第7話 累積退場ってサッカーじゃあるまいし

海翔かいとって、下僕げぼく系の人だったんだ~」


 くすくすと笑いながら声を掛けてきたのは同じ中学出身の宮子。


「え?」

「だって交際届に署名捺印するなんて、M属性の男子よ~」

「交際届のこと知ってるの?」

「え?まさか知らずに署名捺印したの?嘘でしょ?」


 逆に聞きたい、なんで知ってるの?


「海翔ってゲームでも説明文を読まずに同意する系の人だもんね~、まあ頑張ってね、あ、美咲~」


 そう言い残して宮子は友だちのほうに行ってしまった。


 ピピッ


 背後で笛が鳴った。


 びっくりして振り向くとサッカーのイエローカードみたいなものが提示されていた。こいつが覆面調査員か、顔は丸見えだけど。


「ついにやらかしたわね、海翔」


 敬子が怖い顔をしている。


「心得その108 男子が他の女子と会話をする時は女子立ち会いの元、あるいは許可を得て行うこととする Y

 ただし学校活動をする上で必要な連絡事項はこの限りではない」


 他の女子といちゃつくなってことか?この内容なら、心得のもっと若い番号でも良いのに、どうして焼きそばパンの項目より後に載せるかなあ…あ、108…煩悩の数だ、なるほど。

 ふっとみが浮かんでしまった。


「なに笑ってんのよっ、この心得は Y なのよ」

「 Y ?」


 顔丸出しの覆面調査員が無表情で生徒手帳を読み上げた。


「生徒会規約 第百八十条の二

(第一項) 交際の心得に「Y」と記載のある項目に違反した場合はイエローカード「R」の場合はレッドカードが提示されることがある

(第二項) イエローカードは累積10枚でレッドカードとなり生徒指導室にて指導を受ける

(第三項) レッドカードは累積2枚で退学とする

(第四項) 累積枚数は学年が変わる際にリセットされる」


 覆面調査員は生徒手帳をしまって、今度はメモ帳を取り出し日付と時間と俺の名前を書き込んで黙って去って行った。


「いいかげんに心得と生徒会規約を読んでよっ、海翔が退学になったら私どうしたら良いのよっ、くすん」


 くすん?俺をこんな状況にしたのは敬子だろうが。

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