#26

 という感じで、とりあえず5曲分ほどフェザーズ全機に歌って踊ってもらったよ! あ、歌ってはいないか、歌は私のスマホに入ってたやつだからね!


「……まあ、なんというか、だな」

「まだちょっと、信じられないけど……」

「そうだねえ……」

「はうう……」

「……(白目)」


 うん、みんな感動に打ち震えてるね! なにしろ、


「やっぱり、私プロデュースの『ハルト』は完璧ね! フェザーズを使ってもVTuberとしてやっていけそうだよ!」

「VTuberでもなんでもないじゃねえかあああああああ!」

「えー、そう? じゃあ、シミュレータで踊ってみる?」

「いらん」

「ぶー」


 おかしいなあ、なんだかみんな、疲れた顔をしてるよ?


『カスミ、みんなの気持ちを察してあげなよ。あまりのオチに打ちひしがれてるんだから』

「わかってるわよー。ぶーぶー」

「……ふむ、すると、今の会話は壮大な『一人芝居』みたいなものか」

「かふっ」

「図星のようだな。いやしかし、それでもすごいな、このAIは!」

「でしょでしょ! いやもう、私の理想を詰め込んじゃったよー!」

「すぐに復活しやがった。どう見ても黒歴史の暴露なのに」

「成瀬くん、フェザーズのコックピットに乗る? 私の『広域無限同調』で逆立ちさせてあげるから、乗ってるだけでいいんだよ?」

「乗らねえよ!」


 もー、ノリが悪いなあ。ぶーぶーぶー。


 ちなみに、今会話している『ハルト』は、通信回線を一時接続して、空母に設置されたメインコンピュータにダウンロードして動かしているものである。さすが軍用研究設備、コンピュータシステムも最高性能だね!


「はあ……。うん、まあ、なるほどな。確かにウチの婆ちゃん、ノリが良かったわ」

「あ、やっぱり?」

「いや、それでも相性ってものがあるだろ? いくら思考パターンが残留思念のように影響したところで、全く違う性格になるわけでもないだろうし」

「ですかねー。たぶん、最初から『同調率』が高かったんでしょうねえ」

「だなあ。あ、婆ちゃんの資料を見たんだろ? 結局『結晶体』ってどうやって作ったんだ?」

「それはですねー、ミーアさんの専門でもある基礎的な精神感応の性質をもつ鉱石をいくつか融合して、そんでもって、所定の材料を混ぜ合わせた溶解液に入れて、それから更に別の組成による感応端子を……」

「ふむふむ」


 いやあ、こういう話を生身の人とすることになるとはねえ。あー、VTuberやバスケ選手もいいけど、研究者を目指してもいいかなあ。ヒュームさんの影響を受けてってのがアレだけど。


「御子神が別世界の人間になってる……喋り方は同じなのに」

『僕と会話する時はいつもあんな感じだよ。気楽に、直感的に、論理的に』

「わけわかめ」

「僕も学んでみようかな。ちょっと面白そうだ」

「俺はハルトの『外の人』に興味あるぜ! アバターとAIな!」

「それって、成瀬くんが人気者になりたいだけじゃないのかな?」

「田町、いつになく厳しいな? 御子神のせいか?」

「んー、そうかも」

「マジかよ」


 あれ、みこちんと成瀬くんの様子が変だ。倦怠期?


真那まなぁ……私、どうすればいいっすか?」

輝夜かぐやは感動したんじゃないの?」

「それは、みんなの友情と愛情にっす! こんな壮大かつ愉快なオチ、どうやって報道すればいいのか……!」

「あー、そうねー、確かにねー」

『まずは、僕がカスミ作のAIってところから始めればいいと思いますよ?』

「いや、女子高生がこっそりVTuberしてたのをごまかすために作ったとか、誰が信じるっすか!? 私だって、こうしてじっくり実演やら話やらを見聞きして、ようやく腰を抜かしてるって状態なんすから!」

「確かにねえ。ここまでやらなきゃ信じられないからこそ、『ヒューム』側を油断させるのにうってつけなのだから……」


 そうそう、そういうことですよ!


 あ、しまった。肝心なことをみんなに伝え忘れてた!


「みんなー、ちょっと集まってー。言い忘れたことあったよー」

「まだあるのかよ!? 実はお前が宇宙人だったとか言い出しても不思議じゃないからな!?」

「何言ってんのよ、成瀬くん。私にできるのは精神感応による制御技術に関することだけで、重力制御とか空間転移とかはできないからね?」

「お前が何言ってんだよ!」

「はいはい、話が進まないから無視するねー。えっとねー、『ヒューム総帥』だけどねー」


 かくかくしかじか


 ……

 …………

 ………………


「「「「「「えええええええええええええ!?」」」」」」

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