第42話 王の間に竜王
魔星の谷から王城まではあっという間だった。竜王の影が王城に落ちるのを俺たちは眺めた。
旋回する黒い影がやがてゆっくりと降下して、王の間に通じる広いテラスへと舞い降りると、城内の者たちの
「竜王、ほら見たことか……」と、俺は呆れた。竜王はそれを聞いて鼻を鳴らす。
身の軽いアーネスとクリクが、竜王の背中から王城のテラスに飛び降りた。俺は、途中で拾ったググランデを抱えて、ゆっくりと竜王の背中から尾を伝って降りた。やっぱり、俺は小間使い扱いか。
それにしてもアーネスも気が太いのか、竜王が眼下にググランデを率いる一行を見つけると、アーネスはググランデだけを先に連れて行くと言い出した。ググランデの扱いに悩んでいた一行は、喜んでいた。
竜王の背にググランデを乗せると俺は縄を解いてやった。仮にも第二王子だ。こいつも可哀想なヤツだと思った。魔力が王族のそれではない。いつか見た時と魔力が違う。あれは紛い物だったのだと分かった。貴族と平民の違いがあるが、持って生まれた魔力に振り回されているところでは俺と似たようなもんなんだと同情する。
突然の竜王の姿に、一度はテラスまで出ていた家臣たちが竜王が降りてきた事で王の間に逃げ込んだ。そして、竜王の背中からアーネスの姿を見るなり、その凛々しい颯爽とした姿に圧倒された。クリクがその後について行く。
——まるで女神だ!!
俺は目に眩し過ぎるアーネスの背中を見送りつつ、竜王の背中に酔ったググランデを支えながら王の間に入った。
ガーグルが先に居た。早馬を飛ばして先に着いていたのか……流石というか、カッコいいなそのポジション、いや実際カッコいいんだけど!! 俺が女なら抱かれたいわ!! と感心する。
そうやって俺は俺の為のメンタルイメージトレーニングを済ます。
王の間の中央には、どうやら大臣ゲオルドと第二王妃ザリアデラとマールクが居るじゃないか……なんかやってた?
俺はそこにググランデを連れて行った。ここまで来たら、ガーグルが何とかしてくれるだろう。
「アイネイアス、ただいま戻りました」
空気を律するアーネスの透き通る声が響く。アーネスは玉座の国王に向かって膝を立て頭を下げた。ググランデも続けた。国王は頷いた。
竜王と俺たちの出現で興奮状態の王の間に、悠然と玉座に座る国王が居る。その貫禄たるや「竜王の牙を取ってきたら時期王」とか言うだけある。アーネスとマドリアスの父親って感じするよな。色んな意味で怖い。
平民の俺はこの場に相応しくない。竜王の側にでも逃げようと思ったら、竜王の方がテラスからの間口を壊してドシドシと王の間に入ってきた。巨大なホールが狭くなる。俺の逃げ場無くなったじゃないか!!
「お前がこの国の国王か? 」
そして、やっぱり突然始まるのか、これ。
竜王、お前の中身にサイホーン入ってないよな? 似た者同士だな。
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