第23話 青い鳥はなにをつぶやく?


 人の口に戸は立てられぬ、と言いますが、まさにその通り。何でも話せる人より、何も話さなくても(心地)よい人の方が好きな僕でさえ、こうして言葉にしなければ我慢がならないのですから、お喋りな人の「言葉にしたい」という欲は限りないものがあるのでしょう。


 他人に何かを伝えるためであれば、言葉にして届けることは良いことでしょう。ただ単に言いたいことを放り投げるのも結構。

 しかし、聞かれてはならない、もしくは発してはならないことを声に乗せるのは、結構でも、カッコウでも、ハシビロコウでも駄目です。ダメなのですが、人の口に戸は立てられぬとな。言葉はふわふわと風に乗って各地に種を撒いていきます。


 (良くも悪くも)うわさが広がるという現象は古代から広く人間の間では一般的なもので、この優れた伝達能力は、人間を人間たらしめていると言ってもよい固有の能力です。


 だから、面白い表現が多い。


 日本ではうわさは風に乗ってやってくる。

「風の便りに聞く」と言いますよね。先ほども風を使って表現したように、日本人にとってうわさというものはどこか遠くからひらひらと流れてくるものです。この重さの感覚、出所の曖昧さ、そして吹き抜けるような速さと実態の無さ。これらを見事に表現していますね。

 僕の周りも良く風が吹いていました。「〇〇(気になっていた子)が付き合ったって!」といううわさが六甲おろしに乗ってやってきます。「あれ? もう冬かな?」と春先に思わせるほど、いつも激しく吹き降ろしていたので、僕の長いまつげはゆらゆらと揺れて、朝露に濡れる山野草のように綺麗だったそうな。


 一方、海外では(主に聖書の影響で)動物がうわさを運んできます。(※1)

 欧米の文化圏では小鳥がおしゃべりです。珍しいのはオランダ。子ネズミがチューチュー言ったという表現のよう。どちらにしても可愛らしいですね。


 英語では「A little bird told me」というフレーズになります。小鳥が教えてくれた、なんてオシャレな感じ。ちょっとメルヘンでしょうか。でも、この表現ならばちょっとディープなうわさでも気兼ねなく聞けますよね。


「ねぇ、この前、ことりさんが教えてくれたんだけど、○○(友人)のジョンソンが大きいってほんと?」(丁寧かつメルヘンチックに意訳)

「ことりさんが言ってたけど、着替え中の教室に入ったことあるん?」

「なぁ、お前、××に告白した? いや、ことりが言ってたんやけど」


 目に見えない風よりもイメージしやすいその可愛らしさが全面に出ているので、何だかほのぼのとしますね。

 うわさで聞いたんだけど、と言うよりも断然使いやすくなると思うので、気になる相手のジョンソンの大きさが気になる場合は使ってみて下さいね。ちなみに、一つ目の質問には「まじでデカい」と答えておきました。メルヘン感は皆無でしたが、クラスメイトの彼女はとても喜んでいたのでよしとしましょう。

 

 さて、アメリカに住んでしばらく経ったからでしょうか。僕のもとにもこの前、可愛らしい鳥が飛んで来ました。


 青い小さな鳥が肩口に乗ってさえずります。

「なぁ、にいちゃん。おもろいもんがあるねんけど、いっちょやってみぃひんか。いや、悪い話じゃないねんて。絶対ハマるから。そんな手間はいらんねんて、ちょっとだけ、ちょっとだけな? え? ええのん? 話が早い奴は嫌いじゃないで。じゃあ、たのむわ。また来るからな。ほどほどになー」








 という訳で、Twitterを始めました。


 この14文字を言いたいだけなのに、無意味に文字が増殖するワタクシ。どうしてなんでしょう。理由をご存じの人は鳥を飛ばして教えて下さいね。ハシビロコウみたいなやつでも歓迎しますよ。ダチョウはやめて、怖いから。







 ※1 英語Today 「噂」に関する慣用句(1)

 http://www.eigo21.com/etc/kimagure/z059.htm

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る