第8話 魔王城

 叫んだ!

力が抜けた。魔剣の重みが、全身に力を抜けさせた。

抜いた剣だったが、振り下ろせなかった。

アンソニーの鎧が黒光りしたかに思えた。

だが、すくに元に戻る。


「だっ大丈夫だ……」


 一体なんだったんだ?さっきの衝撃は……。

痛みが走り、力が抜けた。そして光り輝いた時、自分の中の何かが吹っ飛んだ。

吹っ飛んだというより、何かこれまで抑えていた感情が欠落したような気分だ。


「許せないのは、魔王だ! こんな世の中にしたのは、魔王がいるからだ! 俺は勇者!」

 そういった強い思いが余計に満ち溢れていった。

山間に見えるのは、城だった。魔王城。そう、だから無性にそこへ行きたくなった。


「行くぞ! 魔王城へ!」


 さっきまで魔剣の恐ろしさに震えていたアンソニーの姿と違う姿に、メンバーは心配した。

だが、女性だけは違っていた。


「真の勇者の誕生ってわけね!今すぐにでも、あの城に向かいたいでしょう?」

「なぜそれがわかるんだ?」

「うううん、何となくよ。うふふふ! 気をつけて! 魔王はかなり強いらしいから!」

「あぁ、そらそうだろう! 世界を牛耳っているんだからな! 行ってくる!」


意気揚々とアンソニーは魔王城を目指してまずはダンジョンをクリアに着手した。


 パーティメンバーの心配をよそに、アンソニーは魔王城に急ぐ形を取った。

クルージャの街を抜けて、すぐさま敗れたゴーレムダンジョンに入る。

ラスボスまで、たどり着くと、ゴールドゴーレムの出現。

しかし、魔剣と呼ばれるものを2、3回振ると氷や時には炎、時には空圧の風が吹き荒れ、敵を蹴散らす。その戦法でゴールドゴーレムも、一瞬のうちに倒してしまった。


 残るは、このダンジョンを抜けると、目の前は、コウモリたちが飛び立つ、魔王城。

そこの階段をパーティ3名でゆっくりと上がる。


「ようやく、きたか!勇者よ!」


魔王城から、聞こえる大きな魔王と思われる声。

「ワシのところまで辿り着けるかな?」

その言葉を聞くと、無性に叫びたくなったアンソニー。


「俺は、お前を倒しにココに来た! すぐにでも倒す! 待ってろ!」

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