風の谷のナウマン象
真山砂糖
第0話 物語世界の設定の説明
ようこそ、この物語へ。
まずはこの物語の世界がどのようなものなのかを説明します。基本的におちゃらけな物語です。
ありふれた感じの、剣と魔法の世界が舞台になります。地球に似た星に人間が暮らしています。この世界で人々は村や町や都市を城壁で囲い、その中で生活しています。城壁の外にはモンスターが生息しているからです。なので、人々はモンスターに対抗すべく剣技や魔法を身に付けています。
それと、剣と魔法の世界には不釣り合いかもしれませんが、科学がある程度発達しています。どのくらいのレベルかって? 生物のDNAを研究に用いるくらいに発展しています。
しかし人々は、鉄筋コンクリート造りの建物ではなく、中世ヨーロッパをイメージするようなレンガ造りの建物に住んでいます。飛行機はもちろん自動車とかもありません。徒歩や馬で移動します。電話もテレビもありません。高度な商業が発展しているわけでもありません。高度な医療器具を必要とする医学が発達しているわけでもありません。生物という限定された分野に関する科学の発達を除けば、別段、変わったところはありません。一般的な剣と魔法の世界です。
この物語はそんな世界の、ある大陸で進みます。大陸の東には、最も大きな国であるジャポニカン王国が位置しています。西の方には、ジャポニカン王国を盟主と仰ぐ四つの王国と自治権を持つひとつの村落があります。四つの王国とは、虹の都王国、水の森王国、土の里王国、火の丘王国です。虹の都王国を除く三つの王国に囲まれた渓谷に、風の谷と呼ばれる村落共同体があります。
風の谷では代々一人の人物が谷を代表する長として他国と交渉を行ってきました。この村落は渓谷の中に位置しており、比較的産業も発展しておらず、特産物もなく、他国との交易や交流もほとんどないということが何百年も続いてきました。こうした要因のために、風の谷の人々は、未開の地域の人間として他国から見下されながらも、慎ましやかに生きてきました。谷に悲劇が訪れるまでは。
この物語には世界を支配しようと目論む大魔王は登場しません。この物語において、世界を支配しようと考えているのは人間です。世界征服を企むのは、ナウマン教という宗教集団です。
さて、以上のような状況、環境下にある世界で、一風変わった勇者一行が世界を救うための冒険に旅立ちます。この勇者一行がこの物語の表の主人公たちです。かなりふざけた連中で構成されたパーティーです。臆病で人見知りで小心者の勇者、心が汚れているから回復魔法を使えない粗野で下品で筋肉バカな僧侶、魔法を使えないから手品を得意とする汚れの魔法使い、そして、ちょんまげに和服姿で肩から背中にかけてアルパカの刺青をしている遊び人風の変な男、という四人組です。このおかしな勇者一行が世界征服を企むナウマン教団を滅ぼすために旅立ち、滑稽な冒険を繰り広げます。
現在の私たちの目線で物語内の価値観を考えて見てもらえれば、というか読んでもらえればと思います。ちなみに、モンスターには言葉を話すものもいます。
では、始まり始まり。
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