第289話 責務ってだけの話

 西部、反乱軍本陣。

 旗頭となった子爵家の本体があり、西部反乱分子の支柱。

 そこにいきなり現れた八木と竜騎兵隊。

 呆然としている兵達に、暴虐が襲い掛かる。

 そして、我に返った兵達の大半は徴兵された領民たち。

 足元には、胴と別れた首がいくつもゴロンっと転がっている。

 起こるは必然、恐慌と阿鼻叫喚。

 我先にと逃げ出す兵達と、手柄首だと向かう職業軍人。

 結果は必然、死である。


「ラフィさん、ひっどいよなぁ」


「まぁ、陛下ですからとしか」


「それよりも八木諜報師長、この先は?」


 諜報部隊と名付けられているが、実際には隊でも団でもない。

 故に付けられた役職名は師長。

 シンビオーシス公王の懐刀と言われるようになる男の役職名だ。

 本人八木は、恥ずかしいと言って、普段はさんや殿付けにして貰ってるが、戦場や公時は役職名が付く。

 なので今は、役職名を言われている訳なのだが――。


「できれば、さん、若しくは殿で」


「無理ですね。分かっているでしょう?」


「俺から言えば、反乱分子に名乗る必要性があるのかなって」


 八木の一言に、戦闘しながらも考える竜騎隊の面々。

 我らが陛下ならなんて言うか? ……どっちでも良くね? が正解だと思うが、序列達が八木に真っ向から反論した。


「寧ろ名乗るべきでしょう。陛下に弓を引きし愚か者にその名と共に恐怖を味合わせてから、地獄へ堕とすべきです」


「こっわ!」


「同僚の発言は過激ですが、間違ってはいませんよー。今後の事も考えるのなら、ある程度は名を知られるべきですー」


「俺、諜報部隊の長なんだけど?」


「上が直々に動く事態は稀ですー。普通は下の者が動くのですから、上は顔を知られておいた方が良い場合もありますー」


「な、なるほど?」


「後、どうせ他国の軍部にはバレているというのもですねー」


「あー……確かに」


 論破された八木は、役職名で呼ばれるのを受け入れてしまった。

 受け入れちゃったのだ……後で二つ名が出来るのに。


「貴様らっ、ここをどこだと――」


 その後の言葉は続かなかった。

 首と胴がお別れしたから。

 実は序列侍女全員、反乱分子にガチギレ中なのである。

 だから、優しさ皆無。


「生きるに値しないクズがっ」


「ねぇ、君の同僚、おっかなくね?」


「彼女、苛烈ですからねぇ。後、陛下が集団暴走スタンビードを沈めた時からのファンなんですよ。侍女長並みの天元突破忠誠心ですよー」


「あ、納得。でも、それだと、もっと上でも良い様な……」


「暴走しがちなので、9位なんですよ。そして、手綱を握るのが私なんですけどっ――」


 斬りかかって来た従士を縦に真っ二つ。


「似た者同士だよね?」


「違いますよー。あの子は忠誠心で恋愛感情無いですからー」


「あ、君は妾を狙ってると」


「当然ですよー」


 そう言いながら、クズって呼ばれてた人物の確認をしていく序列侍女。


「従士長ですねー。親玉は逃げたのかしら?」


「上から確認してください」


「は、はいぃぃ!」


 因みに、クズ呼びしてたのが序列9位のピリラ・トーチカで、真っ二つ序列侍女が序列7位のルーチェ・ビーファ。

 ピリラはランシェスにある中規模のトーチカ商会の次女。

 ルーチェは聖樹国元神聖国のシスター見習いでランシェスにある教会に派遣されていた。

 所謂、幼馴染である。

 ルーチェは性無しだったのだが、序列に上がる際、ナリアから名乗り性を貰っていたりする。

 お互いの性格も知っているので、コンビとしても優秀……なのだが、類は友を呼ぶって言葉があるくらいなので、推して然るべし。


「見つけました! 本陣地から南の位置!」


「にが――」


 ビックゥっと、ピリラが固まる。

 八木も固まる。

 何故か? ルーチェの身体から、ドス黒い何かを幻視したから。


「竜騎隊に、ここはお任せしても―?」


 誰からも拒否の言葉は出なかった。

 怒らせたら本気でヤバいのは、ルーチェの方だと、誰もが思う程に。

 ピリラは知っているから、元から逆らう気も無いのはお察し。


「八木諜報師長、行きましょうか」


「Sir, Yes, Sir!」


 八木、何故か敬礼して答える。

 その後、反乱首謀者の一つである子爵が、どんな目にあったかは、想像に難くない。

 そして、西部反乱軍は、この戦闘を機に、瓦解へと進んで行ったのだった。







 代わって、東部反乱軍。

 公王である俺に、ディストとシンティラの両竜がお供として付いて来て……現在、上空でホバリング中。

 何故か? 自身を弾丸としたメテオを俺がしたから。

 東部反乱軍の一つは、既に半分が戦闘不能状態。

 ついでに恐慌状態。

 軍として、もはや機能してないのが現状。


「き、きさ――」


 言わせない。

 従士長の出で立ちだから、陪臣に当たる。

 死刑不可避なので、王の判断でこの場で処刑する。

 ある意味、安らぎでもある。

 捕縛対象は、死刑前に尋問という名の拷問が待っているから。

 情報漏れの速度が尋常じゃないので、どういうことか徹底的に吐かせる。


「問題は雑兵たちなんだよなぁ」


 竜の爪で頭の後ろをポリポリ掻きながら、1人愚痴る。

 国力低下は避けられないけど、最低限にすることはできる。

 出来るんだけど……こいつらの眼って、濁ってるんだよなぁ。


「この反乱軍は、全員が同国民から略奪してるっぽいんだよなぁ。味を占めたとも言うのか……」


 そんな事を考えていると、奇声を上げた兵が槍で突いてきた。

 勿論、槍は届かない。

 届く前に、竜の尾で上半身吹き飛ばしたから。

 向かってくるなら容赦しないという警告だ。


「委縮したか。好都合だし、精神干渉魔法が今なら効きそうだな」


 ディストに命じて、精神拘束魔法を広範囲に展開させる。

 対象が多くなるほど微弱になる魔法だが、今の状態なら十分過ぎるほどに効く。

 魔法の行使を見届けると、全員が気絶した。

 後は土魔法で全員を拘束して、全部終わったら回収する。

 首謀者たちの死罪は免れんけど、今は残る短い生を噛み締めておくと良い。

 そんな感じで二つ目も潰し、東部で最大の反乱分子軍を目視。

 当然だが、本陣と戦場は離れているので、同じく自身を弾丸メテオする。


「主、割と怒っているよな?」


「実験も兼ねているのだろう。竜燐こそ発現せんかったが、身体防御力は人の比では無いのだろうよ」


 シンティラの言葉に、理解を示したディストだが、君らの声は丸聞こえだからな。

 後シンティラ、楽しんでるとか言うな。

 間違ってないから否定できんし、ミリア達に知られたら後が怖いだろうがっ。


「い、一体何が……あ――」


「やぁ久しぶり、ビーダ―子爵」


「し、シンビオーシス王……」


「分かってると思うけど、俺がここに来たって事は、君らのお遊びはここで終わりな。国家に対する反逆者として、死ね」


 最終勧告を告げて、襲って来た者は返り討ちに。

 ん? 竜人化状態なのに、なんで直ぐに分かるのかって? 顔は元のままだし、本能で理解できる様にしてあるからな。

 真似できるのって、神を除いた場合、極少数しかいないし、全員、関係者だから。

 だから必然的に、絶望しかないわけ。


「君らは領内で死刑執行するから、短い余生で後悔してろ」


 そう言って、生き残ってる本陣の者達全員の意識を刈り取る。

 物理だと加減が難しいから、魔法でだけど。

 攻撃の意思が無ければ調整できるんだけど、乗ると難しいのが難点だな。

 なんて考えながら戦場へ向かい、反乱子爵を両軍衝突地点に放り投げる。

 続いて空から降り立ち、降伏勧告。


「東部反乱軍は、全て駆逐した! ここが最後だ! まだ争うというなら、死出の旅路を覚悟して来い!」


「ぬか――」


 その辺にある石っころを指弾して、将校の額に穴を開けて黙らせる。

 その場に静寂が舞い降り、反乱分子の兵達から武器を落とす音が聞こえると、次々と武装放棄して降伏して行く。

 何人かの将校が手打ちにしようと動いたので、代わりに手打ちとしてやったよ。


「陛下っ! この度は抑えきれずに……」


「いや、時間を稼いでくれて、助かった。西部も間も無く落ち着くはずだ。ただ申し訳ないが、反乱に同調せず、被害にあった貴族家と領民たちのケアを頼みたい」


「捕縛もでしょうか?」


「そっちはゆっくりで良い。罪人だからな。死ねば運が無かった――それだけだ」


「承知しました」


「全て片付いたら、改めて褒章を取らせる」


「はっ!」


 手短に用件を済ませ、次は南部に。

 移動しようとして、リュミナから念話が入った。


『非常事態か?』


『そう言えなくも。その、来賓方が、戦場を俯瞰したいと』


『……各国の方々か』


『安寧殿曰く、手札下さい! との事です』


 危険な場所へは案内したくないんだけどなぁ。


『ミリア達は何て?』


『皆さん、賛成派です』


『ブラガスとナリア』


『大賛成してます』


 反対不可能じゃねぇか。

 要するに、怒らせた未来はあれですよ――と、見せつけたいわけね。

 こちらから喧嘩する気は無いけど、降りかかる火の粉は祓うし、祓った未来はあんな感じで責任は取らないよと。

 ため息一つ吐いて、条件付きで了承。

 一度合流することに――。


「手勢、必要ですよね?」


「東部辺境伯も抜け目ない」


「貴族ですから」


 中隊二つを借り受け、ゲートではなく飛翔で向かう。

 不思議そうな顔をしていた東部辺境伯だが、ゲートの概念を壊すわけにはいかない。

 今、軍が展開している場所を、俺は訪れた事が無いのだから。

 そうして、公国軍ではなく、南部辺境伯軍と合流。

 尚、出陣から合流するまでの時間は半日程度しか経ってない。

 理由は、弾丸メテオだ。

 成層圏まで飛翔して、目標地点にメテオ出来るように調整して飛んでるからな。

 この世界も球体惑星だから、空路が一番の時間短縮路なんだよ。

 そんな話を、リュミナと念話を繋げながら来賓方に説明して……不味ったかな?


『ご主人様、リーゼ妃が……』


『予測できるわぁ……。後でって、伝えといてくれ』


 リーゼの知識欲にぶっ刺さったらしい。

 全部片付いて、公務中の雑談だな、これは。

 少しだけ心が温かくなるのを感じながら、飛翔して南部辺境伯軍の元に到着して、ゲートを繋いで全員をこちら側へと呼ぶ。


「これは……」


 安寧氏が息を呑む。

 平野に布陣された南部辺境伯軍の前には、南部反乱軍が陣を整えていたから。

 そんな安寧氏は別に置いといて、現状を考える。

 公都までまだ距離があるのに布陣しているという事は、全周囲観測がしやすい戦場なのだろう。

 お互いに奇襲は悪手だろうから、真正面からやり合えるだけの戦力という事だろう。


「ま、俺達には関係ないか」


 そう、達。

 八木は旧ダグレスト国内の全てに言ったことがある人物――つまり、シンビオーシス内ならば、ゲートでほぼ何処でも行けるという事。

 だから場所を言えば、無制限ゲート付与魔道具でどこにでも行けるし来れる。

 合流が超楽なのだよ。

 そして今、全部終わらせて合流してきたってわけだ。


「ありゃ? 珍しいっすね」


「いや、何が?」


「もうてっきり終わらせているもんだと」


「ちょっと、色々あってな」


 安寧氏の方に視線を向けると、それだけで察する八木。

 理解力が高くて、大変助かる。

 そんな中、親父とおふくろが声を掛けて来た。


「許してやれないのか?」


「親父の言いたい事は分かるけど、この世界はそこまで甘くない。現代社会でも、特権を持ち、政治に絡む人物が汚職や反逆者になれば裁かれるだろう? この世界は、その罪が重いだけの話さ」


「あんたが手を下す必要性はないんじゃないかい?」


「まぁ、今でも王とか領主とか、面倒だとは思ってるよ。それでも、愛する妻達が、俺の作る国を見たいと言った。俺もそれに応えた。なら、それに必要な事は? 清濁併せ吞み、安寧を与え、責務を全うする。それが王であり、貴族であり、領主なんだ」


「「蒼……」」


「そんな顔しないでくれ、親父、おふくろ。これはその責務ってだけの話だからさ」


「お義父様、お義母様、私は妻として、正妃として、夫を愛する一人の女として、支え、尽くしていきます。これが十字架というなら、私も背負う覚悟があります」


 ミリアの言葉に、妻全員が頷く。

 血に染まった手でも、変わらず握りしめてくれるという。

 本当に、頭が上がらない。


「ほんと、覚悟ガンギマリの妻達だよ」


「不必要ですか?」


「いや、感謝してる。だからこそ、子供達が向かえる未来のために、出来る限りの火種を取り除く」


「出来るなら数年以内に全部ですよね?」


 キョトンとした顔をしてると思う。

 なんで知ってるんだという疑問はあるが、出て来たのは笑い。


「くくっ……あははははっ! いや、ほんと頭上がんねぇわ! 本当に、妻に迎えられたことに感謝するよ」


 誰に? ゼロとジェネス、そしてメナトに。

 そして、後を託してくれた前任の神々たちに。

 憂いも後悔も無い。

 全力で、責務を全うする。

 では、来賓たちに注意事項だ。


「この先を見続けるなら、恐怖と絶望の具現化を見ることになります。精神強化の魔法は掛けますが、絶対の保証は出来かねます。後、多分吐きます。それでも良いなら、身の安全は約束しましょう」


 心までは保証しかねると、きちんと伝えて誠意を示す。

 対する答えは、全員が見届けるであった。

 まぁ、そうなるよねぇ。

 後、奥さん達や、何故に準備運動を始める?


「参戦するからよ」


「血に染まった者同士なら、気にもならないでしょ」


「ボクは既に染まってる方だしね」


「ん。私もそう」


「僕も……っていうかさ、全員染まってるよね?」


 リアの言葉に少し考えた妻達は、全員が頷いた。


「私は、ランシェス内乱の時に手を下してますしね」


「ミリアさんだけではありませんわ。ダグレスト戦役で、仲良く染まっていますから」


 この世界は命が軽く、儚く、そして尊い。

 古代文明期はいざ知らず、その後は魔法体系で発展してきた世界。

 故に科学体系の発展は著しく遅れていて、魔法でどうにもならなければ死を見届ける世界。

 故に、故にだっ、平民を、国民を護り、導く責務は非常に大きい。

 己が欲の為に、護り導かねばならない者達を巻き込むのはナンセンスだ。

 しかし、護りたいが故にぶつかるならば、割り切るしかない。

 だからこそ、徴兵された平民たちには最終勧告を出す。

 それで引かなければ、生贄の羊になって貰う。

 恩赦は一度切り。

 運ではなく、機を掴んだものだけが生き残る――それが戦場だ。


「まぁそういうわけで、見届けるなら本陣で。覚悟はあるから」


 家族で、手を繋ぎながら見守ってくれる中、最終勧告を出す。

 逃げた兵は1割ちょっと。

 当然、追手が掛かるけど、そこは阻止った。

 捕虜になる事を自ら望んだ領民たちは、略奪行為をしてなければ不問で開放すると伝え、略奪行為をした者には罰金刑だけで済ますことも伝えた。

 但し、金額は言ってない。

 そこも罰の一つだから、甘んじて受け入れて貰う。


「さぁって……最終勧告も終わったし、殲滅戦だ。南部辺境伯軍は、打ち漏らしを」


「承知しました。それと陛下、ありがとうございます」


「何が?」


 分かっている、トルティ嬢の事だろう。

 娘を保護、帰還させて頂きとの。

 こちらの不手際もあるから、気にされると流石に気まずい。


「お父様、そのくらいで。陛下も困られています」


「う、うむ。それでその、変わったか?」


「そうですね。あ、後でお話とお願いがあります!」


「これが片付いたらな」


 父と娘の話が終わったのを見届け、妻達にはいつも通りでと告げてから、俺が先陣を切り、天竜のブラスト、バフラム、シンティラ、ディストと続き、八木とウォルドが逃げ道を塞ぐように左右に分かれて突っ込む。

 そしてその後に続いて、アルバを先頭にして妻達と序列達が。

 最凶戦力が揃った戦場の結果など、分かり切った事だった……。
















「日本の、安寧氏と言いましたか?」


「はい。英王室殿下」


「我が国は、友好関係を絶対に築きますがそちらは?」


「ははっ……。聞くまでも無いでしょう」


「私だけでなく、関係者も一緒で良かったと、深く思ってるよ」


「自分もです。米はどうされますか?」


「あれと敵対? 絶対無いですね。もし大統領が敵対とか言い出すなら、社会的に抹殺します」


「そうなりますよねぇ」


こちらも同じですね」


 とりあえずラフィが同行を許した参加国の代表団は、建前なく本音で話し、一致団結した。

 お互いのトップのネタは共有しましょうと。

 いざとなったら、いくらでも切って、友好関係の構築に専念しましょうと。

 中に関しても、協力関係で対処しましょうと、深く誓い合っていた。

 一方、家族組はどうなのかというと――。


「おぇ……」


 何処かの家族の兄が吐いた。

 他の家族も、顔色が青褪めている。

 自分の子供は、こんなにも残酷だったのかと、疑問を過ぎらせた。


「残酷ではなく、生存競争です」


 リュミナの声が響き、耳を傾ける。


「正義と正義がぶつかれば、負けた方が悪です。これも生存競争です。私も勉強しましたが、国もまた、生き物みたいなものです」


「言い得て妙やなぁ、リュミナはん」


「そうですね。ですが、今回のは生存競争にすら入りませんよ」


「せやったら、なんや?」


「ただの害虫駆除、腫瘍の切除、そんな感じの話です」


「辛辣な意見やなぁ」


 リュミナの言葉にコキュラトが相槌を打ちながら話を進めると、不知火家が話しかけた。

 主の、前世の家族との事で、対応は数段階柔らくなって対応する二天竜。


「一つ聞きたいんですが、これは人殺しなのでは?」


「そうですよ。但し、不利益を被ったから、王位簒奪してやるという犯罪行為に対して、同調した者達も含めて、王の判決を下しているだけですが」


「裁判は?」


「あるけどなぁ、今回は必要無いんや。最終勧告で投降したもんには、恩赦が出されとる。流石に、私兵や陪臣は罪が重うなるけど、犯罪奴隷落ち位には出来るはずや」


「ですのでこれは、判決後の、刑の執行という事です。勿論、見せしめの意味も含んでいますが、元から粛清対象になる可能性のあった家ばかりです」


「日本で言う所の、テロ準備罪みたいなことかな?」


 話しを引き継いで来たのは、雪代家の、詩音妃の父親。

 対応は不知火家と同じにする二天竜。


「テロ準備罪、麻薬取締法違反、人身売買、そして今は、国家反逆罪です。そちらの国でも、流石に死刑では?」


「日本では、国家反逆罪は無いんだよ。代わりに、、内乱罪、外患誘致罪、外患援助罪というのがある」


「その中で、命を絶つしかない罪はありますか?」


「私も法律の全てを知っているわけでは無いけれど、外患誘致罪だけは死刑が確定しているのは知っている」


「では、そういう事です」


「役人に手を汚させるか、自ら手を下すかの違いやな」


「……理解はしました」


 その後、誰も何も話さずに見届け、15分後には屍の山と血の平野が出来上がったのを見て、誰かが零した言葉。


 ――王の責務は、ここまで重いのか――と


 尚、そこまで重くはない。

 王自ら、手を下すのは稀だ。

 今回のは見せしめ。

 二度と内乱など起こさせる気を失わせる為の生贄に過ぎない。

 説明されて、頭では分かっていても、心が中々認められない。

 そんな葛藤を抱きながら、内乱は終結した。





「後で話し合いをすべきだな」


 詩音父の言葉に、深く頷く家族達であった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る