ギルド
あたしたちは、憑依妖精メルのナビゲーションに従ってアドネの市街地を進む。良くも悪くも、活きの良い感じの街だ。活気も熱気も殺気もある。
あたしたちをチラチラ見てくる目のなかに、剣呑な感じの意思が含まれているのには気付いていた。
それは、わかる。身に覚えもある。でも彼らが向けてくる敵意というか害意みたいなもんが犯罪者としてか監視者としてか報復者としてか暗殺者としてか、そこをハッキリさせてもらいたい。
そのくせ目的地周辺までくると視線も人影も気配も、すべてがスイーッと姿を消してしまうのだ。
「その先、裏通りに入って左手」
メルが忌々しそうな声でいう。
しっかし、傭兵ギルドか。そんなもんあるんだ。すげえファンタジーっぽいな。
勝手にいわゆる西部劇の
「そんじゃ、冒険者ギルドもあんのか?」
「なにそれ?」
期待を込めて尋ねるが、メルには素っ気なく返されてしまった。ミュニオとジュニパーにも訊いてみたけど、“冒険者”という名称が初耳だそうな。そもそも傭兵以外のギルドって単なる商売上の組合組織だというから、ファンタジー
「……あれ、でもメル、いま傭兵
「傭兵は、ほとんどが犯罪者の副業だったから。あれは犯罪組織の寄り合いかな」
「へえ……ジュニパー、いまは?」
「帝国統治下で傭兵は完全に違法だったはずだよ。領地軍以外の兵力を動かせば謀反の疑いを受けるしね」
それじゃ、目の前にあるこれは?
「“市民有志による防衛隊”て書いてる。……まあ、体裁を変えただけだね」
「なるほど。それで、メルがアドネで暮らしてた頃は、傭兵ギルドっていうのがあったんだ」
「アドネア王国は、傭兵の対外輸出で喰ってたし」
なんか矛盾してんなあ。
「アドネアの兵士は逃げ隠れするのと掠奪が上手いって、評判になってたし」
「そりゃ、犯罪者はそっちが本職だもんな」
ジュニパーがあたしの横に並んで声を潜める。
「シェーナ」
「わかってる。近距離の対処はジュニパー、遠距離攻撃が必要ならミュニオ頼む」
「わかったの」
建物に入ってからの荒事は想定してたけど、まさか入る前に襲い掛かるとはな。どこかで会ったことがある相手なのかな。
「そこの角を盾にしようか」
ジュニパーが、のんびりした声で告げた。
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