#29
ざざあっ―――
「特務司令官! 『アイランド』が目視できる地点まで到着しました!」
「わかったわ。総員配置について! 歩兵部隊は前衛として待機、4人はフェザーズに搭乗して起動、博士は『
「「「「「「了解!」」」」」」
「GNNクルーは最後尾に配置、そろそろ撮影を始めて!」
「解説付きで撮り続けるっす!」
甲板から見える人工島『アイランド』の海岸……いや、鉄骨とかで出来た崖? そこにフェザーズが集結していた。こちらに『
「『
「おらよっと」
ぶおんっ
私が伝えた『コマンド群』や効率化アルゴリズムを更に応用して作り上げた、フェザーズ制御を担う『結晶体』を無効化する装置。ミーアさんが専門とする組成媒体を強化することで精神感応波を放射するから、原理は私の『広域無限同調』に近い。つまりは私も生身で同じことができるのだが、他の人が場所を問わず使えないと意味がないし、装置ならば指向性を持たせて集中放射できるから便利なのである。私のは近場周辺をって感じだからねえ。
すんっ―――
「敵フェザーズ、完全沈黙!」
「ブラフじゃないわね? 騙されるのはもう嫌だからね?」
『誰のことですかー』
「御子神さん以外に誰がいるのかしら?」
『ホントだよな』
「カリブ海での実戦データと照合、一致しています!」
『あ、数機倒れた』
『ハッチも次々と開いているね』
人型搭乗兵器フェザーズは、その機体だけでは立ってもいられない。人間が気を失えば倒れるのと同じである。それだけ、『結晶体』を通した精神感応制御は重要なのである。
「よし、歩兵部隊突入! 第三小隊は敵フェザーズや歩兵戦力を無視して、GNN中継ネットワーク設備を優先探索、残りは順次交戦!」
軍艦から多くの兵士が『アイランド』に乗り込む。敵主力のフェザーズが無効化されているから、基本はヒューム側兵士の捕縛ということになるのだけれども、相手だって通常の銃を持っていても不思議ではない。死人が少ないことを祈るのみである。
「……! GNNの中継ネットワークにつながったっす! ヒューム支配圏だけでなく、AHC管轄圏のネットワークにも!」
「その設備を使って、キース東京支局長を呼び出せる?」
「GNN内部用の通信回線も兼ねてるっすからね、すぐに!」
―――ピッ
『武藤くんかね!? 今、どこに!?』
「キース支局長、いえ、GNN暫定総本部長、森坂です」
『森坂少佐! 今までどうしていたのかね?』
「現在、ヒューム本拠地『アイランド』に侵攻中です。この通信も、本拠地にあったGNN中継ネットワーク設備を奪取して行っています」
『……! そうか、ヒューム支配圏では、分断されたGNN報道網が主力PRメディアだったな……』
「今から、こちらの様子を中継します。戦闘現場は極力避けますが、ヒューム上層部の確保の様子を、全世界に中継してほしいのです。それが、侵攻時にTVメディアを使ったヒューム側への大きな打撃になりますので」
『……わかった。特別編成番組としてすぐに手配しよう。ヒューム側の支局も含めてな』
「時間は?」
『1時間もかからないだろう。準備が済み次第、連絡する』
「わかりました。我々も敵歩兵部隊の鎮圧にそれほど時間がかからない見込みです。退路を断って少しずつ追い詰めますので」
―――プツッ
『じゃあ、俺たちもしばらく待機?』
「ええ。
『私は行けますよー!』
「……御子神さん?」
『はーい、おとなしくしてまーす』
まあ、慌てる必要はないはずだ。先ほど森坂さんがキースさんに伝えていたように、中継設備奪取に加え、ヒューム上層部が逃げ出す手段を潰すことを優先して動いているからだ。ヘリとか。たとえこちらの陸戦部隊にスパイが紛れていようとも、しばらくは味方のふりをするしかない。というか、最後までこちらの戦力として動き続ける可能性さえある。
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