第30話【迫る危機】

<<????視点>>

「コペン、例の計画はどのような状況か?」

「順調です。カクガーの森に住むホンノー人最大部族の長カインに催眠術をかけ、他の部族を武力で糾合させました。

その際、秘密裏に用意しておりました最新の魔導武器を渡しておいたのですが、部族を二つほどその魔導武器で制圧しますと、他の部族もその威力に恐れをなして、自ら投降してきた為、予想よりも早く糾合できました。


カクガーの森を糾合できましたので、カインにはキンコー王国内にあるホンノー自治区を攻撃させました。

しかしながら、こちらは案外手強く、20人程度の手勢では、多くの被害を与えたものの、制圧には至りませんでした。

ホンノー自治区には、降伏を促す書面を出させておきましたが今のところ、返答は無いようです。


返答が無ければ、来月早々には総攻撃を掛けさせ制圧させる予定でございます。」


「わかった。妾が裏で動いていることは、絶対悟られない様に進めるのじゃぞ。」


「承知致しております。その為に、ホンノー人の内紛という回りくどい手を踏んでおります。イーヒヒッ」

「わかった。もう下がってよい。」


妾がそう言うと、コペンは足音も立てずにその場から立ち去った。


全く、我が腹心ながら、不気味な奴だ。


まぁ良い、ホンノー人の反乱として、憎っくきキンコー王国の力が削げれば良いのだから。ふふっ。


<<カイン視点>>

「ホンノー人の別部族が結託して、我が部族を滅ぼそうとしている。」と、ある行商人が知らせてくれた。

彼は、2年程前に、カクガーの森で、魔物に襲われているところを助けてからの付き合いになる。

1月に1度程度の頻度で、俺に会いに来て、様々なものを置いて帰る。


先月に来た時に、彼は20本程の杖を持って来た。

つい最近、異国で開発された魔道武器だという。


この魔導武器を試してみて驚いた。

我らが持つ武器とあまりにも威力が違い過ぎた。


元々、ホンノー人には異能の力がある為、武器が発達しなかった。

その為、部族間での小競り合いがあったとしても、降伏させられる程のことはなかった。


この武器を使えば、降伏どころか、全滅させることも可能だろう。


その商人は、それが他部族から引き合いがあったものだという。

もし、その部族の標的が、我が部族だとしたら………


「この杖を我に売ってもらえないだろうか。」


「わかりました。他ならぬカイン様の頼み、他部族へは、また別の日に売りに行くとしましょう。」


「それはならぬ。両者がこのような武器を持てば、共倒れで、全滅しかねない。」


「しかし、それではわたしどもの、商売になりません。

杖1本あたり、白金貨1枚で100本分の売上げを予定しておりますのに。

それとも、カイン様が100本お買い上げ頂けますかな。」


「むむっ、100本は無理だ。」


「それでは、ひとつ相談になります。

今カイン様の村は、他部族に狙われている。

その部族がこの魔導武器を持てばどうなるか。

ならば、カイン様が今回お買い上げ頂く20本で、先手を取ってみられてはいかがでしょう。

残りの80本については、糾合した部族に購入させ、カイン様の手に貢がせては。」


同じホンノー人同士で、そのような姑息な真似ができるか! と思う反面、すごく名案で是非共採用すべき案だという思いが、頭を支配する。


…………………


「わかった。そなたの言うようにしよう。

すぐに準備に取り掛かる。」



こうして俺は、気付けば2つの部族を武力制圧していた。

何故こうなったのか、すっきりしないところもあるが、その後は、次々と恭順してくる部族が増え、結果的には、最小限の被害で、我が部族の危機を退けたことになり、ホッとしている。


カクガーの森の全てのホンノー人部族を糾合できた日の夜、また、あの行商人が訪ねてきた。


「カイン様、糾合おめでとうございます。」


「そなたの言う通りになったな。」


「ありがとうございます。それでは、残り80本の魔導武器をお買い上げ頂きとうございます。」


「わかった。買い取ろう。」


「ありがとうございます。良いお取引でございました。

さて、カイン様のお耳に入れたい情報が手に入りましたのですが。」


「うむ、聞かせて頂こう。」


「では。カクガーの森の部族糾合で危機感を募らせている者がおります。」


「キンコー王国のホンノー自治区か?」


「その通りでございます。昨今、キンコー王国では、改革により大変な好景気になっております。

ホンノー自治区でも、その恩恵を受け、生活水準が上がっていると聞いております。


その為、次は自分達の番ではないかと騒ぐもの達もおり、先手を取れという強硬派の力が強まっていると聞いております。」


「そう取られても仕方あるまい。使者を出して誤解を取り除いておかねばな。」


そう言った途端、頭の中に靄がかかったような気分になったが、すぐに晴れた。


「そうか、ホンノー自治区に先手を取られる前に、攻撃しなくてはいけないな。

商人!すぐに魔導武器を準備してくれ。」

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