245 サイロの建築準備

 俺は大人たちを見回す。


 ヤギたちも、その背に乗るカヤネズミたちも、俺を見ている。

 フクロウたちも、止まり木から床に降りてきてくれた。

 陸ザメたちは、手に持った草をむしゃむしゃしているが、ちゃんとこちらを見てくれている。

 飛竜とボアボアも真面目な表情を浮かべていた。

 

「これから暖炉というものを作る予定なんだ。この小屋とボアボアの家にも一つずつおく予定だ」

「めえ~」「ちゅ?」「ほう?」

「ぶぶい?」「べむ?」「ががう!」


 やはり暖炉を知らないものの方が多そうだ。


「知らないものたちのために簡単に言うと、部屋を暖かくするための装置だな」

「めえめえ~」

「そう、子供たちが、突っ込んだら危ないからな。気をつけて欲しい」

「めえ?」


 メエメエが「どのくらい熱くなるのだ?」と俺に聞いてくる。

 すると、他の者たちも気になるようで、うんうんと頷いてた。


「じつはだな、まだどのくらい熱くなるのかわからないんだ」

「めえ?」「ちっちゅ?」「ほほっほう?」


 ヤギたちもカヤネズミたちもフクロウたちも首をかしげている。

 ストラスなど、ほぼ直角に首がまがっていた。


「いま、イジェが持っていた赤い石という発熱体の実験中なんだ。それがどのくらい熱くなるか次第だな」

「ほ~」


 イジェと聞いて、ストラスは嬉しそうに一度羽をバサッとさせた。


「もしかしたら、赤い石より薪を燃やした方がいいかもしれないし、赤い石を補う形で薪を燃やす必要があるかもしれない」

「めえ~」「ちゅ~」「ほ~う」

「だからまあ、どのような構造になるかはわからんが、あとで暖炉というすごく熱くなるものを作りに来るよ」

「めえめえ」「ちゅちゅ~」「ほうほーう」

「ボアボアの家にも作るよ」

「ぶぶい~」


 大人たちへの説明が終わったころ、


「暖炉には触れたらだめなんだよー」

「わふう」

「でも、ボエボエは賢いから、ダメって言われたらわかるもんな」

「ぶぶい」

「だめだよ~」

「べむ!」


 ジゼラ、ケリー、フィオによる子供たちにも説明が終わっていた。

 ちなみに子魔狼たちは眠っている。


「きゅお」

「ヒッポリアスは、わかっているもんな」

「きゅうお~~」


 ヒッポリアスは尻尾を勢いよく振った。


「さて」

「あ、テオさん、赤い石とやらをみにいくの?」


 ジゼラは赤い石が見たいらしい。


「いや、その前にサイロの建築だ」


 小屋を一気に作って、大分疲れた。

 だが、ずっとピイがマッサージしてくれたので、回復したのだ。


「ピイ、いつもありがとうな」

「ぴっぴい」

 頭を揉んでくれていたピイがプルプルした。


「サイロかー。ぼくも昔見たことあるよ。石の塔だよね?」

「まあ、似たようなもんだな。とりあえず、外に行こう」


 俺はヒッポリアスを抱っこして外へと向かう。


 ジゼラ、ケリー、フィオは寝た子魔狼たちを抱っこして付いてくる。

 ベムベム、ボエボエ、シロはその後ろを付いてきた。


 ボアボアと飛竜、メエメエ、そしてメエメエの背に乗るカヤネズミが付いてくる。

「ぶい~」「めえ!」「ちゅっちゅ」


 他のヤギたちやカヤネズミたちは小屋の中だ。

 小屋の床や壁の感触や、設備の使い勝手を確かめているのだろう。


「ボアボア、メエメエ。この辺りでいいかな?」

「ぶぶい!」「めえ~」


 改めて場所の許可を取ったので、石材を魔法の鞄から取り出した。

 サイロの主材料は石材なので、大量に必要だ。

 それに金属も使うのでインゴットを取り出す。。


「さて、地面の鑑定からだな」

「さき、やてなかた?」


 フィオが疑問に思ったようだ、


「時間が経ったからね」


 フィオのいうとおり、地面の鑑定は、先ほど小屋を建てたときにやった。

 だが、もう一度改めて鑑定するのだ。


「鑑定内容って、特に建築の場合、時間が経つとすぐにわすれちゃうんだ」

「そなんだ?」

「うん、ものすごく大量の情報が一気に頭の中に流れてくるからね」


 忘れないと頭がいっぱいになってしまう。


「じゃ、どして、さき、さいろのじめんのかんていもしたの・」

「それはね。問題があるかどうかだけ調べたんだ」

「もんだい?」

「サイロを建てるのに致命的な問題が地面にあれば、建てられないでしょう?」

「うん、たてられない」

「小屋を建てた後に。致命的な問題が地面に見つかったら、サイロを遠くに建てないといけなくなる」


 それは、ヤギたちにとって不便だ。

 日々のご飯をとるために、遠くまで歩かないけなくなるのだから。

 晴れの日はともかく、猛吹雪の日などはとても厳しい。


「だから。念のためにサイロを建てる地面も鑑定したんだよ」

「そかー」


 ふと上を見上げると、ストラスがベランダに出て、俺たちの様子を見つめていた。

 各種族のリーダたちが見てくれていると、安心できる。


「まあ、地面の鑑定の前に、設計図を頭の中でつくらないといけないのだが」


 

 俺は、ヒッポリアスを地面に置いて、サイロの構造を頭に思い描いていった。

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