報酬&行方
領主様に呼ばれた僕たちは、領主様の待っている謁見室に通された。
「私はこの街の領主を任されているエリア・メッチァルと言う。この度は本当に、本当にありがとう。この街を、街人達を守ってくれてありがとう」
そう言って、領主様は頭を下げた。
領主様と言ってもこの国の貴族様だ。そんな人が頭を下げるなどあり得ないに等しい。そう思っている貴族たちが声をあげた。
「領主様! 領主様が頭を下げるなど……」
その人は部下の言葉を遮る形で領主様が話し始めた。
「何を言っている。この者たちがやった事は私にはもちろん、誰にも出来ない事をやってのけたのだぞ。感謝するのは人として当たり前だ。そうだろ?」
「……はい」
「皆様方、申し訳無い。それでだな、この街を救ってくれた君たちに何か謝礼を渡したいのだが、何か欲しいものは無いか?」
「おじさん。だったら俺お金欲し、痛!! ちょっと、フォレス何するんだよ」
「バカ!! バカバカバカ!! 領主様におじさんって何言ってるんだよ!!」
「え? あぁ、ごめんごめん。おじさんごめんね」
「貴様!!!」
俺が頭を叩いて叱ったがリュクスは直さず周りにいた騎士達に剣を向けられた。
「よせ!!」
「し、しかし。領主様をお、おじさんなどと、すぐに処刑にすべきです!!」
「私がよせと言っている」
「……はっ」
「申し訳無い。して、リュクス君はお金だな。100万
「んー、私はフォレスと一緒にいられたら良いし、要らないかな」
「ならほど。では、こちらで自由に決めても構わないか?」
「うん。良いよ」
「うむ。最後にフォレス君。何かあるかい?」
「ぼ、私は魔王と勇者についての遺跡や文献をお願いします」
「……分かった。遺跡はこの近くに無いが遺跡の最寄りの街や村が載ってる本をあげよう。それと、魔王と勇者について書かれている本を見せてあげるよ。悪いが魔王と勇者について書かれている本は貴重なものなのでね持ち出す事は出来ないが良いかな?」
「はい。ありがとうございます」
「よし。クーラ。いるか?」
領主様が虚空に話しかけると何処からともなく現れたクーラと呼ばれたおじさんが現れた。
「今聞いたものを揃えてくれ。後、彼女の分は……」
「かしこまりました」
「最後になるが。リュクス君、カリーナくん、フォレス君。本当にありがとう」
その部屋を出ると先程クーラと呼ばれたおじさんが立っていた。
「皆さん。こちらに謝礼を用意させて頂きました。私について来てください」
その人に付いて行き入った部屋には100万Sと本が2冊。そして、髪留めが3本置いてあった。
「こちらが、リュクス様の100万Sです。そして、こっちがフォレス様が願った本です。右側にある本は持ち出し出来ないものなので、ここで読んでください。メモ程度ならとってもいいですよ」
「分かりました。あのー、それでこれは?」
「これは、カリーナ様への謝礼となります。要らないという事でしたが、これぐらいはと」
「そうでしたか。ありがとうございます。カリーナ、これ、何か……」
カリーナ方に顔を向けると既にカリーナはどれにしようかものすごく悩んでいるようだった。その光景を見て僕は笑みが溢れた。これが、子供の本当の姿なのかなと。
「えー! どれにしようかな!?!? ねぇねぇ、フォレスどれが似合うと思う?」
「うーん。そうだな」
そこにあるのは、白色、黒色、ピンクの髪留め。茶髪のカリーナにどれも似合うと思う。
「えっと、クーラさん。これ三つともってダメですか?」
「三つともですか?」
「はい。どれもカリーナには似合うので3つとも欲しいんですよ」
「!!!」
クーラさんはニコッと笑って頷いた。
「はい。かしこまりました。領主様には私の方から言っておきますので三つ、持っていって大丈夫ですよ」
「ほんとですか! ありがとうございます。良かったね、カリーナ」
「……う、うん」
領主様の館を後にした僕たちは一旦宿屋に帰り、僕とリュクスはとある場所を直すために出掛けた。宿屋に1人残ったカリーナは少し考えていた。
「全部似合うって言ってくれたのは嬉しいんだけど、全部じゃなくてちゃんと選んで欲しかったな」
フォレスが選んだ方法はどっちかと言えば逃げだ。何か一つ選ぶので無く全部を選ぶ、ハズレでは無いが当たりでもない。それに、カリーナは悩んでいた。
「ダメダメ。前向きに考えるの。三つとも似合うんだったらその日その日で変えたら良いじゃん。そうだよ。そうしたら新鮮味もあるし、私を見てても飽きないだろうし。……よし。そうと決まれば早速……」
フォレスたちが向かったのはリュクスとカリーナが戦って作ったクレーターと、フォレスが重力魔法で作った大きな凹みだ。ここを直しに来たのだ。
「はぁ、全く面倒くさいな」
「リュクス。そんな事言ってないで早く終わらせるよ」
「さっきからなに急いでるんだ?」
「いや、何か嫌な予感がするんだよ」
「ふーん。ま、早く終わらせることに異論はないな」
それを直して宿屋に戻るとカリーナの姿は無く、その日、帰ってくる事は無かった。
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