第168話 勝負の理由とその答え

 ヴィオレッタとの勝負が終わり、これから勝負をする事になった理由を聞くわけだが、ミリア達のやきもちにより、現在は正座中である俺。

 そんな状況なので、ヴィオレッタは話すのを躊躇っている様子だった。


「……話しづらいですね」


「ラフィ様の事はお気になさらず。それとも、こちらのお話が終わるまでお待ちしますか?」


 ミリアの言葉に考え込むヴィオレッタ。

 そこは難しく考えなくても良いのでは?とは思うが、いかんせん今の俺に発言権は無いに等しい。

 一つ間違ってしまうと、ミリア達の機嫌が急下降してしまうので、ここはだんまりが正解なのだ。

 答えるのは、ミリア達に振られた時のみである。


「グラフィエルさんの正座は気になりますが……、時間的な問題もありますし、先に話させて頂きます」


「では、お聞きしますね」


 ミリアが笑顔になる。

 うん……これは、ある程度察している時の顏だ。

 多分、リリィから話を聞いて来てるな?

 その考えを元にリリィの方へ視線を向けると、露骨に逸らされた。

 代わりにリーゼから視線が飛んでくる。


『黙ってお話を聞きましょうね』と……。


 その視線に抗えるわけも無く、だんまりに切り替えて、ヴィオレッタの話に集中する事にした。

 うん……ちょっと足が痺れて来たな。


「まず、何処から話すべきかしら?」


「ある程度はミリアさんに伝えていますよ」


「リリアーヌさんは、何処まで知っていらっしゃるのかしら?」


「概要は全て――でしょうか」


「ほとんど知っていらっしゃるのね。それならば、話は早いです」


 ヴィオレッタは俺に一瞬だけ視線を落とすと、考え込むような仕草を見せる。

 その行動に全く意味が解らず、首を傾げると同時に、ヴィオレッタが再び語りだす。

 その内容とは、ヴィオレッタ自身の婚姻に関する話だったのだが、ここで疑問点が一つ。


(なんで俺と勝負する必要性があったんだ?)


 ヴィオレッタの話を聞いて、再び首を傾げる俺。

 そんな俺に対して、ミリア達は大きなため息を吐いた。

 俺、何か変な事しましたかね?


「はぁ……。ラフィ様はこの際置いておくとして、ヴィオレッタさんの方はどうでしたの?」


「はっきり言って、気乗りしてませんね」


「夢は諦めるんだ」


「諦めたくは無いですけど、どうにもならない事はあるんですよ、リアさん」


「だから、ラフィ?」


「それだけでは無いですけど……」


 話が見えん。

 皆は一体、何の話をしているんだろうか?

 あれか? ヴィオレッタを武官として雇えとか?

 いや、それなら正座とかは強要しないよなぁ……。

 あ、違うわ……強要じゃなく自主的だったな。

 でも、自主的なんだから、そろそろ正座を止めても……あ、はい、まだ正座続行っすね。

 ミリア達の雰囲気で自主的に正座を続行する俺。

 そろそろ足がヤバいんですが……。


「ミリアさん、グラフィエルさんが辛そうなんですが?」


「大丈夫ですよ。……大丈夫ですよね? ラフィ様」


「う、うっす。大丈夫であります!」


「ですって。では、お話の続きをしましょう」


「(既に尻に敷かれていますのね)」


 誰にも聞き取れないヴィオレッタの独り言。

 但し、俺には聞こえている。

 そして、その独り言に全く反論できない。

 ただ、ヴィオレッタの目が優しくなった気がしたのだが、憐れみからであろうか?

 それも一瞬の事だったので真意は不明のまま、ヴィオレッタの話が再開される。


「それで、ヴィオレッタさんはどうするおつもりですの?」


「問題はその話なのですが……。実は、王妃殿下様から手紙を預かっています。父経由ですが」


「拝見しても?」


「ええ。この手紙は、私から婚約者の皆さんに渡す様に指示されていますので」


 ヴィオレッタから手紙を受け取ったリリィは、手紙の内容に目を通していく。

 一通り読み終わった後、ミリア達にも渡して、手紙の内容を読むように促したのだが、先に目を通したリリィの機嫌は下降していた。

 その後、全員の機嫌も同じ様に下降した様だが、自身の中で折り合いをつけた様に見える。

 何が書かれていたのであろうか?

 俺には見せて貰えなかったので、推測するしかないわけだが……。


「それで、ヴィオレッタさんはどうするのですか?」


「……正直に話しても?」


「ええ。むしろ、嘘偽りない気持ちを聞かせて欲しいですわね」


 リリィの言葉に対して、本音で話すと応えるヴィオレッタ。

 二人は真っ直ぐに見つめ合って対峙している。

 ……何か不穏な空気じゃね?


(これは止めるべきか?)


 その考えの元、立ち上がろうとした時、両肩を押さえつけられてしまう。

 押さえつけてきたのはリアで、耳元に顔を近づけて、小声で俺を制止してくる。


「(今は様子見の時間だよ)」


「(ヤバくないか?)」


「(ミリアじゃなくて、リリィが相手をしている理由を考えて)」


「(…………あ、そう言う事か)」


「(そう言う事。だから、ミリア達も今は静観しているんだよ)」


 リアとのやり取りで、現状を察した。

 何故、正妻候補であるミリアではなく、リリィがヴィオレッタの相手をしているのか。

 ちょっと考えれば簡単な話であった。

 今、リリィは、婚約者の立場と王女としての立場、両方の立ち位置で話をしているからだ。

 その理由は、恐らくはあの手紙であろう。

 そう考えると、王女としての立場が強いのかもしれない。

 つまりは、貴族的な話と言う事か。

 そこまで考え終わったと同時に、ヴィオレッタが口を開く。


「正直、今は――と言う気持ちはあります。ですが、貴族に生まれた以上、仕方ないとも思っています」


「それは建前ですよね?」


「建前は大事ですよ。その建前を話した上で、本音を言いますと、私自身はこのお話自体を嫌ってはいません」


「他にもっと、良い方が居るかもしれませんよ?」


「実は、幾つかの家からお誘いはありました。で・す・が! 無能で馬鹿な方へ、どう好感を持てと?」


「そうですよねぇ……。私だって、ごめんですわね」


「二家はまだマシでしたとも……。ええ……年齢差さえ無ければ」


「お聞きしても?」


「流石に、20歳差は無理です」


 ヴィオレッタとリリィの話で、何となく察した俺。

 要は、ヴィオレッタの婚姻話なわけか。

 だが、ヴィオレッタには夢がある。

 ランシェス王国初の正式な女性近衛騎士と言う夢が。

 どの国でもそうだが、女性が役職に就くのは極めて難しいのが、今の世情だ。

 男性の3倍の能力があっても、役職に就けるかは怪しい。

 妾前提で、貴族家に仕える方が現実的なのが現状なのだ。

 だからヴィオレッタとしては、まだ夢を諦める年齢では無いと考えているのであろう。

 しかし、ヴィオレッタの両親としては、行き遅れになるのは避けたい、と言った所であろうか?

 結果、嫁ぎ先を探したら微妙な家しか話が無かった――と。

 ……ファーグレット家は、陛下や王妃に泣きついた可能性があるな。


「お話は分かりました。ところで、何故、お母様の手紙が来るのでしょうか?」


「それは……、ある意味、我が家の恥ですわね」


「つまり、ご両親が泣きついたと?」


「どうでしょうか? そこまで酷いとは思いませんが、王妃殿下のお茶会に母が呼ばれていましたので、相談等はしたかもしれません」


「詳細は不明ですか」


 リリィは最後に言葉を出した後、扇を広げて口元を隠した。

 それを見た俺は、リリィに対して思った事を言ってしまう。

 これが、己の不幸を呼ぶとも知らずに……。


「なぁ、リリィ」


「なんですか、ラフィ」


「いやな、今の扇に広げ方とか仕草とかさ、リアフェル王妃にそっくりだと思ってな」


「……今、なんて言いましたか?」


「え? いや、リアフェル王妃にそっくりだな――と」


 リリィの額に青筋が浮かび上がる。

 周りの皆は……あ、呆れてるわ。


(失言だったか……)


 そう思うと同時に、正座している俺は、正座している状態のままリアに引きずられ、リーゼとティアとラナにもの凄く叱られた。


「ラフィ君、デリカシーが無さ過ぎ」


「ラフィ様、先程のは無いです」


「ラフィ様、後でお勉強しましょうね」


「いや、だってさ……」


「「「だってじゃありません!」」」


 そして始まる、女性に対しての扱い方。

 どうやらリリィは、自分でも気づいていた様で、とても気にしていたらしい。

 だがな、弁明はさせてくれ!

 俺はリリィが気にしているとは知らなかったんだ!

 しかし、俺の弁明は通らず、正座しながら怒られ続けてしまう。

 正座の時間は、更に伸びる事が確定してしまった。

 そんな俺達の様子を、俺を引きずって話したリアは、やれやれ――といった感じで傍観していた。

 見てないで助けて欲しいのだが、視線で合図を送られてしまう俺。


(自業自得)


(そんなぁ……)


 そして、そんなこちらをよそに、ヴィオレッタ達の話は続いて行く。

 多少距離は離れたが、聞き取る分には問題無いがな。

 ミリアとリリィだけ残したという事は、ティア達はどんな決定になっても異論はないという事だろう。

 ……丸投げしてると思うのは、俺だけであろか?


「あちらは宜しいのですか?」


「ラフィ様には、後でお灸を据えますからお気になさらず」


「ミリアさんって、意外に怖いのですね」


「私は普通ですよ。それよりも……」


「ええ。リリアーヌさん、大丈夫ですか?」


「私がお母様に似て来た……私がお母様に似て来た……うふ、うふふふ……」


「……どうしましょうか?」


「どうにもできないのでは?」


 離れて聞いていたが、どうにも話が再開しそうな感じではない。

 それから数分後、リリィがどうにか復活して、話が再開される。

 ただ、話の中で一つだけ決定したことがあった。

 どうやら俺は後で、リアフェル王妃モードのリリィから説教されることが確定してしまったのだ。

 はっきり言って、もの凄く逃げたい。

 でも、逃げられない!逃げたら、リリィが病みそうだったから……。

 この世全ての男性に、俺から至言を送ろうと思う。

 女性の扱いは慎重に……と。


「あちらはあちらで盛り上がっていますが、こちらも話を進めましょうか」


「良いんですの?」


「ラフィには後で、たっぷりと恐怖を叩き込みますから」


「グラフィエルさん、お気の毒に……」


「あれは、ラフィ様の自業自得なので、お気になさる必要はないですよ」


「グラフィエルさんが無事であることを祈りますわ」


 ヴィオレッタ達は言いたい放題であった。

 だが、反論できないのが悲しい。

 女性陣全てを敵に回しているからな。

 怒られながらも聞き耳を立て、ヴィオレッタ達の話を聞かないと。

 未だに、ヴィオレッタが勝負を挑んできた理由は判明していないのだから。


「話を戻しましょう。それで、ヴィオレッタさんはどうされるのですか?」


「先にも言いましたが、私はこのお話を前向きに考えてはいます。下手な貴族家に嫁ぐ位なら、好感が持てる方に嫁ぎたいですし」


「私は別に構いませんが……。ミリアさんはどうでしょうか?」


「私ですか? 私も反対はしませんが、1つだけ気になっていることがありますね」


「何でしょうか?」


 ミリアが気になっている事だが、それは俺も気になっている事だった。

 若干、怒っていた部分でもあるな。

 その理由を、ミリアが聞きだしてくれるらしいので、聞き耳全開で漏らさずに聞こう。


「ラフィ様が、少し怒っていた部分でもありますね。何故、いつもの装備では無いのでしょうか?」


「それを聞くのですか?」


「話したくないなら、別に構いませんが? ただ、この後の話で、ラフィ様が納得されるかに関わるかと」


「そう言えばそうですね。最終判断は、ラフィにして貰ってますから」


「私達が納得していれば、援護は約束しますよ」


「その言い方は卑怯ですね。まぁ、隠す事では無いので話しますが」


 ヴィオレッタは一つ息を吐いた後、装備ついて話し始めたが、その理由は家も関係していた。

 今回の婚姻話に複数の貴族家が名乗りを上げたが、ファーグレット家は代々近衛騎士を輩出してきた貴族である。

 武勲と戦闘能力こそが、ファーグレット家の家風といても過言ではない。

 そして、ファーグレット家の戦闘訓練は剣と盾の装備が標準装備で、レイピアなどは邪道とされてきた。

 例外は、斬撃を放てる剣単体なら家風にそぐわないと言った所らしい。

 そして、どの貴族家でもそうだが、基本的に令嬢に対して戦闘訓練などは施さない。

 ヴィオレッタは異質であった訳だが、ファーグレット家の家風に背いているわけでもないので、好きにさせて貰っていたそうだ。


 あ、リアの実家は例外中の例外なのを伝えておく。

 指南役なので、戦闘技術の継承は全ての子供に教えているからな。

 指南役や道場主の子供達は例外だと考えてくれて構わにかな?


 さて、話を戻すが、そんなヴィオレッタだが、15歳になっても婚約者が決まっていない状況に、両親は焦りを感じたそうだ。

 しかし、ヴィオレッタ本人の夢を応援してやりたい気持ちもあったが、レイピアは許容出来なかったらしい。

 結果、一般的な装備で、名乗りを上げた貴族家の相手と勝負を行い、負けたら嫁に行けと言われたのだが、ぬるま湯に浸かっているようなボンボンに負けるヴィオレッタでは無く、見事に完勝。

 そして、リアフェル王妃のお茶会に繋がると説明をした。


(あれ? もしかしなくてもこれって……)


 勝負をした理由と勝者が俺。

 そして、婚姻の話に王妃の手紙。

 つまりは、そう言う事なのだろう。


「やっと気づいたんだ」


「ラフィ君、ちょっと鈍すぎじゃない?」


「まぁ、ラフィ様は今まで直球で言い寄られることが多かったですから」


「やはり、お勉強が必要ですね」


「君ら、言いたい放題だな。後リーゼ、なんでも勉強に繋げるのは止めような」


 かなりボロカスに言われる俺。

 否定できないのが悲しい。

 悟られない様に落ち込んだ様子は見せてないが、俺のライフは既にレッドゾーンである。

 だが、勘の良いリアに感づかれてしまい、正座中の俺の頭を優しく抱擁して自身の胸の中に収めるのだが、いかんせん無乳なので頭の後ろに骨が当たる。

 後、ちょっと恥ずかしい。


「ラフィ、人が慰めてあげてるのに、無乳で骨が当たるとか思ってるでしょ」


「そ、そんなことないしぃ……」


「嘘つけ! そんなラフィにはお仕置きします」


「あ! やめっ! いだだだだだだ!」


 リアに頭を思いっきり締め上げられてしまう俺。

 乳が無いので、胸骨が後頭部に当たって痛みが倍増中なう。

 そんな光景を見ていたヴィオレッタ達は、話し合いが終わったのか、こちらへと歩いて来て……いや、ヴィオレッタだけは小走りで来て、リアを止めてくれた。

 ヴィオレッタ、なんてええ子や!


「それで、話し合いは纏まったの?」


「勿論です。その上で、リアさんたちに確認ですけど、任せてしまって良かったのですか?」


「ミリアが何も言わないなら、僕は反対しないよ。ラフィの婚約者って、何処か似た者通しだしね」


「ラフィ君の好みの女性って、向上心が必須だよね」


「料理が出来る女性は、絶対って所もありますよね」


「癒しも求めていますよね」


「グラフィエルさん、あなた、やりたい放題してませんか?」


「断固否定する! こう見えて、急速的に柵が増加してるんだぞ!」


「貴族としては仕方ないでしょうに……」


「その柵に、ファーグレット家も加わるんですけどね」


「あれ? 確定事項?」


「嫌なのですか?」


 どちらかと問われたならば、ヴィオレッタは好意の持てる女性なので嫌ではない。

 ただ、これ以上、柵が増えて欲しくない思いはある。

 百面相している俺を見たリリィは、ため息を吐いてから、爆弾を投下してきた。


「はぁ……。ヴィレッタさんは嫌いでは無いけど、柵は断固拒否したいんですね」


「何故わかった!?」


「何年の付き合いだと思っているんですか? 付き合いだけなら、ミリアさんよりも長いんですよ」


「まぁ、そりゃそうだけど」


「なので、ラフィが悩まなくても良い話がありますが……聞かれます?」


「一応、聞く」


 こちらの応答を待って、リリィは爆弾を落とした。

 こちらからしたら、半分は寝耳に水の話ではあったが。


「実は、ファーグレット家はクロノアス家に貸しがあるんですよね」


「はい?」


「帝国内乱で近衛騎士を一名、貸して頂いたでしょう?」


「あれは陛下の許可を取ったはずだが?」


「そうですね。陛下の許可は取りましたし、陛下の言葉の元に派遣されたわけですが、調整をしたのは誰でしょうか?」


「おい……まさか……」


「近衛筆頭騎士団長が直々に調整されたんですよ。そして、今の団長は誰でしょうか?」


「……ファーグレット卿」


「正解です。そして、今の話を総合すると?」


「俺は団長に借りてる状況か」


「大正解です」


「ちきしょうが! リアフェル王妃は全部わかった上で、あの手紙を出しやがったな!」


「あら、良くわかりましたね」


「全部出来レースじゃねぇか!」


「私の勝負の意味って……」


 ヴィオレッタと俺はお互いに項垂れる。

 二人共、リアフェル王妃の掌の上で踊らされていたようなもんだからな。

 今度、リアフェル王妃には文句は言っておく。

 いや、陛下を巻き込んでしまうべきかもしれない。

 話の分かる友人として、同盟盟主として、貴族家への介入に対する陛下として、全部で巻き込んでやろうか?

 まぁ、それは後で考えるとして、今はヴィオレッタの方だな。

 本人は割と本気で落ち込んでいるので、慰めんといかん。


「あー、ヴィオレッタ。あまり深く考え込まない方が良いぞ」


「ですが、無意味みたいじゃないですか!」


「無意味では無いだろう。自身の気持ちの切り替えや考える事もあったはずだと思うんだが?」


「否定はしませんが……」


「そもそも、俺に勝負を挑んだのは、誰かに言われたからか?」


「自分の意思です。もし、自分で出した条件で負けるなら、好感の持てる人物が良かったですから」


「その点で言えば、俺は合格?」


「及第点ですね。グラフィエルさんは、もう少し女性の扱い方と言葉を選んだ方が良いと思います」


「手厳しいなぁ。ま、それだけ言えるなら、意味はあったんじゃないか?」


「微妙な慰め方と励まし方ですわね」


「だって、ありきたりな言葉じゃ心には響かんだろ。俺なりのやり方さ」


「やっぱり及第点ですわね」


 その後、あ互いに笑い合って、その場は締め括られる。

 ただ、慰めて励ましはしたが、正座した状態という格好がつかない姿だったのは察してくれ。

 そして、後日改めてファーグレット家にお邪魔すると言う事で話は纏まった。

 あ、ちゃんと事情は話した上で決めてあるからな。

 問題は……ブラガスの負担が増えそうな点か。

 休暇が終わったら、仕事が増えてるブラガス君。

 地味に同情してしまうが、文句は王家――特にリアフェル王妃に言って欲しいな。


「それで、俺はいつまで正座なのだろうか?」


「帰らないといけないので、終わりで良いですけど、立てますか?」


「うん……ちょっと無理っぽい。暫く休ませて」


「どれどれ」


「こら! リア! ちょっ! ふくらはぎをツンツンすんな! いや、マジでやめてぇぇぇ!」


 最後に痺れた足をツンツンされて、身悶える俺を見て笑う皆。

 まぁ、仲良きことは美しきかな――だな。


 そして、屋敷に帰ると自室へと連行され、有言実行と言わんばかりに、リアフェル王妃モードリリィから正座をさせられてお説教をされる俺であった。

 もう正座は勘弁して下さい!

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