第95話 大規模ダンジョン攻略戦・死闘編

厨二病患者の疑いをかけられ、心にダメージを負いつつも、次階層へと足を踏み入れる


120階層、そこにいたのは少年?少女?であった

幼い顔立ち・・11歳か12歳位

髪の色は3色混じっていて、白、黒、そして・・灰色

瞳の色は燃えるような赤・・いや、深紅

そして、その人物は全員が部屋に入ると同時に


「ようこそ、最深部へ。僕がこのダンジョンの管理者だよ♪」


ご機嫌に、笑顔で挨拶をしてきた

続けて放たれる言葉


「じゃ、最終試験、行ってみよう♪」


お気楽に、しかし邪悪な笑みを溢し、その姿を消失させる

次に起こるは、地響き

そして、現れたるは


『そいつを倒せたら、僕が相手してあげる♪』


魔獣ヴリトラ

ご丁寧に灰色化してあった

全員が戦闘態勢に入るが


「GURUAAAAAA!!」


その咆哮だけで、勇者(笑)一行は片膝をつく

そして、震え

絶対的強者の殺意プレッシャー

俺の脳内にも警報アラートが鳴り響く

ディストやリュミナも同じの様だ


戦意喪失した5人を放っておくわけにもいかず、リュミナへ指示を出す


「5人を部屋の隅に!その後、リュミナは結界展開!ディストはリュミナが結界を張り終えるまで、時間稼ぎだ!急げ!!」


「GUGYAAAAA!!」


指示と同時にヴリトラが咆哮し、ヴリトラの周りに魔法陣が出現

発動まで、およそ5秒

咄嗟に勇者(笑)一行を部屋の隅に投げ飛ばし、リュミナが結界を構築

ディストが相殺させるために、ヴリトラと同じような魔法陣を展開

俺は軌道を逸らすために、ヴリトラへと突撃し攻撃を繰り出す


刹那、ヴリトラの魔法陣型ブレスが発動

同時にディストも同じ魔法陣を発動

周囲の魔法陣型ブレスは相殺に成功するが、口から放たれたブレスの相殺は失敗

極光に飲み込める寸前で、ヴリトラの顔を蹴り飛ばし、極光の方向を変える

その隙を逃さず、ディストがヴリトラの懐に飛び込み、おふざけ無しの強烈な一撃を叩き込み、胴体に穴を空ける

悲鳴を出す余裕すら残さず、ヴリトラは地に沈む


「や、やったのか?」


おい、来栖!フラグ立てようとすんな!

そんな心の声も虚しく、ヴリトラの胴体に空いた穴が、あっという間に塞がり回復していく

再び、大地に足を踏みしめ、復活するヴリトラ


「くそ!なんて回復力と生命力だ」


「主!我はもう一度、懐に飛び込んで穴を空けます!主は首狩りを!」


ディストの提案に頷き、両手神剣を空間収納から引っ張り出す

その間にヴリトラは、またも同じ攻撃を展開

発動される前に、同時攻撃で胴体に穴を空け、首を斬り落とす

再び、大地に沈むかと思われた直後


「なっ!嘘だろ!?」


「回復速度が圧倒的過ぎる・・・」


地に沈む前に、胴体を修復し、斬り落とされた首がボコボコと音を立て、再生されていく

そして、三度魔法陣を展開

馬鹿の一つ覚えの攻撃方法だが、その一撃は致命傷になりかねない・・いや、確実に致命傷になる破壊力を秘めている


そして、攻撃後にヴリトラから距離を置いたのが仇となる

発動までに妨害が出来ず、発動する魔法陣型ブレス


「ディスト!!」


名前を呼び、自分の後方へ下がらせる

俺は両手神剣の腹を盾にし、極光の防御へ移る

同時に、身体強化も忘れずに発動

放たれる極光は、全てを飲み込み


「うおぉぉぉぉ!!!」


「く、主!!」


光が治まった後、床や壁一面が削れ、プスプスと焦げた匂いと音をさせながら何とか生き残った俺達

リュミナ達も俺の後ろで結界を展開していたおかげで、何とか無事なようだ

だが、俺のダメージは思っていたより深かった


「ごふっ・・・」


内臓へのダメージも大きかったようで、口から血を吐いてしまう

倒れそうになる身体に、身体強化と回復をかけて自己治癒能力の底上げもしていく

袖口で口を拭い、血がべっとりと付く


「GYAOOOOO!!」


そんな様子に満足したのか、ヴリトラが吠える

その咆哮を聞いたディストの目が、怒りの為か竜眼へと変わる


「貴様・・我が主に対しての無礼、死を持って償え!!」


ディストが怒りのままに竜化し、ヴリトラへブレスを吐く

同時に突撃し、爪と牙で攻撃

更には黒炎弾、黒氷弾、黒雷弾など、呪い付きの攻撃を躊躇なく放っていく

その間にひたすら回復を試みるが


「くそ・・呪い付きかよ」


予想より回復が遅く、鑑定を自分自身にかけると【冥府へのいざない】と表示される

効果は、生命力の減衰と吸収

人の命を勝手に持って行くな!


ディストが時間を稼いでいる――ただキレて暴れているだけ――の間に呪いの解除をする

続いて傷の治療と体力の回復

最高峰の治癒で一気に治し、神銃を空間収納から取り出す


神気を一気に込め、神器開放の準備をする

多少身体に変調をきたすが、背に腹は代えられない

発動までの神気を溜め込み


「ディスト!離れろ!」


その言葉に瞬時に反応し、ヴリトラから離れるディスト

それを見たヴリトラが、再度こちらに魔法陣型ブレス・極光を放とうとする

対してこちらも、神銃の神器開放を発動

同時に放たれる滅殺対滅殺


「神器開放!ルシフェル・ルシファー!!」


「GURUAAAAAAA!!」


今回のルシフェル・ルシファーは乱発ではなく、収束砲撃

極太のレーザー光線みたいな感じだ

それを何丁も展開させてある


拮抗する光と光

だが、拮抗していたのは初めだけ

こちらが出力を上げ、ヴリトラの極光を飲み込み始める


「GYAAAAAAAAAA!!!」


極光を全て飲み込み、ヴリトラの巨体も全て飲み込む

放射され続ける事約1分

飲み込まれた直後は、再生していた身体が、遂に崩れ始める

更に十数秒放射し、ヴリトラは巨大な魔石を残して消滅した



「ああ~、つっかれたぁ」


思わず本音が駄々洩れになる

ヴリトラが消滅したことで、ディストも正気に戻る


「主、申し訳ありません」


「ん?なにがだ?」


「思わず、理性を吹き飛ばしてしまいました。何という醜態を」


「俺の為に怒ってくれたんだろ?なら、謝らなくて良いさ。次からは気をつけよう」


その言葉にディストは頭を下げ、いつものディストに戻った

と、ここで、声が響く


『ぱちぱちぱち。いやぁ、中々に凄い戦いだったよ。そして、合格者は一人だけかな?』


その言葉の直後、ディストがリュミナ達の傍まで吹き飛ばされ、壁に激突する


「がはっ」


そのまま倒れこむディスト

続いて透明な壁が出現し、俺と皆とを遮断する

そして現れる、得体の知れない人物

警戒態勢は最大限に、直ぐに臨戦態勢へ移行

ディストは恐らく致命傷は負ってないから大丈夫なはずだ

そんな思考を読んだかの如く


「ちゃんと説明してあげるよ。まず、僕と戦えるのは君だけ。他の人達は見学だね。ああ、君が負けても、第一目標はクリアしてるから、ご褒美に外へ出してあげる♪尤も、君は死んじゃうけどね♪」


「あの透明な壁は何だ?」


「あれは防御壁だよ♪結界みたいなものだね。被害が行かない様にしただけだよ♪」


「・・・なるほど。つまり、タイマンってわけか」


「正解♪そうだ!ご褒美の話をしてなかったね。僕に勝てばこの異変は収まりま~す。後は、超強い武器を進呈♪そ・れ・と、この異変を起こした人物を暴露しちゃいまぁす♪」


「何かノリが軽いと言うか・・・性別もわからんし」


何か毒気を抜かれてしまう

それほどに目の前の人物には警戒感を緩めてしまう


「ん?僕の性別?ん~、一応生物的に答えると女性に分類されるね。あ、僕位の身形みなりだと、女の子かな♪?」


はい、やりずらい情報きましたー

明らかに年下っぽい女の子と戦えと?

前世の某紳士達が抗議してきそうだな

そんな考えを読んだかの様に


「あくまでも生物的にだからね。そ・れ・に~」


突如、猛烈な殺気が辺りを埋め尽くす


「君はここで終わりさ♪そう言えば、名前をまだ名乗っていなかったね。僕の名前はフレースヴェルグ。ヴェルグって呼んでね♪あ、ごめんねぇ。もう死んじゃうから呼べないよねぇ♪じゃ、最終決戦開始だぁ♪」


その言葉と共に殺気が膨れ上がり、ニタァァァと口が三日月の様に裂ける

そして、一瞬の油断

気が付いた時には、壁に吹っ飛ばされていた


「かはっ」


肺から空気が抜け、声が漏れる

態勢を整えようとした所に更なる追撃

しかし、身体を沈めながら蹴りを出し、カウンターを狙うも、半身で避けられて、足で逆撃を受ける

相手の足に合わせる様に、足の裏で攻撃を受け止め、ヴェルグの力を利用して、空中へ退避し、一定の距離を保つ

ここまでの流れが僅か十数秒の出来事だ


「へぇ~、中々やるねぇ♪もう少し、速度を上げても問題無いかな?」


可愛らしい声を出し、少女の幼い顔を凶悪に染めるヴェルグ

頭の中に響く警報アラート

更に速度を増したヴェルグは、瞬時に詰め寄り拳を突き出す

それをギリギリで躱しながら、再度カウンターを試みるが


「甘い甘い♪よっ、と♪」


回避され、逆撃であばらに廻し蹴りを食らう


「ぐふっ」


アバラが嫌な音をさせ、吹き飛ばされる

瞬時に態勢を立て直すが、鈍痛が酷い

何本かアバラが折れたみたいだ

だが、のんびり治癒する余裕はない

患部に魔力を流し、治癒魔法で強引に治癒させる

その間にも、ヴェルグの攻撃は苛烈さを増していく


「くそ!格闘戦はそこまで得意じゃないのに!」


「得意じゃないって割には、結構防いでるよね?それって嫌味かな?」


「そりゃ神様から指南を受けてるからな。それなりには戦えるさ」


その言葉の後に、ガードの上から衝撃が走り、またも吹き飛ばされる

追撃に備えるが


「ん~、決め手に欠けるなぁ。・・・よし!これを使おうっと♪」


ヴェルグが手を前に突き出した場所の空間が揺らぎ、一振りの剣が姿を見せる

こちらも空間収納から双神剣を取り出し、構える


「じゃ~ん♪魔剣・イーベダーム♪君の全てを喰らう魔剣だよん♪」


「また、性質の悪そうなもんを・・・」


その言葉を皮切りに、お互いの剣閃が交差し、甲高い音が遅れて響く

キンキン!ガキン!

眼で追うのが困難な速度での斬り合い

お互いの皮膚を薄く斬り裂き、血風が辺りを舞う


「決め手に欠ける!」


「あはは♪ここまで戦えるなんて、予想以上だよ♪めっちゃ、たんのすいぃぃぃ♪」


「この、戦闘狂が!!」


言葉を交わしつつも斬り合い、そして


ガキンッ!


双神剣と魔剣の鍔迫り合いに

お互いが相手の致命傷を狙いながら、拮抗する

そこでふと、とある考えが閃き、実行に移す


「おい、お前の正体を教えろよ」


「え~、それは勝ってからのお楽しみだよ♪」


「おや?俺が聞いたご褒美は『異変が収まる、超強い武器を進呈、この異変を起こした人物を暴露』だったはずだが?」


「うっ!そ、そうだったかな?」


「間違いないな。お前の正体に関しては、勝利のご褒美に入っていない」


「う~、それよりも!お前じゃなくてヴェルグ!ちゃんと名前で呼んで!」


「名前で呼んだら、教えてくれるのか?」


「・・・ホントは、後でネタ晴らしをしたかったけど。ちゃんと設定していなかったのは、僕の落ち度だね。話せる内容は喋ってあげる」


ギリギリと鍔迫り合いをしながら、続く会話

端から見たら、ちょっと異質だと思う

後、誰かに誤解されそうなので言っておく

幾ら可愛くても、自分を殺しに来てる相手を口説いてないからな!

これは、決してナンパではない!!

だからそこの5人!ナンパ野郎みたいな目で見るな!


「話聞いてる?」


「すまん、聞き逃した。もう一回、頼む」


「むぅ~。次、聞き逃したら、もう話さないからね」


「わかった、わかった」


「ほんとかなぁ?・・ごほん!僕の正体は神喰いの欠片から生まれた魔神っぽいものだよ。邪神と魔神の違いについてはわかる?」


「邪神は神であって神でない者で、魔神は神格を有するだったか?」


「わお!正解だよ♪・・・お兄さんって、もしかして神の申し子なのかな?」


「ちょっ!」


音が結構響くので、5人に聞かれたと焦る俺

その慌てようを見たヴェルグは


「大丈夫だよ♪向こうには聞こえてないから。でも、人化した竜二体は読唇術が使えるみたいだね。それでも、全て理解してないだろうけど」


「そ、そうか。で、さっきの答えだが、半分正解で半分不正解」


「・・・あ~、なるほど。神殺しで、神喰の欠片の消滅任務ってところかな?」


「・・・・・今、答え言ったよな?」


「え?何が?」


「俺は、神殺しとは言ってないぞ。・・さて、誰から聞いたのかな?」


「あ・・・え~と、今の無しで!」


「無理だな」


「う~、失敗したぁ!誘導尋問とか卑怯だ!」


「いやいや!完全に墓穴掘っただけだろうが!」


その言葉を最後に、鍔迫り合いが終わり、またも剣戟タイム

残像すら残さない速度で斬り合い、数十秒後、再び鍔迫り合いへ


「そういや僕、お兄さんの名前、聞いてない」


「そうだったか?でも、聞いてどうするんだ?」


「僕だけ名乗るなんて、不公平だ!」


「ヴェルグがそれを言うな!」


「ねぇねぇ、教えてよ」


「・・・教えたら、呪いが掛かるとかないよな?」


「出来るけど、お兄さんにはしないかな。そもそもお兄さん、もう一つ名前あるよね?」


「・・・どこまで知ってる?」


「・・・はぁ~、色々バレてるっぽいし、黒幕については喋ってあげる。代わりに、ね♪」


「・・・絶対に呪いとか、かけるなよ?」


「かけないかけない。と言うか、かからない」


「何故、かからない?」


「言ったでしょ?お兄さんには名前が二つあるって。片方だけかけても、直ぐに解除されてしまうからね。付け加えるなら、呪いをかけてる間に、僕がやられる」


「なるほど。しょうがないなぁ・・・。俺の名前はグラフィエルだ」


「グラフィエルの後は?」


「ぐ・・・それ、必要か?」


「僕は全部名乗ったよ」


「・・・グラフィエル・フィン・クロノアスだ」


「じゃあ、クロちゃんだ♪」


「俺は犬か!」


「え~!可愛いのに・・・じゃ、グラちゃん」


「・・・ちゃん付から離れてくれ。ラフィで良いよ」


「ラフィ・・・くふふ♪」


ちょっと片手を顔に覆って、天を仰ぎたくなってしまった

と言うか、話も脱線してるし

そもそも、これ殺し合いだよな

そこで鍔迫り合いがまたも終わり、お互い距離を取る


「ねぇねぇ、提案があるんだけど」


「ん?提案?」


ヴェルグからの提案とは?

少し首を傾げながら、話を聞く事にする


「黒幕の話をしてあげる♪でね、その話が終わったら、お互いの最高の一撃で決着を着けようよ。僕がラフィを殺したら、ラフィの全てを貰うね♪僕、ラフィが気に入っちゃった♡」


「うん・・・途中までは理解したが、最後の気に入ったってのは?」


「文字通りの言葉だよ。ラフィが死んだら、氷漬けにして腐らないようにするんだ。そして、僕とずっと一緒にいてもらうんだ」


・・・・ヴェルグ、ヤンデレ属性に覚醒

話しながらもじもじしてらっしゃる

背中に悪寒が走り、ゾクッとなるのは仕方ないと思う

こちらのそんな気持ちを知ってか知らずか、ヴェルグは話を続けていく


「じゃ、黒幕を話すねぇ♪もうバレてるみたいだけど、本体の神喰いだよ♪あ、欠片はこのダンジョンに溶け込んでるから、回収は不可能だったよ。代わりに、僕が生まれたんだけどね」


「もしかして、不死身?」


「まっさかぁ。僕だって死ぬよ。ラフィになら殺されても良いかな♡くふふふ」


ヴェルグのヤンデレ、ここに極まれり

そんな重過ぎる物は要りません!


「そうそう!この魔剣なんだけど、神喰いが創っていったんだ♪ち・な・み・に、この魔剣は裏返りまぁ~す♪」


「超強力な剣って、それだったのかよ。つうか、賞品を使うなよ!」


「ラフィが強すぎたから、つい使っちゃった♪」


テヘッ、と舌を出して言い訳するヴェルグ

普通の人間なら、間違いなく可愛さにやられてると思う

俺?ちょっとあざといと感じたな


「後は僕の年齢かな。実は~、じゃじゃ~ん!ラフィよりちょっとだけおねぇさんでぇす♪」


「その情報は必要なのか?」


「ひっど~い!僕が負けたら、僕はラフィの物なんだよ」


それは何という罰ゲームで?

ダンジョンの異変を調べに行きました

ダンジョンの異変の大元を正しました

ダンジョンの奥地で嫁を拾いました

・・・・・確実に修羅場になるじゃねぇか!

却下!不許可!不採用だ!


「うん・・・色々間に合ってるから、辞退で」


「フラれちゃった・・・しょぼん(´・ω・`)」


「何処でそんな顔文字を覚えた!?」


「秘密でぇす。さてと・・・そろそろお喋りも終わりにしようか」


「最後に一つだけ答えてくれ。神喰いの本体とヴェルグは、神格を持っているのか?」


「・・・僕は持ってない。本体は知らない。・・・あくまでも僕の予想だけど、創ってる最中だと思う」


「本体の行き先は?」


「質問が二つになってるよ?・・・まぁいっか。行き先は知らない」


「わかった」


その言葉を最後に、お互い剣を構え直す

ヴェルグは魔剣に、俺は双神剣に力を込め、同時に力を開放する言葉を発する


『我が力は、全てを飲み込み、全てを喰らう』


『我は神器が主。我が神器よ。我が声に応えよ』


『全ての力は、我が身、我が血肉に変わる』


『汝、今こそ真なる姿を晒し、我が力を用い、我が意に沿い、我が敵を滅ぼせ』


『剣よ。我が全てを力と変え、我に全てを捧げよ!』


『我は汝を求める。神器開放!』


『『顕現せよ!』』


『マナ・リ・ヴォア!』


『インフィニティ・マクスウェル!』


全てを喰らう漆黒の闇を纏わせたヴェルグの剣と、生と死の概念を刃に乗せ、その概念を同時にぶつけ、矛盾する現象を引き起こし、対消滅の力を叩き込む双神剣

刃と刃が交差し、閃光が辺りを包む

そして、同時に一閃

一際甲高い音が鳴り響く


閃光が止み、最強の攻撃を繰り出し、勝者に輝いたのは


ヒュヒュヒュ・・・キンッ


俺だった


ヴェルグの魔剣は半ほどからぽっきりと折れ、ヴェルグ自身も身体にクロスの形をした斬撃を帯びていた

同時に俺も、神気の大部分を持っていかれた

だが、お互い倒れずに振り返り


「あはは・・・やられちゃった・・・」


「間一髪だった・・誇って良い。ヴェルグは今までで最強の相手だ」


神?あれは例外です


「ごふっ!・・・あ~、これはダメだね。本来は効力を発揮せず、対消滅する際に僅かに出る力を叩き込めたんだね。結果、相手の体内で矛盾が発生するわけだ。そして、その存在を矛盾させ消滅させるか・・・結構えげつないね」


「手加減できる相手でもないし、手加減する理由もないからな。文句はあるのか?」


「いいや、無いよ。・・・ごふっ、げほ、げほ・・・・はぁ、楽しかった。そして、ありがと」


「何でお礼を言われてるのか、分からないんだが?」


「クス・・実はね、あのクソ親父のせいで、ここに縛られていたんだ。ついでに言うと、これで神喰いとしての呪縛も解けるんだ♪だから、ありがと♪」


「・・・そうか。なら、礼は受け取っておく」


「これで異変は収まるよ。ダンジョンも元に戻る。げほげほ・・・あ~、賞品は破壊されちゃったね。・・・でも、何も無しと言うのは僕的に許せないかな」


そう言って、一瞬にして懐に入ってくるヴェルグ

油断した・・・これはまずい!

そう思うが、神気を大量に食われて、思う様に身体が動かない

そんな俺にヴェルグは・・・口づけをした

呆然となる俺


「ふふ・・・血の味のするキスでごめんね。でも、これが賞品って事で、ね。・・・もう、時間無いや。勝利おめでとう♪またね♪」



最後にそれだけを告げて、ヴェルグはその姿を消滅させた

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