第59話

「ふぅ……」


 オカは一通のメールを全て読み終わり、軽いため息を、吐く。


(なんだ、この情報は……?)


 オカはアドレスなどを見ると文字化けしていて、アドレスが分からない状態になっていた。


(ますます、意味が分からない……)


 オカはメールと睨めっこしていると、他の者達が、いきなり黙り込んだオカの事が気になるのか、チラチラ様子を見ている。

 しかし、集中し出したオカは皆んなの視線に一切気付いていない様だ。


(1個目の都市伝説と言い2個目と言い引っ掛かる……)


 オカなりに、何かを感じ取っているのか考察している様だ。


(まず1個目の殺し方だが指を切断して大事そうにしまう部分が引っ掛かるし、一番引っ掛かるのは2個目の方だ)


 オカは一度お茶で喉を潤す。


(2個目の出会い系サイトでの登録名がアケミ……って、マサオさんの妻と一致しているんだよな……)


 オカがパソコンと睨めっこしていると、心配になってヒューズが話しかけて来た。


「オカ君、どこか分からない事でもあるのかい?」

「……」


 どうやら、相当集中しているらしくヒューズの声が耳に入って来て無い様だ。

 それを見たダルマは勢い良く立ち上がると、オカの後ろまで来てオカの頭を軽く叩く。


「おい、ヒューズさんが話し掛けているのに、その態度はなんだ」

「い、いやいいんだよ。とても集中している様だね」


 ダルマに頭を叩かれて、やっと現実世界に戻ってきたオカだった。


「え? あぁすみません」

「あはは、それで何をそんなに真剣に読んでいたんだい?」


 ヒューズは自分の机から椅子を引っ張って来てオカの隣に座り込む。

 それを機会に他の全員もオカの周囲に集まって来た。


「オカ君、何か見つけたのかしら?」

「あ、はい。ただ、この内容も悪戯の可能性が高いですが、なんか気になっちゃって」


 そう言ってオカはメールの本文を人数分印刷して全員に渡す。


「とりあえず、これを一度読んで貰えませんか?」


 オカから渡された紙に全員が目を通し始めた。


(他の人は、マサオさんとの関係性に気付くかな?)


 五分程経過して全員が紙から目線外し顔を上げる。


「確かに、興味深いメールではあるわね」

「えぇ。根拠や証拠などは特に書かれては居ませんが、それはこの仕事をやっている以上しょうがありませんもんね」

「おう、オカ! この内容のどこが気になったんだ?」


 パークの言葉に全員の視線が集まる。


「実は……マサオさんと関係性がありそうで……」

「ど、どういう事だよ?」

「アケミ……」


 フィブは紙を見ながら呟く。


「そう。今フィブが言ったように、2個目の都市伝説で出会い系サイトの名前がアケミとありまして」

「そうか。マサオさんの奥さんもアケミだったね」

「気付かなかったわ……」

「じゃ、じゃ1個目も何か関係あるのか?」


 ダルマを始め、他の者達も1個目については誰も気付かない様だ。


「1個目の方は、ただのこじつけになってしまうかもしれません」

「どういう事だよ?」

「1個目はソラタと関係がありそうで……」

「マサオさんの息子かい?」

「はい。ソラタの依代って覚えてますか?」

「確か……アケミの指で作った剥製よね?」

「はい。それとマサオさんの都市伝説にもありましたけど、ソラタはアケミの指を切り取っていたとありました。そして1個目の方も……」

「なるほど。確かにオカ君の話も分かるね」


(かなりごしつけ感はあるが、何故か関係性があると思ってしまうな……)


「ヒュ、ヒューズさん。今二つの都市伝説を調べましたが何もヒットしませんでした」

「そうか……」

「なら、やっぱりタダの悪戯だったんじゃねぇーの?」

「そうね……。都市伝説と言うのは大抵人が作ったものだしね」


(なんだ、やっぱり唯の悪戯だったのか?)


 オカは都市伝説については結構自信があったのか、悪戯の線が濃厚だと分かり少し落ち込んだ様だ。


「でも、オカ君素晴らしいわよ。そういう怪しいと思うものはどんどん、今みたいに他の人の意見を聞いてみるべきね」

「そうだぞ! オカは覚えも早いからその調子でガンガン頼むな!」

「はい……」


(恥ずかしいーー! プルさんとパークさんに気を遣わせてしまった!)


 オカは顔を赤くしながら、メール確認の作業に戻った。


「オカ、顔真っ赤……」

「フィ、フィブそれは皆んなに内緒な?」


 オカのお願いにコクリと一度頷き、フィブもメール確認の作業に戻った。

 だが一人だけ新妙な顔をして先程印刷された紙を見ている者が居た。


「ヒュ、ヒューズさん、どうかしたんですか?」

「いや、大丈夫だよ。少し僕も引っ掛かったんだが、ネットで検索して出てこなかったなら誰かの自作だね」


 笑顔に表情を切り替えてヒューズも自分の席に戻った。


「やっぱり、カッケェーよな」


 ダルマはオカとフィブにだけ聞こえる声で呟く。


「ん? ヒューズさんがか?」

「それ以外誰がいるんだよ!」


 コイツ、本気か?! と言わんばかりの顔でオカを見る。


「い、いや。そうだなヒューズさんはカッコいいよな」


(ダルマの目がキラキラ光っている……)


「ダルマ……」

「ん?」

「私とヒューズどっちがカッコいい……?」


 そう言うとフィブは徐に伊達メガネを掛けて出来る風の女を一人で演じ始めた。


「……さて仕事するか」

「……だな」


 オカとダルマはフィブからパソコンへと目線を移し仕事を再開した。

 だが、フィブは自分に酔っているのか頻繁に眼鏡を人差し指で、上げる仕草を繰り返していた……

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