3
「おにいちゃんさ、ヨーロッパのはずって言ってたけど、なんで?」
「時間だけは沢山あるけど、その分大量の思い出があるわけでね、みぃちゃん」
「……ボケ?」
「そういうわけではない。そういうわけではないよ、みぃちゃん。
僕は認知機能が
というか
わざと言ったのだけど、少しムキになっておにいちゃんは返してきた。
「まあいいや、よく覚えてないってことなんだもんね」
「……そもそも国として残ってないと思うけどね」
あの
そう
「やっぱり吸血鬼って本当に不老不死なんだ」
「うーん……それはちょっと違うんだなあ」
そう言いながらも、おにいちゃんは
「逆なんだよね」
「逆?」
「そ。だって、僕は
私は
「みぃちゃん、ズレてる。もそっと左」
面白がるような声音でおにいちゃんはそう指摘した。
けれど、それで位置を修正したとしても。
「……わかんないや」
結局、自分の脈を
おにいちゃんは逆に、手を
「ここだよ」
おにいちゃんの手はひんやり冷たかった。
おにいちゃんは少し目を細めてから、今度は私の手をひっくり返して、私の指先を自身の手首の一点に置いた。
「……ほんとに、ないの?」
「そうだよ。生きてれば、ここが脈打ってる。
みぃちゃんのそれと同じように」
どこか
だから、脈の位置が本当にそこなのか、その時にはわからなかった。
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