リュクスとカリーナの喧嘩

 その日はいつも通り昼寝を済ませて、おやつの時間にいつも通りの事件は起き、初めての喧嘩が始まった。


 初めの頃は、リュクスは僕のお菓子を奪っていたが、特にリアクションを起こさない僕に飽きて、今はカリーナのお菓子を奪うようになった。

 けれど、今日はカリーナが反撃したらしい。


「それ俺のお菓子だよ!!」

「何よ!? いつも人の物取るくせに、自分のものが取られたら怒るの変でしょ!!」

「何!?」


 2人は食堂の椅子に座ったまま睨み合った。


「喧嘩は辞めな? ほら、僕のお菓子……あっ……全部食べちゃった」

「そ、そんなぁ。リュクス!! 今日という今日は許さない!! 外に来なさい!!」

「はいはい。分かったからそんなにかっかしないで」


 カリーナとリュクスはお菓子そっちの気で、喧嘩をするために外に出て行ってしまった。


「ちょっ、2人とも待ってよ!! 院長も2人を止めてよ」

「あぁ、いいんじゃ無いか。2人は仲が良いからな。喧嘩って言ってもそこまで酷くならないだろ」


 2人が喧嘩の場所として選んだのが、孤児院の目の前だった。


「今日という今日は絶対に許さない!!」

「カリーナ、明日の分の僕のお菓子あげるから、ね? 落ち着こ?」


 どうにかして、二人の喧嘩を止めないといけない。そう思って、慰めようとするが僕の言葉は二人には届いていないらしい。 


「いつもいつも、なんで自分のお菓子だけで満足で気なのよ!!」

「自分の分で満足できるけど、突っかかってくるのが楽しくてね。それに、無防備で置いてあるから取ってくださいって言ってるのかと思ってたよ」

「絶対に許さないんだから!!!」


 もう、2人は止まらない。

 二人の間に立っていたら、カリーナが僕の胸を押して、僕のことを吹き飛ばした。


「うっ! グヘェッ!」


 そして、2人が喧嘩を始めてしまった。

 ただ、僕はそこまで心配はしていなかった。喧嘩と言っても子供と可愛い喧嘩になると思っていたからだ。

 だが、僕が思っていた喧嘩とは程遠い喧嘩が繰り広げられた。


「お前みたいな奴は、私が懲らしめるんだから!!」


 カリーナがグッと脚に力を入れてリュクスに向かって跳んだ。その勢いで繰り出されるただのパンチは唯のパンチの数倍の威力を持ってリュクスの顔面目掛けて振り下ろされた。

 そのパンチがリュクスに当たった瞬間にリュクスの後ろにあった小屋が吹き飛んだ。


「あぁぁ!! 食糧庫がぁぁ!!!」


 食糧庫がカリーナによって吹き飛ばされ、リュクスがどうなったのか。


「以外に痛かったな」


 なんと、あの威力のパンチを片手で受け止めていた。


「もう1発!!」


 さっきよりは威力は低めだが、次は横蹴りでリュクスを攻撃した。脚は腕よりも約3倍以上の筋肉が付いている。そんな脚で蹴りをされたらジャンプの威力を乗せたパンチと同威力の蹴りが繰り出された。


「うわっと」


 リュクスは右手でカリーナの手を掴みながら、カリーナの蹴りを上に跳んで避けた。が、蹴りの威力はそのまま奥にあった畑を地面から抉り取った。


「あぁぁぁぁあ!!! 僕たちの畑がぁぁぁ!!!」

「おいおい、なんの音だ?」

「院長!!!!」

「って、何だこりゃゃゃゃゃ!!!!」


 さっきからする大きな音に遂に院長が出て来た。


「院長!!! これ止めて!!!」

「はぁ!? むりむり!! 俺は戦いなんてやって来てないんだよ!!!」

「えー!!! だったら、あれどうにかしてよ!!!」

「どうにかするのはお前の役目だろ!!! お前、あいつらの仲を取りもってるじゃないか!!!」

「え、院長……」

「俺は中に居るから、お前は頑張ってくれ!!」

「え、院長!!!!!」


 院長はそう言って、孤児院の中に入っていった。


「僕だって戦いなんてやって来た事ないよ。でも、やるしか無いよね」


 院長と話している間に喧嘩は更に勢いを増していた。


「え、えっと、クレーターが1個、2個、3個。どうしよう……」


 もう既に、孤児院の周りにあった綺麗な森や、僕たちの食糧庫に畑が消し去っている。


「2人とも!! もう辞めてよ!!!」


 僕の決死な叫びも2人には聞こえてないのか、喧嘩は続いている。


「あーもう!! やるしか無いよね!!!」


 そして、僕は2人の合間に走り出した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る