24話 訓練、マシェvsアラン先輩
学園へと帰ってきた僕達。
寮へ向かって歩いていると突然声をかけられる。
「学園対抗戦、頑張ってくれよ!この学園の未来がかかってるんだから」
どうにも力が入りすぎている気がする。
どうしてかなとシーナの方を見る。
「優勝校にはいくつかの特権が与えられるの。騎士団への推薦権が多くもらえたり……とか。で、今年はカリナ先輩がいるからうちは優勝候補なんだよ」
そうだったんだ……。
それなら優勝した方がみんな喜ぶんだろうな……。
そんなことを思っていると後ろから肩を叩かれる。
「リーノ、帰ってきたんだな。ちょうどよかった、そろそろ学園対抗戦へ向けて特訓をしようと思うのだがどうだろうか? と言っても君には必要ないかもしれないが」
特訓か……。シーナ達としていることをカリナ先輩ともするだけだよね?
「えぇ、僕は大丈夫ですよ。ただ、シーナ達も一緒でいいですか?」
「あぁ、問題ないよ。では明日の放課後から訓練場でな。二人ともよろしく頼む」
カリナ先輩はシーナ達に軽く頭を下げた後、去って行った。
「えっと、私たちもよかったの」
シーナが心配そうに聞いてくる。
「うん、せっかくだもんね」
◇
翌日、訓練場に僕、カリナ先輩、アラン先輩、シーナ、マシェ、アデルの六人が集まっていた。
あとは、メンバーがメンバーなのでライズが監督としてついてきていた。
「あまり壊さないでくれよ……」
恐る恐る言っていた。
でも、ここの壁って壊しても元に戻るんだよね?
それならあまり気にしなくてよさそうなんだけど……。
まぁ、見栄えてきなものだろうし、壊すなと言うならなるべく気をつけよう。
「ちょうど6人か……。それなら君たちには私たちの特訓相手を頼めるか?」
シーナ達を見ながらカリナ先輩が提案してくる。
「で、でも、私たちに相手は出来ませんよ……」
僕を見ながらシーナが不安そうに聞いてくる。
「それもそうか……。まぁ彼の相手はまた考えよう。とにかくまずはアランの特訓に付き合ってやってくれ」
アラン先輩の提案にマシェが一歩前に出る。
「……私が相手をする」
「ロックウッドのお嬢さんか……。それなら手加減は必要ないね」
アランが口元をつり上げて笑みを浮かべる。
マシェって有名だったんだ……。
ただ呆然とそんなことを思いながら二人の試合を眺めていた。
◇◇◇◇◇
(マシェ)
相手は学園随一の魔法の使い手、アラン先輩。
爽やかなその風貌とは違い、上級魔法をいともたやすく扱ってくるという強敵だった。
しかも、それとは別に剣の腕も一流で学園で対抗できるのはカリナ先輩くらいだった。
そんな相手にどう戦うか……。
うん、リーノみたいに戦ったら良いよね。
強い敵でも笑顔で余裕を見せて、その上で圧倒する!
本で調べていてもまだ自分には最上位魔法は使えない。
上級魔法も使うことが出来ない。
中級ならなんとか……。
まともにぶつかったら威力で負けてしまう。
それなら、――相手に使わせなかったら良い《・・・・・・・・・・・・・》
覚悟を決めたマシェは決意のこもった目をアラン先輩へと向ける。
「……いつでもいい」
「俺も準備は出来てるよ」
余裕を見せるアラン先輩。
マシェの後ろには応援をするリーノ達。
うん、負けられない。
「では、試合開始!」
ライズの声と共にマシェは魔法を使う。
「うおっ、詠唱破棄か!?」
足元が凍り付いたアラン先輩は驚きの声をあげていた。
ただ、これは簡単な氷の初級魔法……。アラン先輩なら簡単に解いてくるはず。
それなら――。
氷の魔法を解こうと詠唱をするアラン先輩。
「燃えさかる劫火よ。我が呼びかけに答え――」
その隙を突くようにマシェは手を上げる。
すると、空から氷の矢がアラン先輩目掛けて降り注ぐ。
アラン先輩は慌てて詠唱を中断させ、腰に携えた剣を抜くとそれで氷の矢を防いでいた。
でも、そのときにマシェは次の魔法を使っていた。
大きな氷の塊がまっすぐアラン先輩目掛けて飛んでいく。
空から降り注ぐ矢に意識が向いていたアラン先輩はそれに気づかずにまともに氷の塊を受けていた。
「がっ……」
うめき声を上げて吹き飛ぶアラン先輩。
ただ、マシェはそれで攻撃の手を緩めずに次の魔法を使っていた。
鋭い氷柱がアラン先輩へと向かって落ちていく。
ただ、体勢を崩しているアラン先輩はそれを防ぐ手段がなく、両手を交差させてなんとか防ごうとする。
するとその瞬間にライズが大声を上げる。
「そこまでっ!! 勝者、マシェ・ロックウッド!」
それを聞いた瞬間にマシェは氷柱を消していた。
さすがにこの結果は予想外だったのか、ライズとカリナ先輩は驚いた表情を浮かべていた。
「まさかここまで詠唱破棄を使いこなせるとは……」
「しかも様々な種類の魔法でしたね」
ライズ達がマシェの戦いについて話し合っていた。
ただ、それを気にすることなく、マシェは自分の出来ることをしたとリーノ達に向かって小さくブイの手を見せていた。
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