青年編 第7話 こくはく
俺は美幸と別れを済ませて、俺が所属するクラス2年E組へと向かっていった。
このクラスはエンドのE組なんて呼ばれることもなく、凡庸なただの2年E組である。
俺は2年E組の教室のスライド式の扉を開け、中へと入っていく。俺が教室へと足を踏み入れると、
「おぉー! アツキじゃねぇか! 久しぶり〜!」
「やぁ! 久しぶりだな! とも!」
俺に話しかけてきたのは、俺のクラスの男子生徒Aの智也(ともや)である。
こいつとは前の人生では高校生活で一緒にいないほうがおかしいと思うくらい、一緒にいた。
こいつはいわば俺の親友だ。
しかし、前の人生では俺はただの学生であったために、長い間智也と一緒にいることで、硬い絆を結んでいったのだ……
だから、今の俺の人生では、仲良くなれないのかな……と思った部分はあったのだが、これは完全に杞憂に終わった。
智也はやっぱりそのままの智也だった。
少し話をしただけで、完全に俺と智也は意気投合した。
まぁ、前の人生からしたら当たり前だよね……
前の人生で波長があってた人物なら今の人生でも少し話して分かり合えば前の人生と同じ関係性にはなれるはず……
俺は智也に挨拶を返して、そのまま席へと座った。俺の席は一番後ろ。学校にそれほど来ることもないからと後ろの席を用意された。
智也の席はというと、俺の前の席だ。
「なぁ! アツキ! 前のドラマ見たぜ!?」
「やめろよ! こんなところでその話をしないでくれよ!」
「いやぁぁー! あれはすごかったな! あれだよ! あれ」
「あれってなんだよ! あれじゃわかんねぇだろ?」
「じゃあ、ちょっくら見ててくれよ!」
「…………何をするのか知らんが、いいぞ!」
「じゃあ、いくぞ!?」
『おぉい! ちょっと待ってくれ! 俺の話を聞いてくれ! 俺はお前がいないとダメなんだ……! お前がいないと、俺の人生は枯れちまう……お前が俺の人生に水をあたえ、光を注ぎ、花を咲かせ、彩りを与えてくれた! だから、俺から離れるな! 頼む! 愛してるから! もどってきてくれ!』
「おいおいおいおい! それって……前の俺の長ゼリフじゃねぇのか?」
「そうだぞ!?」
「そうだぞ!?……じゃねぇよ! なに大きい声で俺の恥ずかしいセリフを言ってんだよ?」
「いやぁ! あれはいいシーンだったね! 感動ものだったよ! 別れを告げられた後のお前のこのセリフ!」
「…………はい、はい、ありがとな」
「なんだよぉ! 連れねぇなぁ! もっと恥ずかしがってくれよ! せっかくからかってんだからさぁ」
「すまんすまん。でも、結構はずいからもうやめてくれよ?」
「っかったよ!」
キンコーンカーンコーン。
朝のホームルームチャイムが校内に鳴り響いた。
ホームルームが終わり、授業へと移る。
授業内容は一限目の数学は三角関数の加法定理。
二限目の物理は熱力学。三限目の化学は無機化学だった。
どの内容も前の人生で習得済みだし、テストも前の人生と全く同じ問題。
だから、俺は毎回テストは全ての教科が満点。
このことが引き起こす問題とは……
俺がモテモテになる!
ということで、俺は女子に好かれすぎて、こまっちゃってます。
頭脳明晰。スポーツ万能。容姿端麗。性格……
表向きは優男。
つまり、モテる……
キンコーンカーンコーン。
午前中の授業が何事もなく終わった。
「なぁ! アツキ! 購買いかね!?」
「あ! とも! すまん……俺またあれだわ……」
「あぁ……あれか……お前も大変だな……」
「まぁな……じゃあいってくるわ……」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
俺が目指す場所は、学園の屋上。
目的の人物はそこにいた。女子生徒No.251くらいの人物。
「俺に用事ってなにかな?」
はぁ……またあのパターンだな……
でも、この子少し可愛いかな……
胸もなかなかあるし、性格も良さそう……
まぁ、ボーダーラインは突破してるってかんじかな……
「あ! すみません……こんなところにお呼び立てしてしまって……」
「いえいえ……別にいいですよ! で、どうされたんですか?」
「あ、はい! あの……突然なんですけど…………わたし……あなたのことが好きです! わ、わたしとお付き合いしてください!」
はい! やっぱり……
こくはくだよね……屋上においての学園イベントの一つね……No.251ってのは君で251人目だからなんだよ?
可愛いんだけどね……俺はモデルで俳優でいろいろやってるからね……
スキャンダルを作りたくないし……
いつも通り済ませるか……
「そうか……君の気持ちを教えてくれてありがとう……でも、君の気持ちに応えられるかがわからない……自身がないんだ……だから、ごめん……」
「…………そうですよね……」
「本当に、すまない……」
「えぇ……いいですよ……ありがとうございます」
「お詫びにだけど……今日偶然持ってたから、これあげるよ!」
「く、クッキーですか?」
「あぁ! マネージャーに前もらってね! 消費期限も切れちゃうから、早く食べてね!」
「……なんか、よくわかりませんけど、美味しくいただきますね!」
「あぁ。それじゃあな!」
「…………あ、はい!」
俺は彼女にクッキーを手渡し、屋上を立ち去った。
1人残された女子生徒No.251はというと……
「あつきさのクッキー! 嬉しい……早く食べないとね……アムッ! なにこれ! めちゃくちゃ美味しい!」
女子生徒No.251はもらったクッキーをそれは美味しそうに、頬張った……頬張ってしまった……
「なんだか……急に体が熱くなってきた……あつきさま! わたし、あつきさまが……」
こうして、No.251はアツキの【魅了】の力によって、アツキの嫁ホルダーに加えることになった。
クッキーに入っていたもの……それは、師匠によって調整された、砂糖よりも甘くて、とても美味しい蜂蜜のような体液である。
ここで、体液を入れてるから食品衛生上良くないから! なんて言わないでね。
俺の体液ははちみつより上質なんだからね!
No.251ということは…………
前にもこうなった人物が……
篤樹の嫁ホルダーにはそれはそれはもう、数え切れ……るけど沢山の人数がその名を連ねていた……
中高合わせて、〇〇〇人。
選定基準もしっかりとあるが……そこは極秘ね。
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