第48話 泣かせちゃった
あのブローチは、ブルクルタ国立剣術学校の卒業試合で準優勝でアイネイアス姫特別賞として受け取ったものだった。特別な箱に入ったそれは、入れ物が豪華過ぎて中身があるとまで思わなかった。
アーネスに変身した俺がガーグルに勝ち切れずに終わった試合だった。どちらも優勝者では無かったが、なぜ、俺に——
色々が信じられない俺は、アーネスに問いかけた。
「渡す相手を間違えたんだな……」
そう俺が小さく言葉を吐くと、アーネスが俺の方をつぶさに見る。アーネスの顔が悲しい顔になった。俺も申し訳なくて苦しくなる。
手違いでガーグルに渡すはずだったブローチを俺に渡してしまったのか。
「そんな俺にちゃんと話してくれれば、ガーグルに渡せたのにな。ダメだろ、変なプライドでやせ我慢なんかしたら。明日にでも結婚は無効にしてもらえないか話してみよう……」
慰めるようにアーネスに話すと、アーネスが急に声を大きくして、俺の方に身体を向けた。
「ま、間違えてない! 私はサイに渡したんだ! 」
「アーネス、そんなに嫁に行くのが嫌だったのか……(俺に預けておくなんて)」
そこまでブラコンを拗らせていたと思って同情しかけたら、アーネスがぽろぽろ涙をこぼして泣き始めた。
「サイは私のことが嫌いか? 」
「そんなわけないだろ」
——もう、一生分の恋はしたんだ。遠くからアーネスの幸せを祈りながら生きていけば俺は十分……
そう思った時には、アーネスが俺を掴み上げてぶん投げた。俺は軽く空を飛んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます