第59話 SIRモデルの魔改造(5月6日 数式を訂正)
ランダムPCRサンプリングや抗体検査で、市中感染率を推定した患者数と通常の疑い例を検査して得られた確定患者数には大きな乖離がある。
もし、市中感染率から推定された患者数を元にSIRモデルを適用すると、感染爆発が起こっているはずであるが、国内では実際には起こっていない。
疫学的に正しいかどうかは別にして、現象に合うようなモデルを作ってみることにする。
市中感染率をm(例えば3%)とする。感染者は全人口の3%と仮定する。
この感染者のうち、感染を広げる患者の割合をp1とする。また1人にしか感染を広げない患者の割合をp2とする。
S(t): 感染の可能性がある人口 総人口Nで規格化
I(t): 感染者の数 総人口Nで規格化
β1: 大きい感染率 γx1: 除去率 発症して感染を広げ2週間程度で発見されて隔離
β2: 小さい感染率 γx2: 除去率 無症状で1人程度しか感染させずに発見されないで3週間で回復
tcはシミュレーション開始時点から感染対策を強化するまでの時間
c(t)は対策による削減率 c(tc)の時点で感染率が小さくなる。
S(t)/dt = -p1 * (1-c(t)) * β1*I(t) - p2 * (1-c(t)) * β2 * I(t) )
I(t)/dt = p1 * ( (1-c(t)) * β1*I(t) - γx1 * I(t)) + p2 * ( (1-c(t)) * β2 * I(t ) - γx2 * I(t) )
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訂正箇所 I(t) → I(t)/dt
( 1-c(t) ) は 全体ではなく β1 と β2 に掛かる
見易いようにスペースを入れた
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初期値
I(0)=m
S(0)=1-m
魔改造したSIRモデルを数値計算で無理やり解くと、感染者は増えるが、適当に感染対策をすると感染爆発を起こさない解が得られる。
γx1=1/14=0.071 β1=2.5*0.071=0.18 R0=2.5
γx2=1/21=0.048 β2=1.0*0.048=0.048 R0=1.0
程度ならば、感染制御ができるが、β2/γx2が1より大きくなると暴走する。
このモデルでは、β1の患者はすべて発見されることにしてあるが、検査による患者の発見が少ないと暴走する可能性が大きくなる。
日本の場合、マスク、手洗い、生活習慣等で β2/γx2≒1.0になっていたので、運良く感染爆発を起こしていないのではないかと推測される。
このモデルが正しいかどうかわからないが、クラスタ対策班のクラスタ潰しが有効だった理由を説明できるし、市中感染率から推測される患者数と、検査によって発見された感染者の数の乖離もある程度説明がつく。
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