第1-2話@春とは別れの季節です
続けて勉強しているうちに夜になった。ドアをノックした後、中山さんが「ちょっとおいで。」
と言った。僕は休憩と食事を兼ねて、一度部屋から出ることにした。
卒業おめでとうと書かれた幕が張られており小学生何人かが帽子をかぶっている。多分その子たちも今日、卒業したのだろう。
「翔君、手伝ってほしいことがあるんだけど。」
中山さんが言った。
「わかりました。今行きます。」
僕は外にいるであろう中山さんを部屋から見つけすぐに靴を履いて向かった。中山さんはたくさんの荷物を持っていた。
どうやらそれを持ってほしいということだった。
「翔君、上を向いてごらん。」
「あぁ、カシオペヤ座がよく見えますね。」
「違うよ。」
「満月がきれいですね。」
「違うよ。そもそも曇ってるし。というか今日は新月だよ。
こうしてれば、涙がこぼれないでしょ。」
「なるほど、そういうことでしたか。ちょっと暗いなぁと思ってました。」
「翔君、ちょっと話があるんだけど一回そこのベンチに座って話を聞いてもらってもいいかな。」
「わかりました。」
僕はそう言って座った。横に中山さんが座った。周りの空気が肌寒いが中山さんが横に座ると暖かくなった。
「翔君、中学卒業おめでとう。そして高校進学おめでとう。」
「ありがとうございます。」
「翔君ってやっぱりすごいな。本当に努力家だな。比べるのは嫌かもしれないけど
この施設からそんないい学校に行った子は君が初めてだよ。ところで、
今度から新しい環境で暮らしてみないってことで話をさせてもらおうと思うんだけど。」
予想通りだ。この施設には高校生以上の人は暮らしていない。何だったら中学生もあまり多く
ない。
「新しい施設が今度できるんだけどそっちに移ってみないかなぁと思って。
それか里親制度でどこかの家庭に入るっていう選択肢もあるんだけど。」
「そこに暮らすことになる人次第ですかねぇ。」
おい、翔、正直になれよ。ここに居たいならそういえばいいじゃないか。
中山さんはいつまでも見守ってくれるんだからいいじゃないか。
僕は迷った。そうして出した僕の結論は
「わかりました。そちら、その新しい施設へ移ります。」
「ありがとう。実は私もそっちの施設に移らないかって話があって。移ったら施設長になれるらしいんだけどまだよくわからなくって。これで翔君も卒寮だね。」
「はい。卒寮です。中山さんも。」
「ありがとう。」
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