書類はファックスで送ればいいし、あちらの執務室以外とはトランシーバーで会話できます。


お義母様はこの3つの魔道具がお気に入りで、他にもいろいろなところに置きたいと、マサルさんに催促していました。


当然わたしも会議に巻き込まれますので、せっかくの休みが台無しです。


せっかく、生まれてくる子供の服でも作ろうと意気込んでいたのですが。


わたしの代わりにメアリちゃんが、アリスさんに習いながら一生懸命に作ってくれています。


そんなことを繰り返しているうちに、どんどんお腹が大きくなっていきます。


桜の咲く頃、わたしは可愛い男の子と女の子の双子を出産しました。

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