第71話

「ふぁー、なんかハルカが出て来た所為か寝不足だな……」


 階段を降りてリビングに着くとオカはテレビをつけた。


「速報になります。昨夜またも犠牲者が出ました。前回と同じ手口で殺されているのを近所の方が見つけた様です」


(な!?)


「そして、今回は同時に二人の犠牲者が出ており、一人は腹に石を詰められ、もう一人は指を全て切断されていたとの事です」


(ハルカの言っていた通り、始まったのか……?)


「これで、合計四人の犠牲者が出ましたがいっこうに犯人の手掛かりは見つけられて無い模様です。引き続き何か有りましたらお伝えしたいと思います」


 そう言って、ニュースキャスターは別のニュースを読み上げている。


「おいおい……これを俺に止めろって言うのかよ……」


 一週間内に四人も犠牲者が出た事により、犯行現場は完全封鎖される様だ。


「封鎖したって、相手が都市伝説相手だと何の意味も無さそうだな……」


 オカはニュースで一通り事件の内容を確認してから、会社に向かう為に家を出た。


(今日のテレビニュースはずっとこの事件の事ばかり流れそうだな)


 いつもの道のりを少し早歩きで移動しパラノーマルに急いだ。




「おはようございます! 皆さんニュースは見ましたか?!」 


 オカは少し息を切らせながら事務所のドアを開いた。すると、前回同様既に全員が集まっていた様だ。


「オカ君、おはよう。えぇ今もニュースでやっているわよ」


 プルはテレビ画面を見ながらオカに挨拶をする。


「一体、誰がこんな酷い事するんだよ!」


 パークの声が室内に響き渡る……


「あ、あの。その事で皆さんにお伝えしたい事があって……」


 ハルカの事や、今回の事件の犯人についてオカは話そうと、皆を集める。


「何かあったのかい?」


 ヒューズがオカに質問を投げかける。


「じ、実は昨日とんでもない夢を見まして……」


 先程から歯切れの悪いオカを見て何か有るとパラノーマルの全員が思った様だ。


「夢かい?」

「えぇ。その夢にある人が出てきたんですよ」


 夢の話なんてして信じて貰えるか不安に思いながら、ポツリポツリと語り始める。


「ある人って誰……?」

「それが……ハルカです……」

「「「「「ハルカ?」」」」」


 最初は全員ピンと来なかった様だ。だが次第に気付き始める者も居た。

 そして最初に気付いたのはやはりこの男であった……


「オカ君、ハルカってマサオさんのかい?」

「はい」


(流石、ヒューズさんだな)


「どういう事か説明してくれるかい?」


 それからオカは昨日の夢の出来事を全て話した。


「って感じなんですよね……」

「そのハルカちゃんとは今でも話せるのかしら?」

「いえ、今日起きて話しかけましたが反応は有りませんでした」


(夢に出て来たなんて普通信じないよな……)


 オカの言う通り、普通の人間だったらオカの言った言葉を信じる者なんて居ない。


 しかしパラノーマルのメンバーは違った。


「オカ君の話を俺は信じるよ」

「あぁ! こんな嘘をオカがわざわざ吐く意味が無いしな!」

「ふふ。都市伝説についてはオカ君専門家の様なもんよね」


 ヒューズ、パーク、プルが信じてくれた事が嬉しかったのか、オカは涙腺が緩むのを感じた。


「俺も信じるぞ!」

「私も……都市伝説と言ったらオカだし……」


(ダルマ……フィブ……)


「皆んな、ありがとうございます」


 照れ隠しの為か、オカは全員に向かって頭を下げて、暫く顔を上げられないでいた。


「そしたら、より詳しい事を教えてくれるかい?」

「は、はい!」

「まず、今俺達が追っている二つの事件の犯人がアケミとソラタと言う事でいいかい?」

「ハルカがそう言っていましたね」

「そうなると、マサオさんの都市伝説などを垣間見ると、俺が追っている出会い系の犯人はアケミで、パーク達が追っているエブダン動画の方がソラタになるのかな?」


 ヒューズの考察に全員が頷く。


「そして、二人を止める為にはマサオさんと同じく依代を壊す必要があると?」


 オカはコクリと頷い肯定の意味を示す。


「なら二人の依代を壊す為には、二人が出現する時に俺らもその場に居る必要があるって事だね」

「す、凄い……まさにハルカが説明してくれ事と一緒です。なんで分かったんですか?」

「はは、ただ適当に言っただけだよ」


 オカは夢の説明時にそこまで話して居なかったにも関わらずヒューズはオカの話を聞いただけで、ここまでの答えに辿り着いた様だ。


「や、やっぱりすげーよな!?」


 またしてもダルマがオカとフィブにしか聴こえないくらいの大きさで呟く。


「あぁ……ダルマの言う通りすげぇーや」

「な? そうだろ?!」

「ダルマ……私と、ヒューズどっちが凄い……?」


 またしても、何に張り合っているのか、フィブがダルマに向かって質問する。


「……」

「ねぇ、どっち……?」


 フィブの言葉を完全に無視する事に決めたダルマはヒューズに顔を向ける。


「それじゃ、とりあえず今日は二班共出会い系と動画サイトから、アケミとソラタを探す感じになるのかしら?」


 プルの質問に、全員が頷く。


「ふふ、オカ君のお陰で犯人は分かったから、後は依代を壊すだけね」


 こうして、パラノーマルの面々は行動を開始する。

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