第95話

「はぁはぁ……クソ……クソ……」


 オカの隣を走るダルマはフィブとパークが犠牲になった事を悔しがる声が聞こえて来る。


(二人共、本当に死んじゃったのか……?)


 実際に死んだ所を見ていないオカは、まだ実感が湧かないのか、それとも現実を見たくないのか……



「これからどうするんだ?!」


 前を走っているカンジがヒューズに質問する。


「……依代を見つけるしか有りません」

「それは、分かってんだよ! どこにあるかって話だ!」


 次々と殺されていくのを見て一同に焦りが生まれてくる。


「あれ、扉じゃないですか!?」


 ダルマが指を差す方向に扉を見つける。


(ダルマ……)


 オカが心配そうに見ていると、ダルマがオカに向かって話し掛ける。


「いつまでも、クヨクヨしてちゃダメだよな! 皆んなの為に俺は、何としてでも倒すぜ?」


 ダルマの表情には決意の様なものが見て取れた。


「とりあえず、あそこ入りましょう!」


 オカ達は扉を開けて部屋の中に入る。すると、部屋には既に誰かが居た……


「あ……オカ……」


 そこには、ハルカが居たのである。


「お、お前……」

「オカ、騙しててゴメン……」


 そこには、申し訳無さそうにしているハルカの姿が見える。


「お前のせいで、プルさんもパークさんも、フィブだって!!」


 オカはハルカに怒りをぶつける。


「ごめん」

「謝って欲しいわけじゃない!!」

「……」


 そのやり取りを見たヒューズがオカを落ち着かせる為に、肩を一度叩く。


「オカ君……」


 オカの表情と、怒りを見てヒューズの方は少し落ち着いたらしい。


「お前が、オカ君を騙した理由はアケミ達の仲間だったから分かるが、何故この場にいる?」


 ヒューズが、ハルカに問い掛ける。


「俺達を殺す為か?」

「ち、違う!」

「なら、何でここにいる?」

「て、手伝おうと思って……」

「手伝うとは何を?」


 ヒューズを始め、全員が厳しい目付きでハルカを睨み付ける。


「ママと兄を倒すための……」

「理由は?」

「オカ達の様子を見て、やっぱり間違っているって気付いたの!」


 どうやら、ハルカは次々と人が殺される所を見て、気持ちが変わった様だ。


「また、俺達を裏切る気か……?」

「そ、そんな事しない!!」

「信じられるか!」

「オカ……」


 ハルカはオカに否定されて悲しそうな表情を浮かべるが、今はそんな状況ではない事を思い出し話し始める。


「私が本気かどうかはこれを見て!」


 すると、ハルカはあるものを取り出す。


「これは……」


 そのあるものとは、淡い光を放っている和服と、人間の指の剥製であった。


「もしかして……?」

「うん。ママと兄の依代だよ!」


 ハルカが持ってきた、あるものとはアケミとソラタの依代の様だ。


「ほ、本物なのか?」


 カンジとメグは一度も依代を見た事が無いため、判断が付かない様だがオカ達は一度見た事があった為、それが本物だと確信する。


「えぇ、これは本物の様です……」

「な、ならこれでアイツらを倒せるんだよな!?」


 生き残れる希望が湧いたのかカンジとメグは表情を緩める。


「いえ、これだけじゃ倒せません……」


 しかし、直ぐにヒューズが否定した事により、二人の表情が再び変化してしまった。


「ミズキちゃんの仇、取れないの……?」


 メグは依代に視線を向けながら呟く。


「あぁ、依代を壊す為には道具が必要なんだ」

「なら、早くその道具を!」

「それが、ハルタの持っていたハサミなんです……」


 それを聞いた、カンジは座り込む。


「はは、無理だろ。あのバケモンからハサミを奪うなんて……」


(そう……問題はヒューズさんが言っていた依代を壊す為の道具だ……)


「ハルカ、お前道具の方は持ってないのか?」


 オカに話し掛けられて嬉しそうな表情を一瞬浮かべたハルカだったが、直ぐに表情を変えて答える。


「うん、道具の方は兄が持っていて無理だった。それと、同じく都市伝説的な存在の私だと依代は壊せないの……」


 どうやら、ハルカ自身でアケミやソラタの依代を破壊する事は出来ない様だ。


「なら、どうやって道具を奪うかだな……」

「そうですね」

「依代は手に入ったので、やはり前みたいに一度外に出た方がいいのでは?」


 ヒューズ、ダルマ、オカは直ぐに道具をどうやって奪うか考え始めるが、カンジは違った様だ。


「お、おい! 本気であの化け物から奪う気か?!」

「えぇ。それしか依代を壊す事が出来ませんから」

「そ、そうかもしれないけど無理だろ!?」

「それでも……やるんです……」


 カンジとしては、直ぐにでも逃げたい状況だが、オカ達は違う。


「俺達は、この都市伝説を止めたいんです。それがパラノーマルの仕事であり死んでいったプルさん、パーク、フィブちゃんに対しての手向けになるので」


 ヒューズの言葉にオカとダルマも頷く。


「私知っているよ! そういうのは皆んなで協力した方がいいんだよ?」


 どうやら、メグも協力するらしい。


「……ッチ! 分かったよ!」


 皆が、カンジに視線を向けると諦めた様に舌打ちをする。


「どっちにしろ、アイツら倒さないとココから出られないんだし、俺も協力するよ!」


 こうして、一同は依代を手に入れ、マサオさん家を出る事にした……


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