第十一話 ……つまり、御毒味役って?
「どうしました? 納得いかないようですねぇ?」
澄ました顔して問いかける
「この世界に来たばっかりで、しかも転移して来たんじゃ急には理解出来ないんじゃないですかねぇ?」
無邪気な笑顔を浮かべてリアンにさりげなく俺を庇うようにして意見するアルフォンス。一見、天真爛漫で無邪気に見えるが、要注意だ! この手のタイプは裏がある。これは経験から培われた野生の勘だ。例えば、俺に笑顔で興味あり気に近づいて来る女は大体が弟目当てだったし。初めて付き合った彼女は弟を紹介した途端弟に心変わりとかな。
「魔法だって使えないから意味不明でしょう?」
とニッコリと俺に笑いかけるアルフォンス。クソッ、口元のエクボ二つが可愛いじゃねーか。あ! 誤解するなよ? ショタの傾向はねーからな。ほら、一見親切ぶっているようでその実、人を見下したような言い方。やっぱりコイツには裏があるな。普通の感覚では見抜けないさ。俺みたいに人間関係で痛い思いを積み重ねた奴だけが分かる超感覚……なーんてな。
「ええ、何から質問して良いのか分から無いほど混乱しています」
俺は曖昧に微笑み返しながらも正直にこたえた。だって今から疑問だらけじゃ、今後が思いやられるもんな。
そんな訳で、今俺たちは俺の寝泊りしている部屋に戻って来ている。食堂だと誰に聞かれるか分から無いし、聞こえないように魔術を施せば逆に疑われ兼ねないから、だそうだ。なんでも、俺の部屋は元々が大事なお客様用の部屋で、プライベートをしっかり御守りする為だかで完全に盗聴、盗撮がされないよう保護魔術が掛けられているそうだ。部屋に戻った時、リアンが軽く右手をあげて親指と中指をこすり合わせてパチンと鳴らしたら、サッと部屋の真ん中に長方形のガラス製丸テーブルと木製の椅子が三つ出現したのには目ん玉が飛び出たぜ。後で真似してみるかな。
「……では、疑問に一つ一つお答えしましょう。私共も転移して来た者に対応するのはこれで二回めですしね」
リアンは『仕方ありませんね』というように眼鏡のエッジを右人差し指で軽く弾いた。
「二回め、なのですか?」
すかさず質問する。俺の他にも転移して来た奴がいるって聞いて希望が湧いた。ソイツに色々聞けそうじゃんか。
「ええ。今、彼は殿下の近衛兵大将としてしっかりと活躍して頂いています」
……なんだ、俺とは出来が違う奴か。
「確か、一日でこの世界を網羅。二、三日で魔術と体術を、剣術を身に着けて。とっても優秀で美丈夫だったから、殿下に気に入られて近衛兵に入ったんですよね」
あ、そーですか。悪かったッスね、凡人で。で、何が言いたい? アルフォンス。
「ええ、その後は実力が目を見張るほど伸びて。十日めには大将として是非、と当時の大将に位を譲り受けたのでしたね」
と、リアン。はいはい俺とは出来が違いますよーだ。
「殿下のお気に入りの一人ですよね」
ん? て事は
「ええ。さ、話が横道に反れました。質問をどうぞ」
おーっとそうだ、質問質問、と。
「はい。……まず、遠隔で食事に毒を仕込む魔術、という事ですが。毒味役が食べてから問題ないと判断して殿下にお出しする。ここまでの間に毒が仕込まれたりしないのですか?」
これだよこれ、まず。
「それに至ってはアルフォンス、担当のあなたが直に説明をしてあげた方が分かり易いでしょう」
「はい!」
出た! まさに面従腹背の笑み!
「毒味役には、毒が仕込まれたのを見抜く力に長けていて。それでも見抜けない場合は己の体をはって食べて確かめるんですけど。食事が目の前に運ばれてから食べる前に、まずはそれ以上毒が仕込まれないよう防御の魔術を施すのですよ。それで、大丈夫だと判明しても問題あり、と判明してもどの道そこでもう一度防御の魔術を施します。毒が仕込まれていたらその術の特定をする為に現存保存の意味でね」
「……なるほど。では毒味役は防御の魔術に優れている訳ですね?」
俺の担当場所にはならなそうだな。
「そういう事です。それも、簡単には解けないように毒味役と殿下しか知らない暗号魔術をかけるので。魔術は毒味役と殿下にしか解けないのですよ。まぁ、解く必要はないですからそのまま召し上がって頂けば良い訳で。それと、毒味役には単に味の確認の仕事も兼ねてますから。新メニューなどは特に、殿下の嗜好に合うかどうかもチェックしますね。好み合わなそうなら下げさせ、後日作り直しさせます。毒味役は徹底して殿下の好みの味や触感、薫りなどを徹底的に覚える事からはじめます」
うわっ! 厨房に嫌われそう。魔術だけじゃなく、味覚にも料理にも優れてないと駄目なのか。そりゃそうだよな。
「……では、何故前の毒味役の方はお亡くなりに?」
「稀に、毒が毒味役の体質に合わない場合がありましてね。そちらの世界で言いますと、アナフィラキシーショック、みたいな感じでしょうか」
なるほどな、てか相変わらずにこにこしてこえーよ
「あなたが先程毒味役をした時は、既にアルフォンスが毒が仕込まれていない事を確認して防御魔術を二重にかけてありましたからね」
すげーな、何もしてるよに見えかったけどいつの間に!?
「有難うございます」
どう反応すりゃ良いか分からんから取りあえずお礼言っとけ。
「いいえいいえ、とんでもない」
愛想良く反応する
「因みに、殿下の為に亡くなられた場合、その想いが純粋であると閻魔に認められたらこの次のレベルの世界『
え? え? つまり、どういう事だ??
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