第18話 卒業剣術大会の思い出
卒業剣術大会。奨学金を職人枠で受けている俺は、二年で卒業しないとアウトだ。地獄の二年間がもう直ぐ終わる。
この二年間は、体力バカのアーネスにボロボロになるまで自主鍛錬に付き合わされ、小間使いさせられ、トラブルに巻き込まれ、疲労で何度も座学単位を落としそうになり……総合成績ギリギリになっている。
それなのに、アーネスは揺るぎないトップを飾っている。そしていつも静かな顔をしている……理不尽だ。
それももう直ぐ終わる!部屋に戻るなり気絶する様に眠りにつき、アーネスに叩き起こされる日々も終わる!!
寮室の窓を開け、鮮やかな朝日に俺は腕を広げて大きく息を吸い込む!
剣術は超余裕! 毎日アーネスに
「あ——っ!今日で終わる〜〜!! 」
伸びをして首や肩を回していると、同室のアーネスが話しかけてきた。
「サイ、ご機嫌なところ悪いが、予選は私の振りをして私の分もやっておいてくれないか? 」
「はぁ?? 」
「用事があるんだ」
「相変わらず、いつも突然だな」
俺は対象者の魔力を模して、幻影魔法を使う。代々受け継がれている能力で、アーネスだけには同室早々にバレてしまった。それ以来、俺が受けてない座学の授業まで出席代行させられる(質問に答えないで偉そうに座ってノートを取るぐらいだが)……それで本人が検定試験パーフェクトとか本当に迷惑。
それでも卒業最後のワガママぐらい聞いてやるか……と、親切心を出したのが失敗だった。
「まぁ、予選だけなら何とかな」
いつものこと過ぎて、了解した。これが運の尽きともつゆ知らず。
剣術学校の競技場は、いつもと違う興奮に包まれていた。卒業予定者の家族や、近くの町村からの観戦者、来賓の領主や貴族、商人たち……今年は、この国、ブルクルタ王国第一王子が特別ゲストとなって、とんだ騒ぎになっている。
この第一王子マドリアスっていうのが超美男子って噂があって、食堂のおばちゃん達が騒いでいた。
まぁ、俺は、アーネスって言う同室人が多分これ以上のない美人なもんだから、美的感覚が麻痺して壊れてしまった。だから、ちっとも興味がない。……アーネスと比べてみたいものだけど。
調べれば、予選段階では俺とアーネスの時間が被らないのが分かった。午前中は、余裕余裕!
俺は、予選をアーネスの分も楽々クリアして午後からの本戦に備えた。
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