ガルデニアの残り香
板久咲絢芽
薔薇の下を掘り返す独白
独白の切り出し
おにいちゃんの話をしようと思う。
きっとこのままでは、私は
この思い出がまだ――
おにいちゃんは何でもないように「忘れていいよ」なんて言いやがっていたが、絶対に忘れてなどやるものか。
それが私のことを心配したのだとしても、忘れてなどやるものか。
「見るなの
そもそも「おにいちゃん」なんて呼んでいても、おにいちゃんと私は、本来赤の他人だ。
再婚とか連れ子とか養子とか、そんなワードは一切関係ない。
というか、あれは身も
なんの
本人は暗示だと言っていた。
私達家族の誰にも似ていない――そりゃそうだ――綺麗な人形のような顔で、声を
水よりもほんの少しとろみがあるような、心地いい声で「みぃちゃん」と私を呼んでいた。
私と一緒にテレビゲームに興じたり、馬鹿みたいな話の相手をしてくれたりもした。
さいごまでそれを、はっきりとは言えなかったとしても。
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