第33話【閑話 穏やかな日常】

<<リザベート視点>>

今日は、久しぶりの外出日。

ゼミや生徒会活動に忙しくて、なかなか外出するほどの時間が取れなかったんだよね。


マサルさんにも連絡して待ち合わせしてるんだ。

なにを着て行こうかしら。

もう18歳になるんだから、下着もキチンとしとかないと。

マサルさんと大人の関係になる可能性もあるかも。 キャ


待ち合わせ場所は、学校の門の前。

待ち合わせ場所のメッカである、忠竜 ドラ公前で待ち合わせしようと思ってたんだけど、人が多くて危ないからって、マサルさんが、学校まで来てくれることになったの。


あっ、まずい。待ち合わせの時間になっちゃう。


慌てて着替えて、門の前にでた。

マサルさんは、もう待っていてくれた。

「マサルさん、遅れてごめんなさい。」


「リズ、久しぶり、元気にしてたか?」


「元気、元気。マサルさん、会いたかった!」

マサルさんにとびついて、腕を組んじゃった。


「おい、みんな見てるよ。なんか、男子生徒の視線が痛いんだけど。」


「気のせいだよ。それより早く行きましょう。今日は、1日大丈夫?」


「大丈夫。ユーリスタ様に、休みをもらってきたから。」


「お義母様(ユーリスタ様)ともしばらくお会いしてないわ。

産学官連携会議では会うけど、お互い立場上ねぇ。」


「買い物が済んだらユーリスタ様のところに、行くかい?」


「今日は、マサルさんとゆっくり楽しみたいから、また今度ね。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

産学官連携会議とは、お義母様の発案により発足した会議。

国や領の役人(官)とアカデミーの学生(学)、農家・商家・工場等(産)のそれぞれの代表が集まって実施される。

主に、改革案の賛否を採ったり、進め方を決めたり、新しい改革案を創出したりと、最近ではこの会議が改革の方向性を決める、重要な役割を担っている。


お義母様の考えでは、改革は続けていくことが大事だから、「皆で考えて、皆で実施する」を根付かせることが大事だって。


わたしとしては、学生が参加することで、改革の精神が、世間に浸透することが良いと思う。

マサルさんの受け売りだけどねっ。


あっそうそう、「産」には最近マサルさんの提案で出来た職業「運送業」も入っているわ。


今まで、物を運ぶのは、商人が移動のついでにやっていたんだけど、マサルさんは、改革で物の移動が急増することを予測して、「物を運ぶこと」を専門とする新しい職業「運送業」を作ったの。

ネクター王やお義母様と調整しながら、王国中に、物流ネットワーク?っていうのを作っちゃった。

そして、この世界初となる、運輸業「カトウ運輸」ができたの。

もちろん会頭は、マサルさんよ。


商人達は、始め冷ややかな目で見てたんだけど。


ところが、「カトウ運輸」が一躍注目を集めることが起きたの。


王都から北に険しい山脈を越えたところにあるタカツー領で大規模な冷害が発生して、食糧が足りなくなったの。

タカツー領は、領内での自給率が高かったから、食べる物が本当に無くなっちゃったの。

でも、自給率が高いから他領の商人があまり行って無くて物がすぐに大量に運べなかったわ。


その時、出来たばかりの「カトウ運輸」が物流ネットワークを活かして、各地からタカツー領に食糧を運んだの。


あっと言う間に食糧が運ばれて、タカツー領内での餓死者はゼロだったのよ。


この「カトウ運輸」の活躍により、物流ネットワークの重要性が広く知れ渡り、この職業のことを、「運送屋」ってみんなが呼ぶようになったわ。


「カトウ運輸」は、これだけじゃないのよ。リタイヤした冒険者や主婦、老人の雇用も積極的に行った結果、王国内の失業率が大幅に下がったわ。

リタイヤした冒険者は、荷物の運送や個別の配達に。だって魔物と戦えるから運送に最適でしょ。

主婦や老人は、王国中に沢山ある物流センターで荷物の仕分けをしたり、伝票を書いたり。

文字や計算なんかも入ってから教えてくれるから安心。

みんな喜んで張り切って働いてくれているってマサルさんが喜んでいた。


それから1年経って、「カトウ運輸」は益々大きくなって、マサルさんは、本当なら大金持ちになってるはずなんだ。

だけど、相変わらず自分に無頓着だから、自分で自由になるお金の内、生活に必要分以外は、いろんなところでの慈善活動に使っているみたい。


本当に呆れちゃう。

まぁ、そんなマサルさんが大好きなんだけどね。


そうそう、産学官連携会議にはマサルさんも出席しているわ。

カトウ運輸の代表として。

本当は、お義母様の筆頭ブレーンだから、官側なんだけど、そちらは目立たないようにしてるから、産側で出てるの。


産側の本音が聞けるからって、お義母様は喜んでいるわ。


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マサルさんと商店街を散策していると、みんなが声をかけてくれる。


それは、わたしにだったり、マサルさんにだったり。


わたしもアカデミーの活動でちょっとだけ有名になっちゃた。

もちろんマサルさんほどじゃないけどね。

マサルさんの始めた慈善活動は、なんの見返りも求めて無いから、急速に広まっていったの。

今では賛同する人達からの寄付金も多くなり、近々王立の慈善活動管理協会が発足するの。

これは、わたしのアイデア。

寄付してくれた人の善意を広く大陸中に広めたいじゃない。

また、王都以外でも適切に慈善活動をして欲しいからね。



商店街でウインドウショッピングを楽しんだり、ご飯を食べたりしていると、あっという間に時間が過ぎていく。


わたし達は、最後の目的地である教会に着いた。


わたしとマサルさんを引き合わせてくれたマリス様に、二人でお祈りするのがこのデートの決まり。


お祈りの後、マサルさんはアカデミーまで送ってくれた。


別れ際、マサルさんが何かに気を取られたスキにほっぺにチュッてしちゃった。

マサルさん、顔を真っ赤にしてぼおっとしてたから、「じゃあね。また。」って走って部屋に帰ったんだ。あー楽しかった。

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